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災厄の呪怨剣士 -CURSE BLADE-  作者: AXL=GLINT
chapter1 呪怨剣士 -CURSE BLADE-
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chapter1-エピローグ


「本当に、ありがとうございました・・・。」


翌朝、村に戻ったニーズは村人総出で感謝をされた。

昨夜の銀月女帝(アルテミス)の件で、胸糞悪くあまりに自分が情けないと思った矢先のことで面食らったが・・・どうあれ、ようやくこの村の英雄は安らかに眠れたのだという事実を改めて認識して多少心は和らいだ。


遺体は残らないが、形見は残った。

それをひとまずの村のシンボルとして、今いる後継者を育て上げ、この村は再び発展し直すのだろう。

ジンの葬儀はすぐに行われた。

物理的には中身のない墓だが、それでも愛された彼の眠りの儀としてこれ以上の区切りはないだろう。


ありがとう。

さようなら。

見守っていてください。


口々に墓にそんな言葉を与えていた。

ニーズもまた、静かに、改めて彼を弔った。











オレは再び、この村を出る。

村を出る前に、ジンの弟子たちが見送ることになった。


昨夜は存分に泣きはらしたせいで、少女の目元は赤い。

だが、三人とも決意に満ちていた。

ジンとの別れを明確に終えて区切りがついたのだろう。



「ありがとうございました、ニーズさん。私たちは、師匠の跡をついで頑張ります。

まだ、魔法は全然だけど・・・それでも、魔法だけがすべてじゃないと師匠から教わりました。」


少女の言葉を聞いて苦笑する。

ああ、確かにそんなことを教えたこともあったなと。

魔法を使えないのは不利だが、決定的ではない。

技量によって左右されることは十分にあり得るのだと。


その言葉を胸に頑張れるのなら、彼も浮かばれるだろう。


「何もできなかった俺が・・・悔しくて仕方ねえんだ・・・!

だから、俺は師匠や、その師匠の先輩・・・あんたみたいになってやる!」


災厄使途(アポステル)からの襲撃で倒れながらも守っていた茶髪の少年。

自身にこれ以上のない怒りを叫び、その気力が続けば凄まじい戦士になるだろう。


「・・・ニーズさん。このことは、絶対に忘れない。

だから、ニーズさんもどうか忘れないでほしい。」


ひときわ強く、そう告げる金髪の少年。

その一言でもわかる、並々ならぬ精神力が宿っている。

別格になれるだろうという確信が、根拠なく感じられる。


「・・・ああ、勿論だ。」


そして忘れるなとは、ああ、もはや愚問だ。

彼を忘れることもなければ、この子供たちのことも忘れない。

希望も絶望もオレのすべてになるのだから、忘れるつもりはまったくない。


「だから、オマエたちの名前も教えてくれ。

一泊とはいえ、屋根の下でともに暮らしたからな。」


少しでも無理やりに微笑んで言う。


「俺はユピテル。」

「俺はベオだ!」


金髪の少年と、茶髪の少年は名乗る。

そして最後に。


「私はエオス・・・そうだ。」


エオスは思いついたように、ポケットから何かを取り出した。

そしてその手を差し出す。

手のひらには、髪をまとめるための紐があった。


「貰ってほしいんです。私もニーズさんも、忘れないように。」


エオスは笑顔でそういった。

そういわれてしまっては、断る理由もないだろう。

確かにオレの髪は、後ろが長いからな。


「ありがとう、これがオレたちを結ぶ運命になるといいな。」

「運命・・・。」


受け取り、後ろにまとめていた紐から、先ほどエオスからもらった紐で結びなおす。

一期一会になることも珍しくない人生だから、せめてもの祈りだと思ってのことだった。

どんな顔をされたかわからないが、自分自身大げさなのは理解している。


・・・()()()()、と。

そういいたくなるのが、オレというどうしようもない生き物なんだよ。


「・・・じゃあ、お別れだな。頑張れよ。」


そして当たり障りのない言葉をかけ、オレは今度こそ踵を返して去った。


昨夜の銀月女帝(アルテミス)の言葉が胸に深く突き刺さりながらも、しかしどうしていいかもわからない。

しかし立ち止まってもいられずに、再びオレはいつものような日常に帰っていった。









ここに、運命の種は蒔かれた。

この村は後に、ティソーナ村と名付けられる。

そして運命の芽が出るのは、この日から7年後だったという─────






chapter1 呪怨剣士 -CURSE BLADE- END

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