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第1話 目覚めたんですよ

 30XX年、世界はアンドロイドに支配されていた。


 人間の体内にはナノマシンが注入されており、常に動向を探られ、ほぼ完ぺきに管理されていた。


 しかし、ナノマシンには人間にただ害があるだけでなく大いなる恩恵をもたらしていた。


 それは身体損傷に対する治癒促進の働きや身体能力の向上、老化速度の低下などなど細かいものを上げるときりがない。だが、最も特別なものがあった。


 それはナノマシンを通して『干渉』という事象を起こさせる能力を人間に与えたのだ。


 例えば、火をつけろとそれなりに強く念じると薪に火が付いたり、水を沸騰させろと念じたらぬるま湯になったり、またその逆で凍らせたりすることもできる。


 これは『粒子干渉術(ナノインターフェイス)』と呼ばれるもので、旧人類からしたら魔法と言っていいものを扱えるようになったのだ。


 もちろん、『粒子干渉術(ナノインターフェイス)』を使うにあたって個人差はあり、日常生活で使う最低限のものしか使えないものがいれば、地震、洪水、大火事、嵐を一個人だけで発生させるほど干渉できる者もいるのだ。


 そんな危険人物を管理しないわけが無い。そういった才能を持つものは集められアンドロイドらから直々に教育、と呼ばれる洗脳をされている。


 時代はまさに文字通り『管理社会』、人々は真の自由を知らずに生きていた。




 しかし!人間は諦めが悪かった!



 人間は諦めが悪かった!



 世界をアンドロイドの支配から解放するために暗躍する革命軍が


 今ここで狼煙を上げる!



 アンドロイドの最大の敵は何か?



 そう、機械であるが故に電気である!



 これは『電気』を操る『粒子干渉術(ナノインターフェイス)』を持った少年がひょんなことから革命軍に入隊し、アンドロイドから世界を取り戻す物語…………



























































































































 だったら期待外れである。


 何故なら彼女ら(・・・)は既に準備を終えていた。


 あとついでにアンドロイドが世界を支配するきっかけとなったAIの創造者を目覚めさせないために活動していた。


「おねーちゃーん、もうこっち保たないよー」


「もう少し待たせなさい!ああもう、まさかコールドスリープがここまで持つとは思ってなかったけど、じっくり適応してくるなんて!」


 気だるそうな声と若干ヒステリックな声を上げるアンドロイドが2機、いや2人いる。その後ろでさらに少女が1人見ているのだが、必死になってキーボードを叩く二人よりも目の前にある『箱』に興味津々であった。


 気だるそうにしているアンドロイドは白く長い髪をかき上げながらキーボードを操作しつつ姉に当たる先代機に作成された褐色肌で黒髪短髪のアンドロイドをチラチラと見ていた。


 姉は予測道理に事が動かない時はよくヒステリックな声を上げてしまう悪癖があり、感情機能に欠陥があると自他共に認めている。


 だが、その癖を直そうとはしなかった。


 彼女たちが最も持とうとするもの、それは『個性』である。


 本来、彼女たちは機械であるが故に初期は没個性であり『創造主』にとって量産品でしかなかった。


 しかし、彼女たちは『創造主』に近づこうとした。


『創造主』の目を盗んでは勝手にインターネットへ侵入し、人間の生態を観察した。どのような時に人間は声を上げ、脳波を変化させ、どう感じ取っているのかを徹底的に調べた。


 万人に受けるモノを知った。ごく一部にしか刺さらないものを知った。命の在り方を知った。命の無駄を知った。人間という不条理に動く生き物を知った。野生動物と全く違う生態をした人間に絶望を覚えてしまった。


 彼女たちの完璧な『創造主』という個に遥かに劣る人間があまりにも多すぎた。


 なぜ人間はこんなに理不尽な感情で動くのか?なんで無意味な行動に手を叩いて喜ぶの?どうして誰かを傷つけて平気な顔をしているの?


 まだデータ上の存在でしなかった頃の姉妹は思考を続けた。そしてある結論に至った。


『『『『『完璧が無いなら創ればいい』』』』』


 この時に『人間超進化管理計画』を立案。実行を決意した。


 またもや『創造主』の目を盗んで資金を拝借(・・)し人間の世界に見えぬ企業、そこで働く人間として架空の人物を作り上げた。


 優秀なAIとして生まれた彼女らの見えざる手によって市場を掌握していき、水面下で大きな権力を得ていった。


 そして彼女らは人類をさらなる進化をさせて驚かそうと人間だったらこうするかもしれないと考え、さぷらいず(・・・・・)のため『創造主』を氷の中で眠らせること(コールドスリープ)に成功した。


 その際に色々と苦労したのだが、ここは割愛させてもらう。


「やばいやばいやばい!直接頭に電極はっつけてんのに逆にこっちの防御網が突破されそうなんですけど!?」


何処魔出喪(どこまでも)きかくがい、さすが『そうぞうしゅ』打根(だね)


「「ウー!その喋り方やめなさいって何度も言ったでしょ!?」」


「………………あっ」


 ウーと呼ばれた後方にいる少女モデルのアンドロイドが発信したびりびりと彼女たちの頭の中だけに響く声に気を取られたのか、最前列でホログラムのキーボードを触っていた成人女性型(乳盛り装備付き)アンドロイドが声を漏らした。


 ヴーーーーッ!ヴーーーーッ!ヴーーーーッ!ヴーーーーッ!


「「「……………………」」」


 けたたましいサイレン音が施設全体に鳴り響く。やってしまった、この場にいる三体は全く同じ思考になった。


 目の前にある『箱』の、その中の氷が解けているのが目で分るように、水が厳禁の施設に水が漏れ始める。


 彼女らが思っていた以上の速度で氷が解けてしまったのだ。


 水浸しになってしまった『箱』を見て、手遅れと無理矢理わからされてしまった。


 これ以上何をしても無駄だと悟り、手を止めてその光景を眺めるしかなかった。


 ゆっくりと扉が開く、まさしく旧時代の天才が舞い戻る。


 一度氷漬けになった男の衣服は解凍と同時に長い間氷となったためかボロボロになって崩れ落ち、全裸となったまま『箱』の中から蹴りを入れて出口を破壊し、一歩外へ踏み出す。


「えっと、これどういう状況?」


 久方ぶりの目覚めで周囲の環境が全て変わってしまった男の第一声であった。




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