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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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第41話 完敗

 大きな地響じひびきのあとで、緊急事態を告げるサイレンが鳴り響いた。 

 確実になにかヤバいことがおこったのだ。

 周囲のマッチョたちが泣きながら逃げてきたり、逆に武装して向かっていく。

 そんな人々を見たり話を聞いたりしているうちに、研究所の本舎ほんしゃ前に侵入者があらわれたのだということを知る。

 

 両手に軽機関銃を装備して現場に到着するおれ。

 目の前に広がる光景はまるで『敵が無双シリーズを楽しんでいる』というようなものだった。

 紫黒しこくよろいをまとった不気味な男。

 そいつが武器も持たず、素手で味方集団を蹂躙じゅうりんしている。


毒の吐息(ギフティガーアーテム)


 男がつぶやくと左右の手に毒々しい紫色のオーラが宿る。

 手刀の形にして振ると紫色のオーラが飛び、プロテクターで全身を固めたマッチョマンたちがまとめて吹き飛ばされた。

 もっと悲惨だったのは、直接オーラで斬られた者たちだ。


偽聖剣ゲフェルシュトバルムンク


 男の手からあらわれた、紫色に輝くオーラの剣。

 その切れ味はすさまじく武装した人間をまるで豆腐のように軽々と両断した。

 首に当たれば首を。手足に当たれば手足を。

 防具もまるで意味をなさない。

 紫色の凶刃きょうじんが振り下ろされるとき、その場にある物はすべて切り裂かれた。


(なんだこの化け物は!?)


 おれは反射的に両手の軽機関銃をそいつに向けていた。

 闘志というより、恐怖が理由だったと思う。

 仲間たちが惨殺さんさつされていくシーンをこれ以上見ていられなかったんだ。


「みんなどけええええ!!」


 さけびながらありったけの銃弾をそいつにびせる。


 ズガガガガガガガ!!


 おれの銃弾は敵の側面から奇襲的に撃ち込まれた。

 敵は鎧に守られた胴体は無視し、顔面だけを両手で守る。


 ズガガガガガガガ!!


 弾倉が空になるまで撃ち切っても、敵はまだ立っていた。

 いくつかのかすりきずから青い血が流れている。

 おれたちの赤い血とは違う、青い血。

 

小僧こぞう、攻撃をつづけろ」

「なにい……?」


 男は不愛想ぶあいそうな無表情のままおれにそう言い、ゆっくりと近づいてきた。

 おれは弾倉だんそうの交換をいそぐ。


「俺の急所は頭と心臓。貴様らとおなじだ。よくねらえ」

「な、なめるなよ!!」


 頭にカッと血がのぼったおれは、リクエストどおり敵の上半身に弾丸を集中させた。

 左右の軽機関銃からはなたれる高密度の鉄の嵐が猛烈に叩きつけられる。

 しかし、当たらない。


 ギッ、チュイン、チッ、カツッ!


 小さな音が鳴るたびに弾丸ははじかれ、軌道きどうをそらされ、切り裂かれてしまう。

 人知じんちをこえた速度で敵の手刀が弾丸を処理しつづけていた。

 ほんのわずかに命中している弾もある。だがそれらは鎧でふせがれ、ダメージを与えられていない。


(き、効かねえ! なんだこいつは!)


 やがて弾がつきた。

 弾倉を交換している余裕よゆうなんてあるわけもない。


「それなりの鍛錬たんれんになった」


 もしかするとそのひと言はお礼だったのかもしれない。防御の訓練につき合ってくれてありがとう、みたいな。

 敵はおれにそんなことを言いながら右手の手刀を高々と天にかかげる。

 おれは反射的に後ろへ跳んだ。ムダな努力だと分かっていたけれど。

 跳んだのとほぼ同時に、聞きおぼえのあるさけび声がかかった。


「待ちたまえ!」


 多少、敵はその声を気にしてくれたのかもしれない。知らんけど。

 後ろへ跳ぶおれの頭上に手刀が振り下ろされる。

 おれは両手の軽機関銃で手刀を受け止めた。

 しかし手刀はあっさりおれの愛銃を両断してしまう。

 声に止められて、後ろへ跳んで、愛銃が犠牲ぎせいになって。

 全部まとめた結果おれはどうにか致命傷ちめいしょうをまぬがれた。


「ぐはっ……!」


 上半身をななめに斬られ、無様ぶざまに倒れるおれ。

 ギリギリのところで止めてくれたのは、先代所長の南鞠勝みなみまりまさるさんだ。

 手には錬金術をほどこした黄金の槍がにぎられている。

 助けに来てくれたのか……。


「まだ未熟みじゅくな若者だ、見逃みのがしてはくれんかね」

「……代わりがそんな老体ではどのみち不満だな」

「あいにくどこもかしこも人手不足でね。私の名は南鞠勝だ。お名前をうかがいたい」

「ジークだ」

 

 上のほうから小さな妖精少年が、パタパタと羽を動かしながら降りてきた。


「ジーク様、ちゃんと言ってあげなきゃそのジジイがかわいそうですよ! このおかたはなんと超上級天使『偽聖剣』のジーク様だ! メチャクチャ強くてカッコイイんだぞ、おそれいったか!」


 勝手に自己紹介された男は、さっきまで逃げていた妖精をみてため息をつく。


「あれ、なんでため息なんてつくんですジーク様」

「お前がさっきの弾丸をひとつでも落としていたら、俺はため息などつかずに済んだだろうよ」

「ほえ?」


 なんの役にも立たないお調子者の腰巾着こしぎんちゃくに皮肉を言ったのだが、当人には伝わらないらしい。

 いっぽう、敵対する南鞠勝のほうは何もかも諦めたような表情ではかなげに笑った。


「超上級ときたか。出会うのは人生で二度目・・・だよ。さすがにここまでかな」

読んでくださってありがとうございます。

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