玲瓏の音4
学校の門から吐き出されるようにして次々と生徒達が出てくる。その生徒達は駅まで人の流れを作って、集団下校でもしているかのようだ。
私達はその流れに逆らうようにして学校の中に入っていく。
全ての授業も終わり、各人がそれぞれの活動に入っていた。帰る子はもちろん、部活に行く子、委員会に行く子、補習を受ける子、それぞれの日常がそこにはある。
私達はあれから話し合って学校が終わる頃に行くことを決めていた。
クラスメイトに勘繰られるのは別に良い。それよりも、真奈美にしつこく聞かれるのを私と麗奈は嫌った。嘘をつけば何とでもなるけど、麗奈は今まで嘘をついた分もう真奈美に嘘をつきたくなかった。
私と麗奈は周りに真奈美がいないか、注意して職員室に向かった。
真奈美に会わずに着いて、職員室の扉を開ける。
所属クラスと名前を言ってから葛西先生を呼ぶと、先生は駆け足で向かって来る。
「浅川と有藤か、二人して寝坊ってわけではないよな」
冗談めかして言った一言だったけど、私たちは笑わず応える。
「今日休んだことは謝ります。でも、大切なことを聞きたくてここに来ました」
私が言うと、先生は麗奈のように鋭くこちらを見つめる。
「単刀直入に聞きます。私の父、木戸聡について教えてください」
先生は低い声で答える。
「誰に聞いた。陽輝か。でもあいつは木戸が嫌いだったはずだ」
私は首を振る。
「違います。生まれた家の蕎麦屋のおばさんから聞きました」
「裕子か」
小さく舌打ちしながら、先生は言った。
「お前のお父さんはお前の望んでいる人物じゃないぞ」
私を強く力のある目で見つめる。私はそれに返すように見つめ返す。
数秒の間の後、先生は諦めたようにため息をつく。
「分かった。話すから場所を移そう。ここじゃ何かと話しづらい。それと麗奈、お前は聞かないでくれ」
†
私と先生は場所を数学室に移す。
部屋の中はムッとしていて、息をする度に湿気と熱を帯びた空気が肺に入り苦しく感じる。
先生が昨年度入れたばかりのクーラーをつけると、冷たい風が肌を包んだ。
先生は二つ椅子を取ると、教卓の前に向かい合わせになるように置いて座るように言った。
「さて、何から話したものかしらね」
普段の口調とは違って女性らしい話し方をする。
「喋り方いつもと違うんですか?」
「ああ、これね。公私を分けるために仕事用と私用で、喋り方や態度を変えているのよ」
声も普段より高く、柔和な印象を与える。
「すみません。出鼻をくじくようなことを聞いてしまって」
先生は軽く笑う。
「本当に小夜はお母さんに、明夜にそっくりね」
さっきのおばさん、裕子さんのことを思い出した。
「さっきも裕子さんに言われましたよ」
「言い方よ。明夜もそうだったけど、すみませんって謝っているのに、声に抑揚がそれほどないから、心を込めて言っているのか分からないのよ」
美紗子さんは、よくそれで誤解を招いていたわと、また笑う。
「そうね。まず順を追って話すわ。まず明夜と私の話から、その話は陽輝ちゃんや裕子から聞いていないでしょう?」
「はい」
美紗子さんは話し出す。
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