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守護者と鍵   作者: 井藤美樹
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第二話 過去の過ち

 



 ーー十年前。



 私は甲野村に住んでいた。



 この時はまだ、町ではなく村と登記されていた頃だ。



 私には当時、すごく仲の良い親友がいた。井野玲子という名の、日本人形みたいに可愛い女の子だ。私は学校の帰り、二人でよく遊んでいた。玲ちゃんのお祖父さんが大家さんをしている〈裏野ハイツ〉で。



 裏野ハイツには、いつも空室の部屋があった。二○二号室だ。



 いつも空いてるからか、その部屋は破格の安さで提供していた。安さにひかれて引っ越してくる人もいたが、皆一週間も経たずに引っ越してしまう。その理由は、壁をひっかく音がするとか、変な気配がするとか……そんなことを皆口々に言っていた。



 だがそこで、いつも遊んでいた私たちは、一度もその音を聞いたことなはかった。だから気にも留めずに、私たちはその部屋をかっこうの遊び場にしていた。お祖父さんや隣に住んでるお婆さんに見つかったら、すごく怒られる。そのスリル感も私たちは楽しんでいた。






 玲ちゃんがいなくなったーーあの日。



 私たちは彗星を見る約束をしていた。数十年に一回見ることが出来る彗星。彗星の話をしだしたのは、玲ちゃんだった。玲ちゃんは星とか見るのが好きで、自分の望遠鏡も持っていた。



 約束したのだ。



「あの部屋で夜一緒に見よう」って。



 私はよく、母さんが夜勤の晩、家を抜け出してアパートに遊びに行っていた。玲ちゃんは両親を早くに亡くしていて、お祖父さんと二人暮らしだった。私は父を亡くして母と二人暮らしだった。似たような境遇だったからか、私たちはいつも二人で遊んでいた。



 でもその日……。私はなかなか家を抜け出すことが出来なかった。その日に限って、母が遅く家を出たからだ。



 看護婦をしている母が夜勤で家を出てから、抜け出そうと思っていた私は、母が早く出るのを、今か今かと待っていた。そわそわしながら母さんを玄関で見送って、急いで約束したあの部屋に向かった。だけど……玲ちゃんの姿はどこにもなかった。




 電気をつけた私がその部屋で見たものは、玲ちゃんの望遠鏡と、食べかけのお菓子とジュース。そして、大きな血だまりだけだった。その血は隣の部屋を遮る壁に向かって伸びていた。




 私が覚えているのはそこまでだ。後は何が起きたか、覚えていない。気が付くと、私は病院のベットに寝かされていた。警察が来て、玲ちゃんのお祖父さんに会って、泣きつかれて、マスコミに追われた。




 その数日後ーー私を心配したお母さんは、祖母が住んでいる今の町に引っ越した。




 引っ越してからも、しばらくの間……私は同じ絵を描いていたという。その絵に描かれていたのは、黒い形をした大きな人型の化け物だった。





 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。ひんやりして頂けたでしょうか。

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