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精霊使いのお願い  作者: まるあ
本編
19/34

解かれた一つの呪い・前

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

若干長くなってしまったので、今回は区切らせてもらいました。次話は出来るだけ早く投稿したいと思っております!(^^)!

 パチリと音が聞こえそうなほど、いきなり目が覚めた。私の瞳は見知った自分の部屋を映している。


 誰にも言えなかったけれど、ずっと卒業の事を考えて、逃げる精霊に話を聞いてもらう方法を探して寝不足気味だった。頭も寝不足だった所為かボゥとしていた。しかし、何という事だろう。目が覚めてみれば、気分爽快! 疲れて重かったはずの体も羽が生えたかのように軽い! 誰かが魔法でHPとMPを回復させてくれたの? と言いたい位気分がいい。

 気分爽快な私はベットから起き、顔を洗いに行こうと起きた―――はずだった。

 そう、自分の意識では起きたはずだったのに何故かベッドでまだ眠っている私が居る。


「……何で寝てる私が見えるの? 」

 何故かベッドに寝ている自分を見降ろしていた。不意に口から零れた呟きに答える者はなく、疑問だけが私の頭の中を巡る。


 体が軽いのは、浮いているからっ?!

 自分の寝顔を見れるのは、浮いているからっ?!


 ―――私、いつの間に死んだのっ?! もしかして、死んだのも判らない位の事が起こったとか?!



「待て待て、よく思い出してみよう。えーーと、さっきは気分爽快で目覚めたはず。そして、今の時刻は……」

 顔を窓の外へ向けると、少し白んだ夜空が見える。(もや)が掛かり、(かす)みかけた月が幻想的な雰囲気を(かも)しだしている。やや明るい夜空は、朝日が昇る前なのかもしれない。


 この夜空の色は、蒼い精霊の色を思い出させる。

 いきなりエルの雰囲気が変わって驚き川に落ちて、意識を失っていた私を助けてくれた蒼い精霊。彼と話をした。私は満足に答える事ができなかったが、彼は「ご褒美をあげよう」と言って私の胸を一突きし、突かれた所から痺れが広がり、意識が落ちた。 

「もしかして……、今のこの状況って蒼い精霊の所為!? 『ご褒美』って幽霊にしてくれる事っ?? うっそぉぉぉぉーーーー!! ご褒美じゃないしっ!! 」

 ふよふよ浮きながら、体勢の立て直し方が判らない為、うつ伏せの状態で両手を頭にあてながら自分の精霊との出会い運の無さにショックを受ける。


 今まで出会った精霊って、まともなのが居なかった気がする……。

 この学校に入るまでは意地悪ばかりする精霊達。そして、いつも何故だか好きでもないのに求婚してくる上級精霊エル。会ったばかりの私をこんな幽霊状態にしてくれた蒼い精霊。くそう、次に会ったらメイ必殺右ストレートをお見舞いしてくれる!!


「『ご褒美』はちゃんとあげたよ。―――必殺右ストレートかぁ、それは遠慮しておくよ。……痛そうだし? あ、でも今の君は俺に触れれないか」


 動き方が判らないから、未だうつ伏せの状態で顔だけ声のした方へ向ける。そこには、必殺技をお見舞いしようとした蒼い精霊がベッドに横たわる私の本体に寄り添うように座り、笑みを浮かべて立っていた。

 蒼い精霊はベッドのサイドテーブルに置いてあった水差しを手にとり「ここから来たんだよ」と私に見せた。

 

 はぁ……? 飲み水を入れておく水差しから来たんですか。そうですか。そんなでかい体が入る水差しでは無いですが…。え? 水があればどんな場所でも体を変化させれる? ―――って、どんな軟体動物?!

 起きたら幽霊になってました、な訳のわからない状況で少しやさぐれている私に優しい笑みを見せながら私に近づく。


「言っておくけど、まだ死んでないからね? 今の君は、俺があげたご褒美の副作用的な物で、ちょっと魂が体から離れただけだよ」


 幽体離脱みたいなもの? ちょっとって事は戻れるの??


「うん」

「うん? 」

 前者の「うん」は蒼い精霊の肯定の言葉。後者の「うん? 」は私の疑問の言葉である。私って今、口から喋ったっけ? の意味の「うん? 」である。―――その答えは否。私は喋って無い。

 

 …………。

 …………。

 優しく微笑む目の前まで来た精霊の笑みが、なんだか怪しい笑みに思えてきた。

 喋って無くて、答えが返ってくるなんて……。一つの嫌な仮定が成りたち、聞きたくは無いけれど心の中でそっと聞いてみた。

『あのぉ……。もしかして考えてる事が判っちゃてたり? 』

 うつ伏せ状態でフヨフヨしつつ背中に冷や汗をかき、何も答えないでと思いながら引きつった笑みを精霊に向けた。心のなかでの問いに答えないでとも思った。

 ニコニコしていた蒼い精霊は、若干困った表情をした後口を開いた。

「俺、どうしたらいいかな? 聞いてるのに、答えないでなんて。」

 

 ……いや、もう予想できたけどね。困った表情をした時に。

「……うん。もう、いいです……。それでどうして此処へ? 」


 もっと早く心が読めると言ってくれと、言葉の終わりにやや恨みがましい視線を送ってしまったのはいうまでもない。

 精霊はいろんな種類が居る。人間では考えれない事ができる精霊もたくさんいる。人間の感情を食べる精霊とか、人格を悪い方に変えてしまう精霊だっている。それに比べたら、私にとっては心を読まれる位許せる範囲だ。……ん? 心を読める蒼い精霊って昔どこかで聞いた気が……。

「へぇ? 心が広いね、君は。オルガ君だっけ? あの子は慌てふためいてたけどね。―――ああ、話が逸れたね。君が一週間経っても目が覚めないようだったから、さすがに心配して見に来たんだよ。でも、大丈夫そうだね。アイツがかけた、小さき精霊達を弾く(まじな)いも解けたし」

 

 一週間も寝ていたのか。……本体は今も現在進行形で寝てるけど。

 それにしても、『呪い』とはこの間総学院長が言っていた事だろうか。……あれ? アイツ?? 目の前に(たたず)む蒼い精霊がアイツ呼ばわりするのは私の知る限りでは一人しかいない。―――エル、アイツが自分より弱い精霊を弾く呪いを掛けていたのか。そういえば、精霊が逃げるようになったのはエルと知り合ってからだった気がする……。




 今までの苦労は何だったのか、と怒りが沸々と込み上げてきた。そして目を閉じ、若干恨みも込めて私に呪いを施した相手の名前を呼ぶ。


「……エル」


 次に会ったらメイ必殺右ストレートに蹴りもオマケでお見舞いしてやる。


 


 


 

 

 

 

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