2.「みやもり」くん
2.
長かった式が終わり教室に戻ると、しばらく何もすることがないらしく、待機しているように言った先生はどこかへ行ってしまった。
途端に教室は騒がしくなり、近くの人と喋ったり、席を立って数人で集まっている人もいる。
私はと言えば机に伸びて、そんなクラスメイト達を観察していた。
ふと、教室の右奥、ドアの近くに三人でいる女の子たちが目についた。
外見からしてクラスで目立ちそうなタイプだと思われる。
こういったタイプはあまり得意ではない。
この学校は校則が緩い方ではあるが一応化粧は禁止されている。
はずなのだが、化粧に関してはあまり詳しくない私から見ても化粧をしているのが分かるし、スカートを何回折っているのかは知らないが、それでよく生徒指導の先生に捕まらなかったなと言いたいくらいの長さである。
絶対階段上るときパンツ見えてるぞ。
一方の私はと言えばもともと色素が薄いようで、生まれつき茶髪交じりの髪のせいで、地毛申告をしているにもかかわらず二回も先生に捕まったことがあるのだが。
いまだにスカートは膝丈、リボンの紐を緩くしないという校則を守っているのだからそんな髪だけ染めたりするわけがなかろうに。
二度も校門で足止めをしてきた生徒指導の先生に、これはどういうことかと問いただしてやりたいものだ。
「沙耶が声かけてきてよ~」
「みんなで行けばいいじゃん」
と、彼女たちは声を抑えているつもりなのかは分からないが教室の一画をちらちらと見ては楽しそうにつつき合っている。
誰を見ているのだろうと視線の先に目を向けてみると、それは私の斜め前の席に座っている男子生徒だった。
ん?あの人ってさっきの集会のときに隣だった…
なるほど、と納得する。
今は自分の席に突っ伏して爆睡をかましているようで後頭部しか窺えないが、先ほど見た顔から、彼はイケメンと呼ばれる部類であることは分かった。
概ね仲良くなりたいから誰か話しかけに言ってよと譲り合っているのだろうが、寝ているのは分かっているのだしそっとしてあげ…あ、行っちゃったよ。
「宮森くん、宮森くん」
「う…ん?」
三人は寝ている彼の席を囲むように立つと、そのうちの一人、黒いまっすぐなストレートヘアーで吊り上がった目をした気の強そうな感じの女子生徒が彼の肩に触り声をかけた。
名前を呼ばれた男子生徒はどうやら「みやもり」という名前らしい。
眠そうに顔を上げてきょろきょろと周りを見る目はぱっちりとした二重で、通った鼻筋が顔面の作りの良さをうかがわせる。
寝起きの宮森君はハイテンションの女の子たちにしきりに話題を振られているようだが、にこやかな表情で返答している。
そんな宮森くんの反応に気をよくしたらしい女の子三人はテンションがさらに上がったようで、その後も会話は盛り上がっていた。
むーん、イケメンで愛想がいいと。
こりゃあやるな宮森くん。
面倒なことにならないといいけどね、と思いつつ頬杖をついて中庭を眺めると、少しだけ開けた窓から入ってきた風が心地よく肌を撫でた。