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精霊使いのお願い  作者: まるあ
本編
6/34

静寂の思考

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今回はエル視点のお話です。

 ねっとりと纏わりつく闇の中に彼は居た。

 音も無く、光が一筋も入ってこれない程の闇。時が流れているのかもわからない空間。


 彼をここに飛ばしたのは、魔法が一切使えない筈の娘―――いや、彼が魔法を使えなくした筈の娘。



 娘が幼少の頃に彼を呼び出した時、彼は娘が言う『願い』の対価に娘の魔法を封印した。この自分を五つにもならない小娘が呼び出し、いとも簡単に名前を支配されたという屈辱から、何重にも頑丈な鍵をかけるように……。封印を施した彼にすら、解ける確率が半々といえる程頑丈で難しい封印だった。自分の事を思い出さないように記憶を消したのもこの時だ。

 

 解けるはずの無い封印である。しかし彼は時間のある限り娘を見に行った。―――娘に見つからないように。勝手に封印が解けてまた自分が支配されるという焦りがあったのかもしれない。

 陰で娘の成長を見ながら、娘が精霊に愛される体質であるのを知った。娘のもう居ない親がわりのように……娘の周りには精霊が居る。彼はよくわからない苛立ちを覚えた……。

 最初に見始めてから約十年の歳月が流れた。娘は『精霊使い』になるべく学校に入る。彼が絶対になって欲しくないと思っている職業である。彼はまた焦燥感に駆られた……。自分の事を思い出してしまったら?そんな思いが彼を捕える。

 機を見て娘に会いに行った。自分の姿を見て封印が解けたなら、再び封印し、解けなければ監視しようと思い……。娘が自分を見ても何の変化も無かった。―――だが、面白く成長していた。会って数分で自分を殴ったのだ。今まで自分に頭を垂れる人間は見てきたが、殴りかかってきた者はいなかった。―――気にいった。この娘を一生監視および観察してやろうと考えた。それと同時に、独占欲が湧き上がってきた。

 精霊使いは職業柄いろいろな精霊を使役する。彼はその中の一体では嫌だと思った。『この娘の精霊は自分だけでいい』そう思い唇にのせて呪い(まじない)を娘に施した。―――精霊が寄ってこないように。娘も周りの人間も施された呪いに気づいていないようだ。

 男はくっくっと喉を鳴らして笑いながら言った「鈍いにも程がある」と。

 

 再開から三年程になるが、時折見せる娘の面白い行動は増し、常に傍に居たいと思うようになった。

 娘の封印が解ける事は無かったが、封印が解けなくても魔法が発動した。魔法詠唱も陣も省略して。

娘は魔法を発動する前に自分を使役してみせると宣言した。普段は見る事の無い自分の瞳をまっすぐ見ながら……。今回は何故か歓喜の気持ちが湧きあがった。気付いたら口づけていた。いつもとは違う感じで……。

  


「さて、どうしようか? 」

 男は口に手を当て、フッと微笑んだようだ。

 昔の感情とは些か違う自分の気持ちが奇妙だ。昔は監視の為に見ていたが、今は何故か見ているのが普通になっているのだ。三年ほど前から娘に一生、監視ができるようにとの考えを隠し「妻に」と言ってきたが、今は少し違う気持ちで言っている自分が居る。

 男が考えていると、僅かに空間の空気が動いた。誰かが来たようだ。気配から相手が急いている様子がよくわかる。

「―――エル様っ!! なんで『時の牢』に居るんですか!! いきなり気配が消えてかーなーり焦りましたよ! 」

 男……エルはハァと小さいため息をつき、今ここに来た者を見やった。たぶん、側近のエンジュだろう。姿は暗くて判らないが、声と口調と気配がエンジュであると肯定している。

「メイにとばされた。油断したな、まさか牢屋に入れられるとは」

 エンジュはその言葉に目を見張った。

 メイとは我が主人を一度は支配した小娘の事だ。主人の怒りに触れ、一切の魔法を封印されたはずでは? 封印の確認の為に娘の傍に居るとは聞いているが……。この主人を牢屋に送る力があるなんて信じられない、といった瞳を主人の居る方へ向ける。エルもその気配が判ったのか、苦笑する声が聞こえる。

「まだ、封印は解けていない。少し考え事をしていただけだ、ここは静かだからな」


 さあ、帰るぞ。の声と共に二人の気配が消えた。

 

 

  

 

ご覧いただきありがとうございます。

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