第十五話 深まる謎
深夜、構内を巡回している時だった。
一回目の巡回で閉まっていたはずのドアが開いてるのに気付いた。警備員はまたかとちっと舌打ちする。深夜、構内に忍び込むカップルが多かったからだ。今回もそうだと思った警備員は、疑いもせずに教室に入った。
「誰かいるんですか?」
そう声をかけながら、懐中電灯で教室内を照らす。パンプスが床に転がっているのが見えた。警備員はドアの付近にある電気のスイッチを入れた。教室内が一瞬で明るくなる。女性の細い脚が見えた。
(これで隠れてるつもりか)
苦笑いを浮かべながら、動かない女性の正面にまわった。
その瞬間ーー警備員は腰を抜かし、その場に座り込む。だが次の瞬間、声にならない叫び声を上げ、教室から転げるように飛び出した。
◇◇◇
翌日、私と加奈がいつもと同じように大学に行くと、大学は休校になっていた。掲示板には一週間の休校のお知らせが張られてあった。理由は、諸事情のためと書かれてある。
「何かあったのかな?」
私は加奈に尋ねた。
「もしかして、また発見されたのかも、死体が」
茶化して言う加奈に、私は「不謹慎だよ」と咎める。咎めたのと同時に、加奈が「痛っ!!」と軽い悲鳴を上げた。後ろを振り返ると、山口が立っていた。
「おはようございます。山口さん」
私は彼に挨拶する。山口の登場が、加奈の言葉があながち的外れではなかったことを知った。
「ああ、おはよう。朔夜様」
町の人達は私のことを様付けて呼ぶ。だから、校内で私はどこかのお嬢様だと思われていた。裏野ハイツで住んでいるのは、社会勉強ためだと思われている。訂正するのもめんどくさいので、私はほおっておいた。
「ひっどーい。あたしには挨拶なしなの」
拗ねた言い方をする加奈を、山口は無視すると私に言った。
「今晩、会いに行ってもいいかな?」
その言い方に、私は彼が会いに来るのは私ではなく、玲ちゃんだと分かった。
「いいですよ。玲ちゃんと一緒に待ってますね」
私はにっこりと笑って答えた。山口は少しびっくりしたような顔をするが、直ぐ、いつもの強面の顔に戻ると構内に戻って行った。
「最後まで、あたしは無視ですかっ!」
怒りだした加奈を宥めるように、私は加奈をカフェに誘った。
今時の私立大学は、お洒落なカフェの店舗が構内に並立されているのは珍しくない。
席を取るためにテラス席に座った私の耳に、女子学生が話している噂話が耳に入ってくる。
「お待たせー。朔夜はイチゴのパンケーキだったよね」
加奈がパンケーキがのったお盆を置きながら言った。そして、横の席に座る。
「ありがとう」
私はパンケーキを受け取る。その間も、女子学生の噂話が耳に入ってきた。彼女たちが話しているのは、やはり、昨日起きた事件のことだった。
(やっぱり、事件が起きてたんだぁ)
「朔夜がカフェに誘った理由が分かったよ」
加奈が小声で言った。
「ここが一番、集まる場所だからね。色々な噂が」
「確かに」
加奈はそう言いながら、噂話に耳を傾ける。あくまで自然にカフェを楽しんでいるような振りをして。でも詳しくは聞き取れない。昨夜、教室で死んでいるのを警備員が発見したくらいしか、聞き取れなかった。その中で、ちょっと気になる単語が、私と加奈の耳に入った。
(……痣?)
彼女たちは確かに、痣かどうのこうのと話している。
噂話に耳を傾けながらパンケーキを食べていると、加奈と私のスマホが同時に鳴った。グループラインだ。私はタップする。
(ーー!!)
私はラインを読むと立ち上がった。
「加奈!!」
「行こう!!」
私と加奈は席を立つと、慌ててサークルの部室に向かった。ラインには短くこう書かれていた。
〈緊急連絡〉
もし大学構内にいるのなら、至急、部室まで来て下さい。
塩見さんが、昨夜亡くなりました。
昨日教室で亡くなったのは、同じサークルの塩見先輩だった。この大学で立て続けに死体で発見された二人は、私と加奈が所属している同じサークル仲間だったのだ。これは偶然なの? 私はいい様のない不安を感じていた。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました。長い間お待たせして、申し訳ありませんでした。これからも一生懸命書いていきますので、応援宜しくお願い致します。




