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偽装ヒロインは一人ではありません!!

ヴーヴーヴー。


終礼の間に突然けたたましく僕の携帯がうなりだした。

しかも、着信らしく鳴り止まない。

いい加減周りの視線が痛くなってきたし、観念して電話に出る。


「もしもし」


「・・・お兄様?」


電話から、余所行き用の妹の声がする。

お兄ちゃんじゃなくて、お兄様呼びだし、どうやら外らしい。


「今、終礼中だか・・」

「今、校門前にいるのですが・・」


・・・どうやらこっちの話を聞く気はないらしい。


「早く迎えにきてくださいませんか?」


「えっと・・・いま海外のはずだよね?」


「いいえ?さっき戻ってきました」


・・・はい?

妹は一か月前からヴァイオリンのツアーでヨーロッパを巡っているはずだ。

今日までは。それで明日帰国。帰国と同時に僕らから二週間遅れてこの町に引っ越す。その予定のはず。

とりあえず日本にいるのは間違ってるはず。


「どうして日本に?」


「無駄な用事は省いて帰ってきましたの。お兄様にも早く会いたかったですし」


ちなみにこれは本心ではない。猫かぶりな妹の外面は、ちょっとブラコンな完璧淑女の設定なのだそうだ。本物は・・・もっと精神年齢が幼い。というか、ちょっと面倒くさい。


「それで、お兄様?早く迎えにきてくれますか?」


「・・・・どちらに?」


「校門前です」


「・・・どの?」


「お兄様の高校の」


・・・・それはまずい。実にまずい。

妹はいるだけで話題になる。

そして、ブラコン設定をフル活用して、僕を話題に引きずり出し・・・

兄弟というだけでまたも中学の頃みたいに僕も有名人扱いはされたくはない。

とりあえず、妹を放置しておくのは危険すぎる。


「・・・迎えにいきます」


「はい。お待ちしてますね」


終礼が終わった瞬間に僕は教室を駆け出して校門に向かう。

そこには、やっぱり人だかりができていた。


「お兄様っ」


人だかりが割れて妹が現れる。


「お久しぶりです。お会いしたかったです・・」


「・・・久しぶり、美羽」


ざわめく人だかりに向かって、いっそう華やかな笑顔をうかべて、美羽は口を開く。


「お兄様がいつもお世話になっております。妹の光森美羽と申します」


挨拶を終えるとくるりと僕の方に向き直り、家じゃ絶対に見せないような笑顔で言い放つ。


「さあ、帰りましょうか、お兄様」


後ろのざわめきのやまない集団を華麗にスルーして、僕の腕を取り家路に向かう。



そして、結構大きい僕らが新居(僕はもう一か月たってるけど)につき門をくぐり人目につかなくなった瞬間、ぱっと僕の腕を開放する。

仁王立ちになり、笑顔はどこへやらむくれ顔。


「お兄ちゃん?」


「・・・ん?な、なんだい美羽?」


「なあに、その恰好は!」


「え、ふつうじゃない?」


「あーーー!冴えない!冴えない!さ、え、な、いーー!」


なんかよくはわからないけど、昔から僕の恰好にはうるさいやつなのである。


「ねえ、この、来栖美羽の兄だよ?!もっとイケメンオーラだしてよ!」


「無理無理。諦めて」


「はい?!元々の顔は美羽と血がつながってるだけあって、なかなかじゃない!中身がヘタレでオタクで残念なのはもうどうしようもないけどさー、せめて、外見くらいはイケメンでいてよ」


なかなかシビアな言葉だけどさ・・・


「いや、美羽だって、中身は幼稚園児でオタクだろ?」


「ううううっ!でも美羽は外では学園のメインヒロインだもん!新しい学校でもメインヒロインになるんだもん!」


確かに今まではそうだった。けどな・・・


「残念。うちの高等部に、すでに揺るがぬメインヒロインがいるぞ。来栖愛梨、っていうな」


「なっ!!」


まあ、彼女も偽装ヒロインだけどさ・・・・


「ととととと、とにかく!!お兄ちゃんはイケメンじゃなきゃだめなの!いい?」


中学校の頃、毎日あった朝の服装チェックを思い出す。

戻ってこい、僕の静かな日常・・・・。


「うーーとりあえず、ネクタイゆるめて!襟はぴっとさせて!」


うん、まだまだ妹の猛攻は止まらなそうだ・・・。





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