chapter1-プロローグ
この世界には、古くから世界樹というものがあった。
それは、人々に魔法を齎した神の加護のような存在。
何をしようとも滅ぶことのないもの。
神のように崇められた世界樹は、世界の中心として君臨した。
これによって人々は魔法による文明を発展させ、世界中の村がそれぞれ大きくなり、やがて大きな国となっていった。
魔法と連動してそのほかの文明を育てていき、人々の多くは幸せとなっていった────はずだった。
突如、世界樹は黒く染まる。
その直後、世界樹からは呪いが振りまかれた。
人々の半数以上がその呪いに蝕まれ、人として死に、そして姿かたちを変えた怪物「厄人」となった。
厄人の存在は圧倒的であり、世界樹を中心とした国は崩壊。
厄人に追われながら生き残った人々の中から更に犠牲を生み出しながら、ついに世界の中心から離れた場所で、それぞれまた小さな村を築いて厄人から怯えながら細々と暮らしていた。
それから、100年。
なぜ世界樹から呪いが振りまかれたのか、なぜ突如半数の人々が呪われたのか、大きな謎を残しつつも人々は逞しく生きていた。
そして、明らかになったこともある。
厄人は世界樹に近ければ近いほど強力になる。
厄人に理性はない。
厄人は自然発生している。
厄人はかつての死人が再現される。
厄人は心臓を破壊しない限り死ぬことなく再生する。
厄人はどう足掻いても厄人以外を襲う。
完全なる人々の敵。
よって、普通に暮らす人々を守り厄人を狩る者・・・「狩人」が活躍するようになった。
しかしあくまで、生き残る為。
あの呪いを解決するには程遠い。
どれだけ強いものでも、あの世界樹周辺にいったもので生き残った人は存在しない。
しかし、例外は存在する。
理性があり、人々を襲わず、厄人から襲われ、厄人を狩る例外。
あの世界樹の呪いの日に産まれた、何も知らぬ魔人。
名を、ニーズ。