中古品
どこの星にも、独身男性用の性処理道具の一種として存在している。特に日本では、種族性なのか、こだわりのそれが作られている。生身の人間により近い体、AIをつけ、学習機能による動き、反応をより本物に近く、さらに、理想的な又は趣味に合わせた外見を持つ超高級品がある。
「それでも、単純な受け答えの会話能力、使用者の動きに対する反応して動くあるいは単純な、決められような動きに限定されている。完全に人間同様に動き、話し、かつ家事までこなすなんてのは…誰か金持ちの特注品か何かか。」
酒が回り、ひとしきり食べて、口が軽くなったところで、ゴルルが饒舌に説明するのを、
「よく知っているわね。あんたも愛用しているわけ?」
カナが睨みつけた。
「好奇心で知っているだけだよ。」
ゴルルは慌てて弁解した。ゴルルは一戸に助けを求めるように顔を向けた。カナが睨みつけ、他の3人が答えを期待するように視線を向けたので一戸は、
「彼の言うとおり、どこかの金持ちの特注品だったんだろうな。何人かの手を経て、私が買ったわけだが、3体まとめて、中古品で大安売りされていて…それで買った。まあ、中古品だ。」
「中古品て…。お前、それでよく使えるな?やっぱり、やっているんだろう?それでどんなんだ?やっぱり俺は…。」
ピヨが好奇心を全開にして尋ねた。一戸は真面目な顔で、
「世の中に洗って落ちない汚れはないんだよ。それに、彼女達は洗浄機能等が充実している。まあ、やっているよ。3人とも抱き心地は最高だし、俺に最適化して、満足する反応をしてくれる。」
ピヨが、呆れたように大きな溜息をつた。
多唐が、やはり睨みながら、
「どうして、人間の恋人を作らないんだ?」
詰問調だった。
「女性には振られたんだよ!お前は、僕が付き合ってもいいと思えるか?」
「女性が駄目なら、男にすればよかったんじゃないですか?」
「それは、真面目な同性愛の連中に失礼だと思うぞ。」
彼女は、一戸の言葉の意味が分からないようだった。日頃、性的少数者偏見に激しく抗議する彼女だけに、その反応が他の4人には不可解だった。
「やっぱり、私達だと駄目なんですか?」
突然、エルフが介入してきた。
「え?」
「彼女達は、人間に近いんで、こういう行動を、取るんだ。悪いが、聞いてやってくれないか?お前達もここに座れ。」
一戸の言葉に魔族も巫女も彼の隣に座った。
「これなんですよ。」
彼女は全ての者の前に画像を出した。それは古い古い日本の短編漫画だった。
「あ、知ってる!」
はカナだった。彼女は、地球のというより日本の漫画やアニメが大好きで、知識が豊富だった。人口増加で、男性地域、女性地域、男女地域に分割され、その間の行き来が禁止された社会。その禁断を取り締まる警察機関の主人公が、女性型ロボットを装って密入国したヒロインと、真の愛を知り密出国を試み、親友の銃により、抱き合って死ぬ、悲劇を描く短編漫画であった。その後しばらくして、日本が人口減少に悩むことになったのだから、皮肉溢れる内容だが。このどこが問題なのか、と誰もが悩んだ。
「人間じゃないと満足できないなんと酷いとは思いません?」
確かに、主人公の親友が、次々に新しいタイプを買い、結局
「みんな同じなんだよな。」
とガッカリする場面がある。“そこが問題なのか!”と5人は思ったが、唇まで出かけて、はっとして止めた。言ったら、彼女らを否定することにかると分かったからである。
「我らは恋人、妻としては認められないのかのう?」
魔族が新たな画像をダウンロードした。かの名作の映画版。主人公の育ての親の女性型ロボット。火の鳥によって人間となる主人公の恋人になるかと思ったが、地球を救い犠牲となった主人公が赤ちゃんになり、それを育てる母親になって終わる。“どこが悪い?”
「そういうものの影響って不愉快だよな。あいつらが平和的で、俺達を好戦的だなんて考えるなんてさ。」
「まあまあ、現在は学問的には、ゴリラのほうが平和的だとしているんだから。」
一戸が宥めたがゴルルは、まだ、かの名作“猿の惑星”の猿達の設定への不満が収まらなかった。エルフがそれを無視して、
「大体、私達が、何番目にきれいと聞いたら、3番目と言ったんですよ、マスターは。しかも、1人は男なんですよ。」
「馬鹿!それを言ったら、主様が暴走するわよ!」
エルフを止めようとした巫女の言葉は遅かった。
「あれは古事記伝えるところの」
と言い出した彼に向かってカナが、
「ちょっと、今日あんたは、何か相談事があったんじゃなうの?」
奇跡が起きた。その言葉で、彼の暴走が止まったのである。ただし、
「私的なことで、お二方の物語を止めて申し訳ありません。」
わけの分からないことを、言ってから、
「実は」
と話し始めた…