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精霊使いのお願い  作者: まるあ
本編
22/34

更新が随分遅くなってしまい、申し訳ないです。そして、たくさんのお気に入り登録ありがとうございます!もの凄く嬉しいです!!

 

今回から、過去編が始まりました!

 鳴りやまない雷鳴と視界を遮るような豪雨の夜に、精霊界を騒がせた二つの魂が天へと飛んだ。翌朝には二つの魂が無事に天へと到着した事を知らせるかの様な大きな虹の橋が大地に掛かり、幻想的な風景を醸しだしていた。


 大きな虹が掛かり朝露に輝く大地に、重々しい空気を纏った集団が王都にある屋敷に向かっていた。

 黒塗りの二台の馬車にたくさんの司祭たち。そして、その馬車の周囲を守るように黒い甲冑を着こんだ騎士や黒のローブを頭から被り表情を見せる事のない魔道師達。


 集団は屋敷前に止まると二つの馬車から棺を運びだした。二つの棺を悲しみの中迎え入れた女性の傍らには、五つにも満たない少女が居た。少女は棺の中に横たわる男性と女性を見て困惑の表情をした。


「なんで、こんな狭い所に母様(かあさま)父様(とうさま)が寝てるの? 直ぐに起きる? 」

 その言葉を聞き、少女の隣に居た女性は目にたまった涙を流しながら、彼女の事をきつく抱きしめた。そして、その口からは少女に言うというよりも自分に言い聞かせるかのような言葉が紡がれた。


「もう……、起きないの。メイちゃんの母様と父様は、神様の所に行っちゃったの」

 その言葉を聞き、少女の両親譲りの榛色(はしばみいろ)の瞳から涙が流れ出た。一つ、また一つと少女の丸い頬を伝い涙がハラハラと床に落ち染みをいくつも作る。そして、口からは両親を呼ぶ悲痛な叫びが放たれた……。


 両親を泣きながら呼ぶ少女を抱きしめ、涙が止まった女性は二つの棺を見た。


 棺の中に眠るように横たわる少女の母親の指から指輪を抜き取り、隣り合う棺の中に眠る父親の服に縫いとめられていた黒い石を指輪を持った手と反対の手に持ち、精製魔法を使い一つの指輪を作った。 

 そして指輪を少女の小さな(てのひら)にのせ、女性は優しく抱きしめた。


「この指輪を持っていて。母様と父様がきっとメイちゃんを守ってくれるから……」


 少女は両親の魔力がこもった指輪を手にコクリと頷くと、泣き疲れたのか女性に抱きしめられたまま浅い眠りに意識を委ねた―――。







 *****




 

 大地が裂けるのではないかと思うほどの雷鳴の轟く夜、二つの稀有(けう)な魂が天へと流れるのを精霊界の王であるエアリエルは玉座から静かに見ていた。

 流れた二つの魂は、精霊界を束ねる四精霊王の内、三精霊王を交代させる原因を作りだした女召喚士アイリスと、彼女の傍にいつも居た元王族のグラティス。


 グラティスは昔、赤子だった時に自分が祝福を授けた者だったか……。ぼんやりと玉座に座りながら、無感動に外を眺めていたエアリエルに声が掛かった。


「今のは……。女召喚士と……、その金魚のフンじゃなかったですか? 」

「…………」

「わっ! 無視ですか……。少し反応してくれるかと思ってわざと『金魚の~』と言ってみたんですがね」

「…………」

「―――フンッ!! またシカトですかっ! 面白くないですね。自身の側近と会話すらしないなんて。……ああ、私って可哀そうな精霊ですよねぇ。こんな無口無感動の人形と一緒に居なきゃいけないだなんてっ! 」

 

 玉座につながる階段の下に居る、側近であるエンジュはブツブツと言いながらも腕を組みながら体を窓の方へ向け外を見た。斜め横に傾いたその横顔はよく見えないが、心なしかその顔からは天へと流れた魂を想う寂しさが(うかが)えた。


「……あの二人がこの精霊界を引っかき回したお陰で、とても忙しい毎日が続きましたがそれも終わりましたね。―――二人はいつか精霊界の重鎮方に殺されるものだとばかり思っていましたが、違いましたね。さすがの女召喚士も本物の魔王には勝てなかったか……」

 

 外を見たまま普段では見せる事の無い哀愁の気配を漂わせるエンジュにほんの僅かばかり驚く。

 

 玉座に座り、目を閉じながらエンジュの放つ言葉にしばし耳を傾けながらどこか胸に空いた穴がある事に気付く。

 この穴は数回しか会ったことのないアイリスを想っての事か、それとも我が力を祝福として送ったグラティスの事を想ってか―――。



 どの位目を閉じていたのだろうか。エンジュの「主、珍しく虹の橋が掛かってますよ」の呼びかけで瞳をゆっくりと開ける。

 

 外には精霊界では珍しい大きな虹の橋が掛かってる。一つだけではなく、いくつもの虹がそここに掛かっている。虹からは微かにアイリスとグラティスの魔力が感じられた……。



 ―――人間にしておくには惜しい二人だった……。



 エンジュにつられたのか自分も珍しく感傷に浸り、虹を見ていた時だった。


 それは突然起こった。

 力のある精霊であれば誰でも気付いただろう。エンジュも組んだ腕が下がり、(あるじ)であるエアリエルに動向を窺う視線を向けている。

 目の前に繰り広げられる幻想的な風景とは違うが、とても引きつけられる感情と虹に混じる魔力と似通った幼い魔力。


 ―――とても強い想いが呼んでいる。


 自分が呼ばれていないのは判っていた……。

 その想いが呼んでいるのは、先ほど天へと逝った二つの魂。



 エアリエルは引き寄せられるかのように、その想いの元へと自らの意思で移動魔法を使った―――。

 虹に含まれている魔力を従えて……。




 


 

お疲れさまでした!!


誤字脱字、感想等ありましたらお願いします!

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