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精霊使いのお願い  作者: まるあ
本編
10/34

『対!エル使役攻略作戦会議』2

 ―――どうして、こんな状態(コト)になってしまったんでしょう。



 今私の目の前には、顎から胸にかけて白く長ーい髭を生やし、穏やかながらも少し冷たさのある琥珀色の瞳を持つ老人が座っている。座っているからかとても小さく、可愛い小動物を思わせる。視線を隣にずらすと頭に角が生えた白い鬼のような巨漢が一人居た。こちらは眼力だけで人を殺せそうな、恐怖心を煽る生き物だ。―――はっきり言うと、この部屋に居たくない。


 どうしてこんな状態になってしまったんでしょう?

 ………先ほどから考えて居るけれどよくわからない。でも、思い出してみよう。




 今朝はオルガに寮の前で呼ばれ、転移魔法でこの部屋にいきなり連れ込まれたのだ。連れ込んだオルガは「授業があるから」と言って去って行った。


 私も授業あるんですけど……?

 それに、ここはどこ?


 オルガが出ていき部屋を見渡すと、この二人(?)一人は小さいおじいさん、もう一人(?)は白い巨漢が居た。巨漢からはとても重い空気が発せられていた


 そして、現在に至る……。


 ……。

 ……。

 ……。


 

 沈黙が重い。




「ふぉ、主がメイさんかね?オルガが世話になっとるね」


 いきなりこんな所に連れてこられてどうしよう、と考えていると沈黙を破ってくれたのはおじいさんの方だった。

 おじいさんは長ーい髭を触りながら、琥珀色の瞳を細める。


「あ、いえ。お世話になってるのは私です……。あの、ここ……」

 どこですか? そう聞こうと思って顔を上げると、白い巨漢と目があった。真っ赤な瞳がギロリとこっちを向いている。

 その瞬間……、石になりかけました……。とある神話の髪の毛が蛇の女神が頭をよぎる程固まってしまった。

「これ、威嚇するな。お嬢さんはお客じゃぞ。―――ああ、すまんの。こ奴は儂の神獣じゃ、お主の事をオルガから聞いて、用意しておいたんじゃ」


 ―――神獣!

 こんな恐ろしい巨漢が?!何だかイメージとずいぶん違う。神獣はもっと神々しいものだと思ってたけど、こんな―――


「ふぉふぉふぉ、この神獣は心の奥底まで読める。余計な事は考えん方がいいぞ」

「……スミマセン」

 なんだか、思ってはいけない事を考えておりました……。


「……おわりました」

 巨漢がおじいさんの頭に手をおき、おじいさんが目を瞑りながら神獣の方を見た。何やらヒソヒソと話している……。


「……そうか、そうだったのか。成程のう。ふむ……」

 ブツブツ独り言を言いながら私の方を見る。



 ズンッ!!



 ―――途端に空気が重くなった。



「すまんの。誰にも聞かれてはならん事ゆえ、多重結界をはらせてもらったわい。―――あの神獣にお嬢さんの事を探ってもらったんじゃが、お主はとある精霊から呪い(のろい)に近い封印を受けておるの。こう、鎖でがんじがらめのような。それにいくつかの呪い(まじない)もあるようじゃ」


「―――っはぁ? 」

 一体いつの間にそんな呪い(のろい)なんか……。というか、いつの間に私の事を探っていたんだろうか。横目で巨漢の神獣を見てみるが、もうこちらを向いていない。

「儂もまだ死にたくないゆえ、その精霊の事は言えんが……。そ奴の行った事が原因で魔法が消されてしまうようじゃ。……ううむ、その呪いを解くことは本人しかできんが、多少なら薄められるじゃろ」

  

 死ぬ?! その精霊の正体を話したらこのおじいさんが死ぬという事だろうか。そんなに凄い精霊に呪われてるだなんて。一体、自分は何をしたんだろう。

「私は何をしてその精霊に呪われているんでしょうか? まったく覚えていないんですが……。」

「……覚えておらんのも道理じゃ。記憶が操作されておるでの。じゃが、儂からはその精霊の事を一切話せん。呪いを薄めれば、その精霊も嫌でもお嬢さんの前に正体を現す事になるじゃろ」

 そう言うと、おじいさんは机の引き出しから地図を取り出した。その地図は、慣れ親しんだ学校の裏山の様だ。

 地図の上辺りにペンで印をつけ、それを私に手渡した。

「ここに行けばいいんですね。でも、ここには何があるんですか? 」

「そこは霊泉の滝じゃ。そこに行き、水を飲んだら多少は薄まるはずじゃ。じゃが、あくまで多少(・・)、何も変わらんかもしれん。着くまでに危険はあるが、行って損はないはずじゃ」

 

 おじいさんがニッと微笑むと部屋の空気が軽くなった。どうやら結界を解いたらしい。


 地図をたたみ、持っていた学校のかばんにしまうと、お礼の言葉と一礼し部屋を出た。

 出たところで、あの老人の正体が判った。扉に『総学院長室』と書いてあったのだ……。

「―――総学院長だったの!? 」


 あの小さいおじいさんが精霊学校、魔道学校の二人の学長をまとめる総学院長だったと驚いた瞬間、嗅ぎ慣れた匂いに包まれた。―――いや、抱き竦められたのだ。同時に、頬に柔らかい唇の感触が当たった。


「とぉーーっても会いたかったですよ、メイさん。」



 声を聞いて、エルだと確信した途端視界が手によって遮られた―――。

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

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