第十三話 異様な死体
食堂の件から、数日後。
ある女性の死体が、大学の構内で発見された。研究棟の裏にある池で、うつ伏せの状態で浮いていたのを、清掃業者の人が発見したらしい。
ーー他殺か、事故か。
警察の判断はついていない。
ただ……これはあくまで噂だが、女性の死に顔が、あまりにも異様過ぎたって。恐怖に歪んだその顔は、人間がする顔ではなかったって噂で聞いた。
「本当に、今回の件は主様は関係ないんだな」
井上先輩が失踪した件で来た刑事さんが、裏野ハイツに住む私たちに確認しにきた。その事からも、女性の死に様が異様過ぎたことが伺える。
ーーそれに。
死んだ女性と私と加奈が食堂で揉めていたのを、多くの人が目撃していた。食堂で私に悪態をついてきた、あの子だった。
「しつこいぞ、山口。我は関係ない」
いつの間にか私の隣に立っていた少女の口から、容姿に似つかわしくない台詞が吐き出される。
「主様!!」
山口は突然のことで驚く。頭を深々と下げ「申し訳ありません!!」と、少女の姿をした人食い鬼に謝罪する。
「ところで……山口、その死に顔はそんなに異様だったのか?」
少女は山口の謝罪を聞き流すと尋ねた。
私はそんな彼らの様子を側で見ていて、すごく異様だと思った。小学生に強面で体格のいい男性が、頭を下げ、謝罪しているのだ。異様に映っても仕方ないだろう。自分も当事者なのに、一歩離れた場所から見ている。だから私は、自分が保ててるのだと思った。
「ーーはい、主様。あまりにも異様過ぎて、本部でも判別つきません」
困惑したように、山口は言う。
「具体的に説明しろ」
少女は尚も説明を促す。
「はい……実は、秋山葉子の死亡推定時刻は、夜の十二時から一時三十分の間。早朝、清掃業者が道具を片付けに行く途中で発見したようです。私たちがうつ伏せになっていた死体を仰向けにしたところーー」
山口は一旦、言葉を切ると私たちを見た。私は頷く。山口は重い口を開いた。隣で聞いていた私と加奈も、思わず息を呑んで、山口の言葉を聞き入る。
「眼球が半分飛び出し、口は大きく歪み……最も不可解なのが、自分で自分の首を絞めていたことです。それも異様な力で。両手は喉の肉に、しっかり食い込み、親指は骨まで達していました。死因は窒息ではなく、出血死です」
(自分で自分の首を締めた!? それも親指が骨に達するまで!!)
確かに、異様過ぎる。普通では有り得ない死に方だった。私は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。何故山口が、わざわざ私たちに確認をとりにきたのか、その理由が分かった。
少女は黙って、山口の話を最後まで聞いていた。
「……それは、おそらく〈呪い〉だ。それもとても強力なものだな」
少女は答えた。
大変お待たせしました。
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