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現代病床雨月物語 第三十五話 「依怙地巡礼(その四)京都編」

作者: 秋山 雪舟

京都府の古寺巡礼は大阪府と同じく十二寺あります。これは『近畿三十六不動尊霊場案内』の作者が京都の古寺を慮ったからだと思います。作者は大阪を軸に古寺を紹介したかったのだと思っています。

 大阪出身の私も小・中学校で行く遠足(社会見学)で寺院と言えば奈良・京都なので飽きてしまっていました。特にその年頃の時期は歴史的知識が乏しいため退屈でした。そんな中でも東大寺と法隆寺は別で壮大さや威厳のようなものを感じていた事を思い出しました。ですから私は、この本で大阪の寺院が沢山あり新鮮な感じを受けました。

 しかしこの『近畿三十六不動尊霊場案内』の作者は、読者(巡礼者)のためにも京都は外せないと考えたのでしょう。京都の寺院はほとんどが有名な所であります。あまりにも観光地として整備されていて信仰の面影や姿が見えにくくなっているのが現実であります。

 第十三番・大覚寺門跡(木造座像=鎌倉時代作=重要文化財)は寺と周辺が平安時代の貴族の生活環境を偲ばせるものがあります。隣の大沢池には舟を浮かべて遊んでいたとあります。また少し離れた広沢池と相まって落ち着いた風景を創り出しています。第十六番・実相院(木造立像=鎌倉時代作)はJR京都駅から遠く離れたところにあります。この地域の地名は岩倉であります。明治維新の元勲の「岩倉具視」がいたことでも有名です。この実相院には明治維新で活躍した志士たちの手紙が展示されていて興味深くながめました。第十八番・聖護院門跡(木造立像=平安時代作)は、すぐ近くに京都大学病院があります。第二十二番・北向山不動院(木造座像=秘仏)は、京都市伏見区の竹田にあります。「竹田の子守歌」の地であります。ここは町中で京都市の南の位置にあります。私が訪れた時は抹香が焚かれ近隣とのつながりを大切にしているこぢんまりとした寺院だと感じました。

京都の寺院は町中と郊外の区別がハッキリしているのが特徴であり郊外の寺院の方がゆったりとできます。

 私は巡礼でしばしば何か違うと感じてしまう事があります。それは寺院が創建当時とは異なる宗派になったりしてまったく別物に変化していることです。うまく説明出来ないのですが例えば江戸時代の日本人の体格が現代の日本人とは全然違っているようにまるで人種が変わったように感じてしまうのと同じ感覚にとらわれるからです。第二十四番・岩屋寺(木造立像=秘仏)もそう感じた寺でした。岩屋寺は京都市山科区にあり山科神社と大石神社に挟まれて存在しています。私が訪れた時は誰もおらず寂れた寺のように感じました。向かって左隣の山科神社は、地名の由来の神社でもあり初詣も盛んであります。右隣の大石神社も「忠臣蔵」で有名な大石内蔵助(大石良雄)を祀っています。今は岩屋寺も「忠臣蔵」の義士の寺であるそうですが私は二つの神社ほどの元気がないように寂しく感じたのが印象に残りました。

この寺は時代の栄枯盛衰を表わしていたのです。本ではそもそも岩屋寺は「忠臣蔵」の出来事よりも遥かに古く平安時代の創建であり、不動尊は秘仏の木造立像と書いてあります。これも、うつせみの巡礼の現実であります。これからも寺院の変化を見届ける依怙地巡礼は続きます。


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