第25章 27.それとこれとは別の話
皆様、長らく放置してしまい大変申し訳ありません。ストックが完全に尽きてしまったことと、時期的に仕事が多忙で創作意欲が湧かず、なかなか更新することが出来ませんでした。こんな為体にもかかわらずブクマ数がほとんど減っていないことには、驚きと同時にとても嬉しかったです。また少しずつの更新にはなりますが、お付き合いいただけると幸いです。
一方、アイシスからの吉報を今か今かと待つ特務隊一同。
するとその時…
(クラリスちゃんっ…、クラリスちゃんっ…!)
(……ッ?、お姉ちゃんっ…?)
アイシスは皆の元へは戻らず、現地から以心伝心でクラリスの精神に語り掛けた。
ちなみに以心伝心は通常相手が近くにいなければ通じ合えないはずなのだが、そこは何から何まで規格外のアイシス。
1キロ以上も離れた現場から、間近にいるかの如くのウザさでクラリスに絡む。
(お姉ちゃん、ちゃんと仕事したわよぉ〜!、偉いでしょうぉ! あとでたっぷり、クラリスちゃんたちからたーんとご褒美もらわなきゃね!)
(う、うん……ありがとう……、考えとく…ね……)
状況が状況だけに、アイシスの要求をいつものようには無視し切れないクラリス。
ところが…
(アイシスさん、アイシスさんっ、聞こえますかっ?)
(……いっ…!?、そ…その声は……)
なんと二人の精神の会話に割り込んで来たアリア。
アイシスの弾みに弾んだ声は、途端に震えて固まってしまった。
(まずは任務完了ご苦労様でした。後でレイチェル様より御言葉があるとは思いますが、とりあえずは私の方から感謝を申し上げます)
(い…いやぁ……、ど、どういたしましてぇ……あははは……)
意外にも丁重に礼を伝えるアリア。
緊迫した心がホッと弛むアイシスであったが……
(で、話は変わりますが、最初にアタシが言ったこと覚えてくれてましたよね…?、街の人たちに迷惑かけてないでしょうね…? まさかとは思いますが…そこら辺の女児にイタズラしたりとか……)
互いの精神を介した通信ではあるが、アイシスに届くアリアの声は一際重みが効いていた。
(ひっ…、そ、そんなことするわけないじゃないっ…、もうっ、私を何だと思ってるのよぉっ。ちゃーんと真面目に仕事してましたぁ。むしろ、街で売ってたパンの衝撃的不味さに、この街の人たちのためにより一層頑張らなきゃって思ったんだからぁっ)
(そ、そうですか…、失礼なことを言ってしまいすいませ………ん?、待てよ…、『街に売ってたパン』って……、どうしてそのパンが不味いってわかるんですか?)
(あっ…、しもた……)
(あんたお金なんて持ってないですよねぇ…?、そもそも姿を消してて、買い物なんて出来る状態じゃないですよねぇ……、まさか盗んだんですかっ…?)
(え…ええと…、説明するととても長い話になりましてぇ………ああぁっ…ちょっとお腹がぁ……おトイレ行かなきゃ……、ほなさいならっ〜………ブチッ…)
(あっ、おい、こら待てっ…!)
アイシスは一方的に通信を断絶して逃走した。
「アリア、如何したのです?、まさかアイシス殿の身に異変でも……」
アリアの厳しい表情を見て、何か不測の事態でも発生したのではないかと危惧するレイチェル。
「い、いえ…、任務は見事完遂してくれたみたいですが…、どうやら姿が見えないのをいいことに、街で盗みを働いたようです…。まったく、あれほど街の治安を乱すなと警告したのに…、後でたっぷりお仕置きをしてやらないと……」
「まあまあアリア、落ち着きなさい。戦地において現地調達という名目での盗犯行為は、目を瞑らざるを得ない状況は多々あります。無論、アイシス殿の行為は決して褒められたものではないですが…、ここは彼女の働きに免じて大目に見てあげましょう」
「は、はぁ…、かしこまりました…」
レイチェルの口から出た予想外の寛大な処置に、思わず拍子抜けしてしまうアリア。
しかしレイチェルの言葉はさらに続いた。
「まあ実を言うと、この程度で済んで良かったというのが本音です。アイシス殿の異常性癖に関する噂は私の耳にも届いておりましたから。もしも市中の女児に猥褻行為を働くような蛮行に及んでいたのならば…、景気付けとして我が愛剣の糧にしていたところです」
……………………
そんなこんなで、色々な意味で命拾いをしたアイシスであった。
それから…
「さて、ともあれ準備は整いました。では作戦通りに城内への突入作戦を開始します。覚悟は出来ていますね?、皆の者」
「はいっ!」
決戦を眼前に控えて、皆に最後の檄を飛ばすレイチェル。
先にマルコンが伝えた通り一同は二手に分かれ、一方が重装兵に扮して王城正門から、もう一方がアイシスが制圧した通用門から侵入する。
「よし、別動隊の者は私に付いて来い。兵団の武器庫へ案内しよう。ではレイチェル様、次にお会い出来るのは我が主君の…そして御父上の仇を見事に晴らされた時…。何卒御武運を!」
「ええ、あなたがいなければ、我々はここまで来ることは到底叶わなかったでしょう。改めて甚く礼を申します。皆のことよろしく頼みましたよ? そしてあなた自身もご無事で…、城内にいる御父上にも久々にお会いになりたいでしょう?」
「……ふっ、そうですな…。家族を捨てた私のことなど、今でも息子だと思ってくれていればですがね…」
唐突に父ゴルベットのことに触れられて、マルコンは動揺を紛らわすように苦笑を浮かべる。
さて、王城正門から突入する別動隊に選ばれたのは、ビバダム、ヴィット、トレック・ライズドの4人。
こうして特務隊一同は、いよいよ仇敵ゲネレイドの首を獲るべく作戦に移った。




