いつか、思いが分かるように
ユーノとノックス達が話をし始めて、一人暇そうなアクアが少し離れた場所に咲く少し甘い匂いのする葉っぱを見つけ、クンクンと匂いを嗅いでいた
「気になるかい?」
突然、声をかけられて驚き振り向くと、薬草の店の店主がニコニコと笑ってアクアの隣にいつの間にか来ていた
「食べてみるかい?これは魔術と薬草の調合で新たに作られたハーブみたいなものでね。治療には使われず、この村では主にお菓子に使われるんだ」
アクアが匂いを嗅いでいた薬草の葉をちぎりながらそう説明すると、ちぎった葉をアクアに渡そうと差し出した。すると、ユーノと話をしながら様子を見ていたノックスが慌てて店主の所に駆け寄ってきた
「ダメですよ、この子はユーノ様の娘です。毒味もしていない物を勝手に食べさせたら皆さんに怒られます」
「ああ、そうだったね。すまない」
ノックスに謝りながらちぎった葉を食べて笑う。二人の会話にアクアが戸惑っていると、ユーノが来て急ぐように背中に隠れた。すると、笑っていた店主がユーノに少し近づき、少し屈んで更に服で顔を隠そうとするアクアの顔をジーッと見つめた
「君は将来、薬師になるのかい?それとも魔術師?」
アクアを怖がらせないように優しく問いかけると、答えていいのかとアクアがちらりとユーノの顔を見た後、恐る恐る顔を横に振って答えた
「えっと……。わからない……」
と、小声で返事をするとユーノがフフッと笑い店主はうんうんと何度も頷いた
「そうかい。でも、さっきの子も君も薬草が好きになって、沢山の人達の怪我や病気を治せる人になるといいな」
周りに生える草花を見ながら店主が言うと、アクアが少しムッとした顔で呟いた
「病気とか怪我なら魔術ですぐに治るのに、なんでわざわざ……」
小声で言ったつもりがユーノだけでなく、周りにいたノックスや店主達にも聞こえて、みんな困ったようにフフッと笑う。ユーノもアクアの頭に手を置き優しく撫でた
「アクア、そろそろ帰ろうか」
と、ユーノがそう言うとアクアがゆっくりと頷く。それを見て、ユーノがノックス達に少し申し訳なさそうに話はじめた
「世話になったね。他にも色々術とか聞きたかったが、また後日来て続きを聞くことにするよ」
「分かりました、また来てくださいね」
ノックスが返事をすると、術を唱え終え待っていた魔道師達に案内されてユーノ達が出ていった。残ったノックスや店主がアクアの後ろ姿を見て、またフフッと苦笑いをした
「あの子は魔術が好きなんですね」
「そうだな。でもまあ魔術ですぐ治すなんて、まだまだ若いな」
「あの子はまだ若いですよ」
笑いながら言う店主にノックスが呆れながら話していると、ユーノ達を見届け戻ってきた魔道師に店主が手を振り呼んだ
「いやいや。あの人の娘ならすぐに分かるさ。それに、さっき店に来ていた子はきっと分かっているだろうしな」
「ほう、そうなんですか?」
ノックスが話に感心をしていると、魔道師達がアクアが見ていた薬草に術を唱えはじめ、沢山あった薬草が地面から抜かれ、ふわりと浮かんで部屋の隅にあったテーブルへとし始めた。浮かぶ一つを手に取った店主が食べながらノックスの方を見て、さっきの話に答えるように頷いた
「そうさ。魔術だけを勉強したって分からないものがあるものな」




