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精霊使いのお願い  作者: まるあ
本編
16/34

蒼い精霊vsオルガ?!


 『人間と精霊は対等? 精霊は精霊使いの下僕? 』


 そんな質問をした蒼い精霊は、俯いた私から視線を外すことなくこちらを見続けているのが気配から伝わってくる。何かを試されているのだろうか……? オルガもそんな気配を感じたのか、息を殺してこちらの様子をうかがっている。


 

 人間と精霊が対等かだなんて考えた事が無い。―――『下僕』だなんて思った事すら無い。


 数年前まで、私の周りには当たり前のように精霊達が居てくれた。朝「おはよう」と言ってから夜「おやすみ」を言うまで、まるで家族の様に。

 でも、この学校に入ってしばらくしたら精霊達が私を避けられるようになって……。その時は悲しかったのを覚えている。前日まで仲良くしていたと思ってたのに、いきなり避けられるようになったのだ。それ以降も、学校の課題で精霊を一人でも使役しなければいけなくなり、呼べば来てくれるけれど私の顔を見てすぐに逃げてしまうの繰り返しだ。最初の内はすごく怒った。けれど次第に悲しくなり、精霊達(みんな)に嫌われたと思い、物陰に隠れて一人泣いていたものだ。




 蒼い精霊の質問の答えになっているかはわからない。でも、私に言えるのは一つだけ。私は心を決めて精霊を見た。そして、幼いころに母様に教えてもらった『精霊と仲良くなる魔法』を想い、口を開いた。


「精霊は、私の上でも下でも無い。下僕だなんてとんでもない!! 精霊達(みんな)は私の家族です。物心付く前から一緒に居て、朝から晩まで傍に居てくれて……。ここ数年は避けられて悲しいけれど、それでも家族です! どんなに避けられても、嫌われても私は精霊が大好きです! とっても!! 」


 最初の内は静かに話していたけれど、次第に力が入って、隣に居た精霊に詰め寄る勢いになってしまった。勢いに驚いたのか、精霊は家族だ発言に驚いたのか、蒼い精霊はその色の瞳を大きく見開いている。

(まばた)きする程の短い時間固まっていた精霊は、次第に目を柔らかく細めた。


「……さすがアイリスの娘だ。言葉に自分の想いをのせる方法を知ってるなんてね。それにしても『家族』か……。君はお母さんと似た事を言うね、彼女は精霊を『友達』と言っていた。―――メイ、君の事を気に入った。だからご褒美をあげよう」


 ―――アイリス……。母様と知り合いなの? と聞こうとするが、口を開く前に精霊の指がトンッと心臓のあたりを()く。すると、突かれた所からジワリと痺れだした。その痺れが早々(はやばや)と体中に周り、最後に頭に来たと同時に意識が途切れた……。








「―――ちょっ、何したんだよ! 」

 目の前に居る蒼い精霊が「ご褒美をあげよう」と言いメイに触れた途端、彼女が崩れ落ちた。オルガが駆け寄ろうと身を動かすと精霊に手で制され、心配するなと言われた。


「言っただろう? 『ご褒美』だよ。……ところで君は、アイツの事をどこまで知っているんだい? 」

 メイを見る柔らかな瞳とは対照的な視線でオルガを見る。虚言は許さないという雰囲気だ。オルガは視線を彷徨(さまよ)わせた挙句、溜息を一つつき覚悟を決めた。

 

「……たぶん、調べれる事の全部。三年位前からかな。メイから変な上級精霊の話を聞いて、こっそりと自分の精霊を使って調べてたんだ。精霊の話を聞いて、文献でも調べたけどその精霊がとんでもない精霊だったからイマイチしっくりこなくて、さっき(じい)ちゃんと話して、はまらないパズルのピースが埋まった感じがしたんだ。僕の予想が当たってればあの精霊の名はエア「死にたくなければ、その先は言わない方がいい」」

 名前を全部言う前に重ねられた言葉に「そうだった」と(うなず)く。此処に来る前に、爺ちゃんに、死にたくなければあの精霊の名前は絶対に言うなとしつこく言われていた。


「君は相当の食わせ者かもしれないね。アイツの事を見当ついてても、今まで彼女に何も言ってあげなかったんだ? 」

 今にも視線で射殺せそうな鋭い蒼の双眸(そうぼう)で オルガを見る。メイを見る柔らかい視線とは雲泥の差だ。オルガはその視線を苦い表情で受け止めた。



 たしかに、今までに何度も彼女にあの精霊(エル)の事を話そうと思えばできた。調べていく内になぜメイから精霊達が逃げて行くのかもだいたいわかってきていた。それを言えなかった―――いや、言わなかったのは自分のクソ精霊(エル)に対する嫉妬心からだった。少し前、メイがクソ精霊(エル)の事を話す時の表情が自分と話す時と違う少女の顔をしているのに気付き少しショックを受けた。


 メイを好きだとは思っていた。でもそれは、好意であり恋慕ではないと思っていた。


 この想いに気付いたのはつい最近の事だ。彼女がクソ精霊(エル)じゃなきゃダメとあの時に屋上で言わなければ、きっと気付かなかっただろう。……いや、予感は有った。僕の方がいつも彼女と一緒に居るのに三年程前に知り会った精霊の話をする時、楽しそうで嬉しそうなメイの表情を見ると胸がチクリと傷んでいた。


 恋敵となるクソ精霊(エル)そっくりな顔をもつ目の前に居る蒼い精霊は、正直見ていて気持ちのいい者ではない。だが、蒼い精霊を見やり重い口を開く。前半にオルガの想いと思惑を込めて。


「……言わない方がいい事もあるでしょ? メイがあなたの正体に気付いたらきっとアイツの事はすぐに気付くだろうし。彼女がこちらに聞いてこなければ、僕からは何も言わない」

  

 メイにアイツの正体を話したら、きっと彼女の悩んでいる精霊や魔法に関する問題は解決するだろう。でも、今言ってはいけない気がする。

 ちらりと意識が無く再び眠ってしまったメイを見て考える。

 クソ精霊(エル)が僕の前に現れた時、アイツはずぶ濡れだった。メイもきっとそうだったんだろう。じゃなきゃ、こんな格好はしていない筈だ。それなのに、ストーカー気味のアイツが傍にいないという事はアイツが原因だろう。

 それに、このメイを想う気持ちは彼女に言わない方がいい。きっと重荷になるだろう。彼女は僕の事を少し苦手に思っているようだし、男として意識していない。……何を考えているのか判らないクソ精霊(エル)に負けるつもりはないけれど。



 

 

 

 

 


 

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