ラブコメ感でたろうか
妹が転校してきてから早五日。
僕の生活は一転....まではいかないけど、半転くらいしてしまった。
...半転してもとに戻された、ともいうけどさ...。
妹と朝ごはん。
妹によるファッションチェック。
妹と登校。
昼休みも妹がきて妹と昼ごはん。
そして....今日もまた、妹と帰宅するお時間である。
....正直、きつい。
もともと、僕は社交的ではない。
限られた数人の同志(オタク的な意味でも生き様的な意味でも)とのみ、深く親交を深めていく、そんな心安らかに生きたい人種だ。
まあ、でも、これは家族に、妹という学園のヒロイン(詐欺)がいる以上、こうなっても仕方ない、ともいえよう。
だがしかし。今日のこれは違う。
妹との朝ごはんと妹によるファッションチェック。ここまでは想定内。
問題はここからだ。
妹と、そしてなにかの間違いか、学園のメインヒロイン(こちらも詐欺)こと来栖愛梨との一緒に登校イベント。
ひとつ言わせてもらおう。
こんなことされてうらやましいのは画面をまたいでいるからであって、リアルな話、玄関先に突如学園のメインヒロインが現れて思うことはひとつだ。
怖い。まともに怖い。なんで家の場所知ってるの。
しかも、我らが学園のヒロイン様の中身は悪魔である。
無礼な真似でもしようものなら、即、この世とバイバイである。
悲劇はまだまだ続いた。
昼休みも妹だけではなく愛梨とまで食べることになったのだ。
ここでも様々な心労があったのだけれど、正直もう思い出したくないので割愛する。
機会があったら...この悲劇もどこかで語られるのやもしれない。
そして満を持して今だ。
夕日のオレンジ色が鮮やかに教室を照らす時間。
つまるところ下校時間。
僕の前には二人の少女がいた。
「さあ、帰りましょうか、お兄様」
当然のように現れた妹、美羽(中等部なのに高等部の教室とか来てても大丈夫なんだろうか)の言葉に慌ててうなづいて、もう一人のスルーを図る。
「あ、うん、帰ろっか」
そう言ってドアに背を向けた瞬間、慌てた愛梨の顔に同情が頸をもたげたけど、だまされてはいけない。顔は天使でも中身は悪魔だ。
こんなときにはさっさと立ち去るに....立ち去れない。
僕はこんな最悪なヒロインにいまだ未練たらたららしい。(いや、完全に振られたわけでもないけどさ...)
我ながら情けない。
「え...と?」
「あ、あの....一緒に帰ってもいい?」
....
演技だ...演技にっ決まっている...
「....え、...あ、と..うん、もちろん」
ふがいないと笑え。でも僕には無理だ。禍の種とはわかっていたところで想い人の(一見)かわいらしいお願いをむげにはできん!たとえどんなに中身が残念で恐ろしくても!
「あ、ありがと...翔真」
照れたように微笑む姿に内心どきっとする。
「...お兄様。帰りましょう?」
.....あ、悪魔だ...
振り返ればそこに近年まれに見るほどの機嫌の悪さがにじみでる妹がいた。
....帰ろ...
僕らは帰路へ向かう...。