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とある魔導士少女の物語   作者: 中国産パンダ
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第22章 8.教え子たちの成長

それから…


「それにしても本当によかったっ…、お前たちの元気な姿がこうして見られるなんてなぁっ……。それにしても、会うのは1年ぶりだが、何だか数年は経っているかって思えるぐらい成長したなぁ、お前らっ……」


 クラリスとリグに再会して、改めて感無量のアリア。

 彼女に成長を褒められて、二人は互いにチラチラと顔を合わしながらいじらしくはにかむ。

 すると、アリアは二人が全く予想だにもしないことを口にした。


「そういえばお前たち、フェルカさんを探してたった二人だけで、ずっと世界中を旅していたんだってな? 逞しく見えるのもきっとそのためだな」


 なんとアリアは、クラリスとリグの世界を股に掛けた逃避行を知っていた。


「ええっ…!?、なんでそれを知ってるんですかっ…? あ、もしかしたらビアンテ先生…マルコンさんに聞いたんですか…?」


「いや、そうじゃない。実はな……いんや…これは今言わない方が良さそうだな…。後の “お楽しみ” ってことにしておこう。お前らがぶったまげる顔も見たいしなぁ…ふふふふ……」


 良く似合うイタズラな顔で、アリアは二人にほくそ笑む。


「えっ〜!、一体なんですかっ?、教えてくださいよぉ!」


「そうだよ!、めっちゃ気になるじゃんかよ〜!」


「まあそう言うなって…、せっかくこうやって久々に会えたんだ……、ちょっとぐらい意地悪させてくれたっていいだろ…? それよりも……お前らがジオスに戻って来た理由は……」


 言葉の変調とともに、穏やかだったアリアの表情が急に曇った。

 その時点でクラリスとリグは、彼女が尋ねようとしたことをすぐに察した。

 自分たちの意志の強さを見せるためにも、二人はアリアよりも先に打ち明ける。


「はいっ…、レイチェル様の下で…みんなと一緒に戦うためですっ…」


「俺たち、父上の仇が取りたいんだっ…!」


 強い目で訴えるクラリスとリグの姿が、(かえ)ってアリアの心を痛ましく締め付ける。

 二人から目を背けるように少し俯いた彼女…、沈痛に顔を歪ませて言った。


「アタシは反対だ…。戦ってこの国を守るのは大人の仕事……お前たちのような未来ある子供がそんなことに関わっちゃいけないんだ……。そして当然だが、アタシはお前たちを危険な目に遭わせたくない……。でも一方で…、そんな覚悟を背負って幾多の苦難を乗り越えてここまでやって来た、お前たちの気持ちも尊重してやりたいとは思ってる……」


「先生……」


 当然断固反対されるとは思っていたが、その一方で自分たちの切なる想いも酌んでくれたアリアに、クラリスとリグは胸を熱くする。


「それに…、意地っ張りで、一度心に決めたことは断固として曲げない……そんなやつらだったよな、お前らは…」


「はいっ…!」


 迷いなきクラリスとリグの返事を聞いて、心憂いながらも表情を和らげたアリア。

 教え子たちの成長を改めて嬉しく実感しながら、彼女はそれぞれの手で二人の頭を荒っぽく撫でるのだった。




 ところで…


「お前たちの気持ちはよくわかった…。だが、さすがにこれはアタシの一存では決められない。フォークにおられるレイチェル様のご判断を仰ごう…」


「そうですね…。ところで…、やっぱりここはフォークじゃないんですよね…? 私たちはフォークを目指して来たはずなんですけど……」


「ああ、ここはフォークから南東に200キロは離れたエルパラトスの地だが……、『フォークを目指して来たはず』ってどういうこと………いや、そんなことよりも、さっきからお前らと一緒にいるこの女性は一体誰なんだ…?」

 

 再会の感慨ですっかり等閑(なおざり)にされてしまっていたが…、ようやくアリアはアイシスの存在に触れた。


「はじめましてっ、私が二人のお姉ちゃんのフェル………」


 性懲りも無く、またもやフェルカを騙ろうとするアイシス。


 だが、『絶対に言わせてなるものか!』という、クラリスとリグの刺々しい眼光を浴びせられて、思わず口を噤む。


「わ、私はこの二人のお友達……おほほほほ……」


 さすがのアイシスも、ハメを外し過ぎたと反省したようだ。


(『お姉ちゃん』… ?、『お友達』…?、一体何なんだ…この人は……。敵ではなさそうだが、何だか()()()()()不審者の臭いがするなぁ……)


「そ、そうか……、ともかくすぐ近くに我々の野営地がある…。とりあえずそこに行こう……」


 一人だけ妙にテンションが違う、得体の知れない謎の女に戸惑いながらも、アリアは三人を自軍の野営地へと案内した。




 こうして十数分後…、アリアに連れられて、王国義勇軍の野営地に到着したクラリスとリグとアイシス。

 数十ものテント小屋と掘っ立て小屋が整然と並んで設営されており、敷地内にはちらほらと兵士たちの姿も確認出来る。

 ただ、皆疲れ果てたようにその顔には精彩がなく、野営地全体を覆う空気もヘドロが(まと)うようにどんよりとしていた。

 そしてアリアも、敷地内に足を踏み入れて以降、表情を険しくさせている。

 ただならぬ不穏な雰囲気に、クラリスとリグ、さらにはアイシスまでもが不安顔を隠せない。

 そんな三人を連れてアリアがやって来たのは、敷地の中央奥に位置する、『司令部』という簡素な看板が建てられた小屋だった。


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