第7話 愛車をゲットだぜ
「ヒャッハー!」
おれがあやつるワイルドな自動車が、荒廃したビル群を疾走する。
「ちょっと危ないですよ! 安全運転! キャー!」
助手席の紫織はシートベルトにしがみついて悲鳴を上げていた。
ノリノリで楽しんではいるが、遊びではない。
戦闘中をイメージした自動車運転の練習である。
これから長い旅をするにあたって、こういう準備も必要なのだ。
「うりゃうりゃうりゃー! 紫織ちゃんその辺にゾンビがいないかチェックしてくれよ!」
「そんな余裕ないですよ、キャー!」
ドライブというには乱暴すぎる運転で基地周辺を一回りして、おれたちは帰還した。
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さて冒険の旅に出ると決定したものの、その日のうちにいきなり飛び出していくというわけにはいかなかった。
水、食料、武器弾薬なんかがが途中でなくなったらゲームオーバーだ。十分すぎるほど用意してから出発しなくてはいけない。
かったるいけど、身の安全を考えたら何度か行ったり来たりをくりかえす事になるかもな。
食料は長期保存がきく干し肉などを二人で手作りする。
これはノヴァが作り方をていねいに教えてくれた。
うすくスライスした牛肉をタレにつけ込んで一日。
次の日は余分な水分をふき取って、あとは冷蔵室で数日乾燥させる。
食べてみたら意外とまともに美味かった。
戦闘訓練も今まで以上に気合入れてやったぞ。
特に紫織ちゃんは頼れる兄貴まかせで誤魔化してきたから、これから大変だ。
で、二人旅になるということで今まで軽視してきた部分もスキルレベルを上げなくちゃいけなくなった。
『乗り物』レベルである。
これまでは一人ぼっちの基地住まいだったから小回りのきく一人用オフロードバイクが丁度よかった。
だが二人で長旅となるともっと大きな乗り物が必要だ。
と、いうわけでおれはトレーニングルームのドライブシミュレーターをつかってレベル上げにはげみ、厳つくて頑丈そうな4WDのクロスカントリー車をゲットした。
こいつなら多くの荷物を持ち運べるし、車中泊もできる。
良いことずくめだ。
しかし気になることもある。
武器レベルを上げ、乗り物レベルを上げ、今後は科学とかのレベルも上げていかなくてはいけないわけだ。
これ将来レベル上げがキツくなりそうだけど大丈夫だろうか?
「なあノヴァ、いまのキャラビルドで、将来治療薬を作れるようになるかなあ?
レベル上げが限界になってそこまで届きません、とか言われたらマジ困るんだけど」
『現段階でその心配は不必要だと思います。
それにゼロワン一人の力で達成しようと考える必要も無いのではないでしょうか。
今後あなたはさまざまな特性をもつ人物と出会うことでしょう。
それらの方々と協力して研究開発にはげむほうが、より早く、そしてより完成度の高い結果を得られることでしょう』
「フーン」
パーティを組んで助け合うのがノヴァのおススメか。
まあそりゃそうだろうな。
お勉強ばっかりしてる奴の戦闘力が高いとはちょっと考えにくいし、いまのおれはちょうど真逆の脳筋ファイターだ。
それぞれの特性をいかして努力したほうがお得だっていわれりゃ、そりゃそうだよねとしか答えようがない。
おれがそんな未来について想いを馳せている横で、紫織はインカムマイクをつかってノヴァと会話をしていた。
いつまでもおれだけがノヴァと会話できるってんじゃ不便だからな。
文明の利器をつかって紫織も交流できるようにした。
「へえー食べられる野草ってけっこうあるのねー」
『はい。大気汚染の心配がなくなった終末世界では、比較的安全に野草を食用にできることでしょう。
また放置され野生化した畑の野菜なども入手できる可能性があります』
「あっ、それいいかも」
『ゼロワンは偏食の傾向があります。健康維持のためにもあなたに協力をお願いいたします』
「ふふ、そうなんだー」
……なんかいらない事まで話しているな。
いやそりゃ野菜も食べないといけないよ?
わかってるけどさあ、野草とかって苦そうでイヤじゃん。
野イチゴなんかも酸っぱくって食えたもんじゃねーっていうよ?
やっぱり人間が作ったもんが人間にとって一番いいと思うんだよねー。
「んなもん無理して食わなくたってビタミン剤とか飲んでりゃ平気じゃね? ダメかな?」
『ダメです』
「ダメでーす」
「ゲッ」
二人しておれのことをイジメやがる。なんてこった。
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こんな日々もあっという間に過ぎ去り、いよいよ旅立ちの日。
おれたちはガッチガチに基地の戸締りを厳しくやってから、車の前で基地を見つめる。
もちろん鉄男さんの姿は見えない。
彼は地下でコールドスリープ中だ。
しかしそれでもおれたちは鉄男さんに祈らずにはいられない。
「……お兄ちゃん、行ってくるね。絶対戻ってくるから、それまで頑張ってね。ウイルスなんかに負けないでね」
もちろん返事なんてない。
だがそれでもこうして互いの無事を祈ることに意味はあると信じ、おれたちは心の中で真剣に祈る。
「行ってきます!」
決意を新たにしたおれたちは、いかつい4WD車に乗り込み基地をあとにした。
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