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辺境遊戯・改訂版  作者: 渡来亜輝彦
第十一章:休息の街
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3.身の程を知らぬもの

 レックハルド=ハールシャーの最期について、後世、様々な伝説が生まれた。

 ギルファレス帝国最後の宰相である彼を、悪の化身とする物語は、非常に分かりやすく語りやすいものだった。帝国の前帝王が名君だったというのに、彼が宰相になった途端に滅びた。まだ若く、成り上がりもので、辣腕をふるっていた彼を悪党にすることは、いかにもたやすいものだった。

説話の中で彼は、幼い帝王をたぶらかした絶対悪でなければならなかった。

 英雄であるザナファルとカルナマクに倒された伝説は、子供たちの説話になり、後世長く語り継がれている。実はあれは邪神の化身で、封印されただけだと語るものもいる。


 しかし、スティルフの歴史書のハールシャーの最期は余りにもあっけなかった。

 処刑前に絶望の余り狂乱した挙句、崖から身を躍らせて死んだというのは、悪の権化のような彼の存在にはふさわしくなく、その部分が人々の口に上ることは非常に少ない。それでは、まるで彼が取るに足らない小者のようだ。実際、歴史学者のスティルフにとって、ハールシャーはそれだけの存在でしかなかったのかもしれない。

 

 実際の彼は、確かにただの人間だった。力もなく、威厳に満ちているわけでもない。色気はあるが取り立てて美男子でもなく、長身痩躯の彼は「風采の上がらない男」と言われればそれまでだ。

 しかし、サライ=マキシーンにとって、彼はある種恐ろしさを感じさせる男だった。それは、頭が切れるからでも、弁舌がたつからでもなかった。

 最も恐ろしいのは、あの、身の程を知らない程、野心にあふれた目だ。

 同時に彼の魅力はそこにあるのかもしれなかった。どこか冷めているくせに、彼の目は世界の果ての輝きを見つめている。そういう目をしている。まさに身の程を知らない男の目。あれには、彼は何かしでかすのでないかと、そう期待させてしまう力を秘めていた。

 前帝王に惚れこまれて、あの若さで宰相に抜擢されたのには、間違いなくそれがあったのだろう。


 ***


「そこにいて死を待つ気持ちというものを訊きたい」

 サライがそう尋ねたとき、ハールシャーは、あからさまに顔をしかめる事はなかった。ただ、皮肉っぽく笑っただけだ。

「敗北者に追い討ちとは、あなたも性格がお悪い」

 そういうハールシャーの顔には、敗北の色はない。だからこそ、サライも平気でそんな事が訊けるのである。

「そなたがいやに落ち着いているのでな、興味を持ったまでだ」

 サライが答えると、ハールシャーはひざを立てていたのを直した。

「そりゃ私があなたに聞きたいですな。私のような三十ちょいの小僧っ子じゃなく、何十、いや何百年、生きてるという噂をお持ちのあなたの考えを。私のような若造を陥れるとき、どういう感情をお持ちですか?」

「噂は噂だ」

 サライは薄く笑った。答えない様子に、ハールシャーは肩をすくめる。

「私に聞くよりは、いい相手がいるでしょう? さしずめ、今の私は負け犬ですからな。情にほだされた奴は、いつの世の中も負け犬ですよ」

「ほう」

 サライは興味深げにつぶやいた。

「馬鹿な事をしたもんですよ。ですが、後悔したって始まりませんがね」

 とらわれのハールシャーは、不羈ふきに微笑んでみせた。

「私は馬鹿馬鹿しい義理に絡められ、おまけに冗談じゃないような情けなんてもんに結局とらわれて死ぬんですよ。馬鹿馬鹿しくて笑うしかありません。一番嫌いだったんですがね、そんなものは……」

「その割には楽しそうだな、ハールシャー」

 サライは残酷に微笑んで言った。ハールシャーは多少腹を立てたのか、眉を少し動かしたが、しかし次の瞬間には妙な笑みが口に乗っていた。

「冗談はよしていただきたい。ただね、私ァ、自分が満足しねえってのは一番嫌いなんですよ。あのままだと、どこかで後悔する事になるでしょう」

 いくらか言葉を崩しながら、レックハルド=ハールシャーは胡坐の上で頬杖をついた。彼は話し込むと、徐々に喋り方が本来の彼の乱暴な喋り方に戻る。だが、だからといって話す内容が変わるわけではない。この喋り方のほうが、相手を弄しやすいし、それに周りのものが飾らない口調に引き込まれてしまったりする。当の彼が、それを計算してやっているのかどうなのかは、今のところサライには判別がつかなかった。

「そりゃァねェ、どうせなら長生きしたほうがいいですよ。すべての財産をなくしたって生きてるほうが俺はいい。他の連中は俺を守銭奴だと思っているでしょうね。でも、命のほうが大切ですよ。金なんかなくしても、俺はすべて取り返す自信がありますからね」

 サライに挑発的な目を向けて、ハールシャーは嘲笑うような笑みをみせた。

「まあ、死ぬ前には善行も良いでしょうな。地獄で門番に言い訳でもしねえと、どん底から這い上がってきた俺には、極楽への階段も見えやしねえんでね」

 言いながら、サライはレックハルド=ハールシャーの目を見た。茶色だが、光をすかすと碧が瞳の外側に宿って見える。そういう目が、ぎらぎらした光を放っているのを、サライは見た。

 言葉とは裏腹に、レックハルド=ハールシャーには、死ぬ気などこれっぽっちもない。彼の目がそう語っていた。

 ――隙があればいつだって逃げてやる。それに、なにもまだ殺されたわけじゃない。だから、機会はいつ巡るともわからない。そして未来も決まっちゃいない。まだ可能性がある限り、別に絶望する事はない。俺は自分の力を信じているからな!

 少なくとも、俺は、あんたが思うほど潔い男じゃねえんだよ。

 彼の目は、もとよりよく動く口よりもそう雄弁に語っていた。

 サライは、口の端に笑みを浮かべた。

「そうかね」

 立ち上がり、その場から離れようとした。それから、サライはふらりと彼のほうを見た。親友に向けるような優しい微笑を浮かべ、彼は言った。

「私はおぬしのそういう不敵なところが嫌いではない。いいや、気に入ってるよ」

 サライにハールシャーは微笑み返した。どこか抑えたような微笑を浮かべ、彼ははっきりといった。

「俺はアンタのそういうところが大嫌いだぜ。サライ先生」

 この狸爺……。

 かすかに口がそう動く。それを何故かサライは小気味よく思った。


***



「どうかなさしましたの?」

 サライは追憶から現実に戻った。傍には妻のリレシアが佇み、小首をかしげていた。

「いや」

 と断り、サライは思い出したように微笑んだ。

「あの男、相変わらずだなと思ってな。あの男の傍には、常に運命の女神がはべっているようだ。あの自信が強運を呼び寄せているのかもしれない」

 怪訝そうなリレシアの視線を受け、目を細め、サライは窓の外を見る。

「あの男は、結局、何でもかんでも自分の力で何とかしてしまうのだろうか、と思ったのだよ。たとえ無理なことだとわかっていても、きっとそうしようとする。どんな無理なことでも、おそらくは――」

 サライは目を閉じた。

「世の理も太母の大樹の正体も知らない。それだというのに、人間はいつも無茶をするのだ。あの男を思い出すと、つくづくそう思うのだよ」

 そして、何を思ったのか、彼は妻に向けて複雑そうな笑みを浮かべた。

「もっとも、……あれにとって世の理などどうでもいいことなのかもしれないが、な」

 


 *


 マリス=ハザウェイは、差し入れの果物を籠に入れつつ慌てて歩いていた。

「困ったわ。すっかり遅れちゃって……」

 あれから二日たっていた。

 とりあえずファルケンは復活の兆しを見せていて、それで、元気のなかったレックハルドもどうやらいつもの調子を取り戻したようだ。それで少し安心してしまったのか、今日はマリスは少し寝坊してしまったのだった。

(レックハルドさん、もうお仕事に出てしまったでしょうね)

 商人の常として、彼は朝が早い。そう思いながら、扉を開ける。 

「あ、おはよう、マリスさん」

 マリスが部屋に入ると、ファルケンがにっこりわらって挨拶してきた。今日は、服を着替えていて窓際で外を眺めていたところらしく、心なしか晴れ晴れとした表情だった。

「ファルケンさん、今日はもう起きていていいんですか?」

 マリスが心配そうな顔をする。

「うん、それは大丈夫。ちょっと動くと、痛いところもあるけど、そんなに寝てばっかりいられないしね。レックにもマリスさんにも悪いよ。昨日には熱も下がってたし」

「そう、よかった」

 マリスが微笑むので、ファルケンも同じように微笑み返す。それからファルケンは「でも」といった。

「オレも今日は出るって行ったんだけど、レックに止められたんだ。迷惑だから、寝てろとかいって……」

「それは、きっと、レックハルドさんがファルケンさんの事を心配されてるからですよ。レックハルドさんは、本当はとても優しい人ですもの」

 そうだな、とファルケンは返しつつ内心安心する。レックハルドに本来優しいところがあるのを見抜ける人物は、そうそういないのだ。どうやら、マリスはその辺ちゃんとわかってくれている。それを再確認しつつ、思いついたようにファルケンは尋ねてみた。

「あのさ、オレ、前から聞きたかったんだけど」

 きょとんとしたマリスに、ファルケンは無邪気に尋ねてみる。

「マリスさんは、レックのことは好きなのかい?」

「ええ。とても」

 マリスはにこりと笑って即答した。

「レックハルドさんは、とても優しい良い方ですもの。嫌いなはずがありません」

「そうか、よかった」

 ほっとしたような顔をして、ファルケンは窓の外を眺めた。

 ここで、もし嫌いだなどと言われたら、レックハルドに申し訳がたたないどころではなくなる。その答えに多少調子に乗ったのか、ファルケンはうっかりと口を滑らせた。

「実はね、レックもマリスさんの事が好きなんだよ。そういってた!」

「そうなんですか! よかった!」

 マリスが純粋な笑みを浮かべてさらりと返してきた。

(よしよし、マリスさんもレックの事好きっていってる!)

 狼人のファルケンに、人間の恋愛感情の機微などわかる筈もなかったが、彼は彼なりに仲介を務めているつもりだ。これはどうやら成功したらしいと得意げになった。

(今日はいい事したなあ! あとでレックに言ってあげよう)

 二人が何となくぼんやりと外を眺めていると、急にすたすたという早い足音が近づいてくる。それから、聞き覚えのある声が、少し乱暴な様子で向こうから飛んできた。

「おい、ファルケン、今日は大丈夫なら、ちょっと外に出て……」

 レックハルドは、言いかけて部屋の前で思わず立ち止まる。

 はたとマリスと目が合った。レックハルドは、少しだけ動揺した様子で、慌てて態度を取り繕った。

「あ、あれ、マ、マリスさん。いらっしゃってたんですか?」

「はい。今日はでも、ファルケンさんも大丈夫みたいでよかったですわね。お仕事なら、もしかして、ご迷惑じゃありませんでしたか?」

 マリスがそんなことを言うので、慌ててレックハルドは首を振った。

「そんなとんでもないですよ! マリスさんなら、いつでも来ていただいて……!」

 レックハルドが慌ててそんな事を言っていると、後ろからぬっとファルケンが現れる。

「あれ? どうしたんだ? 忘れ物か?」

 怪訝そうな顔つきでそう訊いた。その余りにものんびりした様子に、レックハルドは半ばあきれる。

(なんだよ。昨日まであんな死にそうな顔してたくせによ)

 妙に元気な様子のファルケンだ。

(オレがあんなに心配してたのにさあ!)

 ちょっと腹がたって、思わずレックハルドはマリスの手前つっけんどんに言ってしまう。

「チッ! あちこち、うろつきやがって! 無理して長引いても、今度は宿なんかとらねえからな!」

 慣れているファルケンは、レックハルドがどういう気持ちでそんな事を言うのか十分把握しているので、別に大した反応もしない。彼がそういう冷たい言葉を言うときは、十中八九、心配しているときなのだ。

 マリスの前では基本的にいい子になるレックハルドではあるのだが、一方で彼女の前でも、こういう時は照れ隠しに冷たい言葉を投げかけてくるのだ。ファルケンには、それがかえっておかしいので、思わず笑いそうになるのだが笑っているのがばれたら怒られてしまう。

「大丈夫だよ。もう、ちょっと痛いだけだもん。寝てるほうがかえって調子が悪くなるよ」

 ファルケンは、首を軽くかしげた。

「それに、レックとマリスさんには散々世話になったから、そろそろ何か返さないと」

「半人前が生意気いってんじゃねえの」

 レックハルドは冷たく返す。

「あ、そうだ!」

 ファルケンが急に明るい声で言った。それから何か言いかけたが、ふと思い出してレックハルドを部屋の隅に手招きする。

「な、何だよ」

「いいから」

 その様子をマリスは怪訝そうに見ていたが、何か音がしたのか、窓の外を見る。鳥が飛び立ったらしい。

「何だよ。マリスさんの前じゃ出来ない話なのか」

 そっとレックハルドが訊くと、ファルケンも珍しく小声で返す。

「オレはやってもいいけど、レックが怒るから」

「なんだよ? わかったよ、言ってみろ」

 レックハルドが鬱陶しそうに言うと、ファルケンはこくりと頷き、彼にしてはずいぶん努力した小声で言った。

「オレ、さっき聞いてみたんだけどさ、マリスさんは、レックの事が好きなんだって!」

「はっ?」

 意味のわからないレックハルドにファルケンはにこにこ笑いながら言った。

「さっき、きいてみたらそういってた」

「き、きいた!」

 理性が声を小声にとどめたが、レックハルドはひどく慌てふためき、真っ青になってファルケンにつかみかかった。

「おおおお、お前、そんな事きいたのか! なんでいきなり本人に聞いちまうんだ!」

「えー? なんでって?」

 急き込むレックハルドに、ファルケンは首をかしげる。果たしてあれは、そんなにいけないことだっただろうか?

「だってそのほうが答えが出るのが早いから」

「あほか! なんでそんなにお前は直接的なんだ! そんな事きいたら、オレの気持ちがーー! ダメだ! もう終りだ!」

 レックハルドは、ファルケンを突き放すと、部屋の陰で頭を抱えた。ファルケンは、意味がわからないという顔をして続けて言う。

「レックがマリスさん好きってのもいっといたけど、ダメだったのかなあ?」

「うわああ、馬鹿野郎! オ、オレが大切に温め育んできた感情をそんな一言で!」

 レックハルドは絶望を色濃く滲ませた顔で、暗く彼を見上げた。

 なにやら考えていたファルケンは、ふと振り返る。不穏さに気づいて慌ててレックハルドが止めようとしたが、間に合わない。

「でも、マリスさんはレックが好きだよな?」

「え? はい! もちろんですよ」

 少しだけ首をかしげて、マリスははっきりという。

「レックハルドさんの事は好きですよ。ご迷惑ですか?」

「い、いやいやとんでもないです!」

 レックハルドはファルケンを突き飛ばしながら、慌てて前進した。

「そ、そうですか! よかったなあ、オレもマリスさんのことが好きですよ! あはは! 嫌われてたらどうしようかなあ、なんて……」

「そんな事ありませんよ。だって、レックハルドさんは、とてもいい人じゃないですか!」

「そうですかあ? あははは、よかったです!」

 乾いた笑みを無理やり浮かべながら、レックハルドは思った。

(この子の好きって「猫好き」とか「この花好き」と同じだよなあ……)

 なんだろう、この軽々しさ。恋愛感情とはあまりにも無縁すぎる。とりあえず嫌われていない事はよかったが、かといって手放しには喜べない。

(嬉しいのか嬉しくないのか。なんか複雑だぜ)

 深くため息をついているレックハルドに、ファルケンは訝しげな顔をする。どうして複雑な顔をしているのか理解できない。マリスに至っては気づきもしていなかった。

「あ、そうだ! さっき、レックが言いかけたのって、結局何だったんだ?」

 ファルケンが思い出したように言った。レックハルドは、少し不機嫌にファルケンを見た。腹が立つのでもう何も言いたくなかったのだが、仕方なくレックハルドは言う。

「服を買いに行かなきゃいけねえから、今日、加減がいいならどうだ、といおうとしたんだ。なんか、お前、思いのほか、元気そうだし、ぶっちゃけ……暇そうだしよ」

「服?」

 今着ているのは、予備に持っていたもので、普段着ているいい方の服ではない。あれは、この前の一件でぼろぼろになってしまったのだった。

「あぁ、この前、派手に破けてただろ?」

「うん、それはそうだけど、繕えばまだ大丈夫そうだよ?」

「う、まあ、それはそうだが……」

 レックハルドは言いよどむ。本当は、何かとふさぎ込んでいる様子のファルケンを元気づけるのに外に連れ出そうと、その口実が欲しかっただけだ。しかし、ここまで元気になっているなら、余計な心配だったかもしれない。

 とは思いつつも、言いかけたことだしとレックハルドは、こほんと咳ばらいをした。

「お前はそれでいいかもしれないけどよ。オレもやられてるからよ。特に上着。布商人がボロ着てるとかシャレになんねえよ」

 そういうレックハルドは、妖魔に襲われたとき、刺繍の入った上着を破かれていた。上等なものだったので、ずいぶんと惜しい事をしたものだ。

「予定外の出費は痛いが、あんまり変な格好するわけにもいかねえからな。信用に関わることだぜ」

「それもそうだなー」

「お買い物ですか?」

 マリスが、急に話しに入ってきた。

「ええ。そうしようかと。あ、そうだ、マリスさんもどうですか?」

 レックハルドは、ここぞとばかりに誘ってみた。どうせなら、マリスも一緒に行った方がレックハルドとしても楽しい。

「いいんですか!」

 買い物好きのマリスは、思いがけない誘いにすでに乗り気だった。

「はい。この馬鹿がお世話になった礼もありますし!」

 ファルケンを軽く小突きながらレックハルドは、さらに言う。

「じゃあ、ご一緒させていただきます!」

 嬉しそうにマリスが答える。

「それじゃ、行きますか!」

 レックハルドはいい、少し浮かれた様子でマリスを先に部屋の外に出した。理由はどうあれ、マリスと街を歩けるのだ。デートというにはちょっと色気はないし、ファルケンという邪魔者もいるのだが。それを察知したのか、黙っているファルケンに、レックハルドは視線を上げる。

「お前も来いよ」

 いいのかな、という視線を向ける彼に、レックハルドは続ける。

「お前の服も買うんだから、来いってば」

「うん、わかった!」

 ファルケンは頷いた。それを確認し、レックハルドはどこかしら安堵しつつ、足取り軽く部屋から出て行く。

(よかった。レックも嬉しそうだし……)

 先にレックハルドが部屋から出て行くのを見て、ファルケンはそれを追いかけながら、ふと嬉しそうに目を細めた。

 

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