表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある魔導士少女の物語   作者: 中国産パンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

435/623

第20章 26.成功の代償

 こうして心機一転、再び転移術に挑戦するクラリスとリグ。

 今度は事前にイメージを打ち合わせたこともあり、心象の共有は至ってスムーズに進む。

 そして…


(何…この感覚……、なんか…体がふわふわしてる……)


(何だろう…、なんか心が遠くに行っちまうような……)


 次に二人を襲ったのは、夢心地というほど上等なものではないが、それに近い感覚だった。

 宙にふんわりと浮くように足元に重力を感じなくなる…、身体が真っ白で際限なく広がる空間の上を儚く漂い、時間の流れから取り残された感を覚える…、己自身が身体の束縛を超えて、精神そのものと化す……。

 それは時間にしてみたら、たった1分も経っていなかった。

 いつしかクラリスとリグの認識が、時間の概念すらない “無の世界” から解放されたことを知らせる。

 その瞬間、二人の耳と鼻と足元に飛び込んで来たのは、ザァ…ザァ…という細波(さざなみ)の音と潮の香り、そしてギュッとした小気味良い踏み心地…。


(えっ…、まさかっ……)


 恐る恐る目を開いた二人…、カメラのフラッシュを浴びるような眩い光を伴って、眼前に飛びこんで来た光景は……


「う、海だっ……!」


「すごいっ…、ほんとに成功したの……?」


 爽快なエメラルドグリーンの海に、キラキラ光る真っ白な砂浜…、そう、二人は見事転移を成功させたのだ。


「ほほほほ…、次は上手くいったようじゃな…、初めてにしては上出来じゃ」


 それから数十秒後…、二人を追って転移して来たルロドが、朗らかに労りの声を掛ける。

 しかし、その時だった。


「よっしゃあっー!、やったなっ、クラリスッ………あれっ…、おいっ、クラリス……どうしたんだ…?」


 歓喜を露わにするリグだったが、突然クラリスがその場に(うずくま)ってしまった。


「なあ、本当にどうしたんだよ……、しんどいのか…?」


「わかんない……、でも…急に頭の中がぐらぐら揺さぶられる感じになって…、胸が何でか、悲しい時にみたいに張り裂けそうになって……」


 全く自分でも原因がわからず、呼吸が乱れて涙すら流すクラリス。


「えっ…、一体何なんだ…、俺何ともないぞ…? ほんと大丈夫かよ……」


 クラリスの只事ではない異変に、リグは心配をしながらも酷く動揺を見せる。


「うーむ…、初めての転移に、体が上手いこと順応出来んかったのかのう…? 実際、“転移酔い” はそう珍しくはない。とはいえ、ここまで悪化したのは見たことがないが……。まあよい、何はともあれ転移は成功したのじゃ。今日の修行はこの辺にしておいて、家に戻って安静にしておるとよい…」


「はい…ご迷惑おかけしてすいません……」


 ルロドは淡々とクラリスを気遣う。

 すると…


「よっしゃあっ!、やっと休みだぁ!、思う存分フットボールの練習ができるぜ! そうと決まれば、急いでドリスとヴェルたちを連れて来なきゃっ!」


 今日の修行はもう終わりだと思い込んで、これでもかというほどウキウキなご様子のリグだったが……


「は?、何を言っとるんじゃ?、わしはクラリスに言っただけじゃ。おぬしは違うぞい」


「ええっ…、な、何でだよっ…? だって俺たち、二人で一つじゃんかっ…!」


「クラリスはデール族の血を引いておるが、おぬしは違うじゃろう? ただでさえ、この子と比べておぬしは遅れておるのじゃ…、むしろ差を縮める好機だと思うことじゃな? それに、おぬしはどうも調子に乗り過ぎるきらいがある…、良い機会じゃ、わしが一対一でみっちりと教え込んでやろう…、さあ、さっさと来るのじゃ」


「うわーんっ、クラリスー、助けてくれよぅ〜!」


 みっともなく喚き散らかしながら、補助術で腕力を強化したルロドに連行されていくリグ。

 そんな彼を、クラリスは罪悪感と憐憫(れんびん)とが入り混じった、複雑な思いで見送る。


(リグくんにはちょっと悪いことしちゃったけど…、本当にさっきのは一体何だったんだろう……。おじいちゃんが言ってた通り、単なる慣れの問題ならいいんだけど…。でも…、この胸の騒めきは……)


 体調は幾分落ち着いたが、それでもなお、彼女を不安にさせる謎の胸騒ぎ…。

 心持ちを気丈に保たせるように、胸をグッと強く抑えるクラリスだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ