アカイキク
……その感情は唯一、自分を酷く持て余し、責め苛むものだった。
ほとほと扱いと対応に困り果てるばかりだ。全く以って理知的、理論的でない、この感情は!
藤野篝火は曖昧なことは嫌いだ。
有りのままであって欲しいからと、見守っていたいと思う。そして掻き抱いて手元に置きたくもなる。優しく静かに触れたいと思う。そしてあらあらしく引き裂いてしまいたいと考えてしまう。
今は結局のところ、如何したいのか問われても、きっと答えられはしないだろう。 しかし、この先如何もしたくないわけでは、決して無い。
矛盾と不確定を多分に持つこれは、自分が非常に苦手とするものだ。
本能は言う。 ――それは恋に分類される想いだと。――答えなど出ている。ただただ、認めるだけ。諦める、とも。
……恋しい。その言葉を思い浮かべるだけで認められたなら、どれだけ楽なことだろう! 以前の自分は虫の息。此れは完全なる負け戦なのだ。今日とて、頑として白旗を振らぬ理性に、もはや苦笑いしか出ない。