表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の温度  作者: 看護学生になりたかった床屋のバーバー
1/1

人に対する好意とはどんなものなのだろう。

1話

自分はよく周囲の人間から「優しい人」だと言われる。だから、自分で言うのもなんだが彼女がいたこともある。しかしながら長続きした事は一度もない。全員が口を揃えて「思っていたのと違う」と言う。…何が違うのか?

「お前はさ、冷たいんだよなぁ。やけんやと思うけど。」

また昨日晴れてフリーの身になった俺は友人の松田に人生相談を持ちかけ、ご高説を賜っている。

「そりゃアツ男のお前と比べりゃ誰だって冷たいだろうよ。」

松田とは大学に入ってから知り合った。俺たちは看護学生であるため、キャンパス内にはほぼ女子しかおらず、男子の友達はとても貴重な存在である。そのため必然的にキャンパス内にいる間は一緒に過ごしている。今はラウンジでランチタイムというわけだ。そして松田はホークスファンではないため、俺の雑なボケはスルーした。

「やっぱ彼女が離れるんは興味を持たれてないことに気付いちゃったからやとおもう。お前って基本誰にも興味ないやん?」

割と酷い事を言われ、少し傷つく。

「どこら辺がそう見えんの?」

ムッとする気持ちを抑え、聞いてみる。なぜなら、本当に自分のどこがそう見えるのか見当もつかないからだ。看護学生なだけあって俺は普段から周囲に気を使っているし、親切にもしているつもりだ。人とも普通に話すし…とにかく心当たりが無かった。

「じゃ、人を好きになった事ある?」

変なこと聞く奴だな。

「あるに決まってるだろ。」

彼女も居たんだし当たり前だ。

「じゃあ、振られた時どう思った?」

それは…どうだったろうか。

「ショックだったと思うけど。まあ俺が悪かったんやろなーと反省はしたはず。」

「ほーん…じゃあお前から告った事は?」

ないけど…それは巡り合わせとかタイミングの問題であって、好きな子ぐらい…居ただろうか?

「それは無いけど。」

「ウザいなお前。じゃあ告白されていつもオーケーするのはなんで?」

ウザいって…自分が聞いてきたんだろうに。いや別になんでも良いんだけど。オーケーの理由か、難しい質問だな。

「…俺なんかに告白してくれたからかな。」

実際こんな理由だったと思う。そんなに深く考えたことがないのかもしれない。

「あー…やっぱり。」

ん?

「今回の自分の答えをよく思い出して考えたらわかる思うで。」

分からんけん聞いたのに。なんて奴だ。

「じゃあ俺呼び出しくらったけん行ってくるわ。」

「早よ行け、時間の無駄やったわ。」

何の足しにもならないありがたいお言葉に悪態をつきつつ、次の講義の準備をしに更衣室に移動する。移動中もずっと自分の人間性について考え、中二病かと思って途中から思考を放棄した。

次の授業は実習なのでユニフォームに着替えなければならない。子供の頃から正直言ってナース服のお姉さんに憧れていたのだが、自分のユニフォーム姿は何だかんだしっくり来ず、看護士というよりは、マッサージ師に近い感じだった。俺は向いてないのかもないな、看護士。

実習室に入り、グループのメンバーに挨拶して着席する。この際どうしても少し気まずい雰囲気になってしまう。4人グループの中の1人がまぁなんというか、元カノというやつなのである。付き合っていた当時、急に「友達に戻った方がいいんかな?」というメールがきたので、翌日になって別れても良いと伝えると泣かれてしまい…まぁあまり良くない別れ方をしたのだ。以来友達にも戻れず、気まずい状態が続いている。

「あー…今日はよろしくお願いします、楠田さん。」

「…ん。」

昔は亜美とか名前で呼べてたんだけどなぁ、と少し切ない気分になる。この子だけは別れる際に感情的になってきたので困ったのを覚えている。やはり俺が悪かったのかなと考えた。そんな事を思い出しながら実習が始まった。

実習が始まってしまえば、馬鹿な俺には他のことを考える余裕などなく集中するしかない。今日の講義の内容は、包帯の巻き方だった。患者3人と看護士1人に別れて、様々な患部の状態にあった巻き方を学習し、ローテーションで交代していくというものだ。包帯の巻き方も色々あり、ただグルグルするだけのイメージが壊されてしまった。意外に多いのだ種類が。実習が終わる頃にはもう疲れ果てていた。というのも、さっきのランチタイムが意味のない人生相談によって潰されたからだ。(松田は早弁したから関係ない)次の講義まで一コマ空くので、ラウンジで寝ようと荷物を取り立ち上がると、どういう風の吹き回しか、楠田に話しかけられた。

「彼女と別れたん?」

何を思ったのかそんなことを聞いてきた。別に嘘ついたり無視する必要も無いので素直に話す。

「うん。振られた。」

これを聞いてザマァとでも言うんかな?と思っていたが楠田は表情一つ変えずただ一言

「そう。」

とだけ言って実習室を出て行った。元々こういうクールな子ではあったので、別にちょっと気になったぐらいかな、と思いさっさと俺も部屋から出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ