第38話 謎のお知り合い
街からの援軍がどっと押し寄せてきたことで、戦況は一気に有利になった。
初日の戦いでジャミスの手下二人を撃破していたことが大きい。
ゾンビの軍団というのは思考力がゼロに近い集団なので、いちいち細かい指示を出してやらないとちゃんと動かないのだ。
いま、ゾンビに指示を出せるのはジャミス一人。
そのジャミスはおれたちが直接戦闘にまきこんだため、目の前の殺し合いに必死で全体の指揮なんてとてもできっこない状況。
おれたちの『花嫁強襲作戦』は大成功していた。
「おおお、おのれ野郎どもー!」
ジャミスはあからさまに動揺していた。
黄金の槍をかまえた男たちが一丸となって突撃してくる。
巨獣のゾンビを盾にして防御するも、ただの一撃で巨獣は宝石に変化してバリバリと砕け散っていった。
ジャミスは今、自分一人の身を守るだけで精一杯。
戦い全体の劣勢をひっくり返すのはもはや不可能と思われた。
「終わりだなウマ公」
「ちくしょー!」
勝利を確信して笑うおれ。
しかしそれがよほど気にいらなかったのかジャミスはおれに獣の群れを集中させた。
「うおっと!?」
ズガガガガガガガッ!!
左右の軽機関銃が同時に火を噴き敵の群れを次々と撃ち倒す。
筋トレの甲斐あってマシンガン二刀流なんてことが出来るようになったんだ。筋肉って素晴らしい。
ズガガガガガガガッ!!
ズガガガガガガガッ!!
ズガガガガガガガッ!!
……プスン。
あっ。
やべ、弾切れ。
弾幕が切れたところにキリンの顔面が突っ込んできた。
4,5メートルはある獣。しかも首が特別ながい獣。
その長い首をフル活用し、思い切り遠心力の乗った顔面が突っ込んでくる。
ゆっくり、ゆっくり、スローモーションで近づいてくるのが見えた。
あれ……? これひょっとして死ぬときのやつ……?
身体が動かない。おれもキリンと同じくスローでしか動けない。
やっべ、ミスっちまった……。
おれは目を閉じることもできずキリンの頭突きを見ているだけ。
死ぬ。―――と覚悟を決めた瞬間、キリンの全身は宝石となって砕け散った。
「なーにやってんのよ、あんたは今夜の主役なんだからちゃんと働きなさい」
「ジルヴァ!」
間一髪でおれを助けてくれたのはジルヴァの針だった。
彼女も本隊に参加していたらしい。
準備では黄金の槍を大量生産し、戦いではこうやって駆けつけてくれる。
大活躍だ。
「た、助かったよ」
愛想笑いを浮かべながらいそいでカートリッジを交換するおれ。
弾の管理は本当に命綱だ。危ないところだった。
大急ぎで交換を終え、ふたたび身構えるおれ。
ジャミスは驚きの表情でこっちを凝視していた。
「どうしたウマ公? なんだその面ぁ?」
ジャミスはおれではなく、おれを助けるために駆けつけてきたジルヴァの顔を見て驚いていた。
いや驚くというより、恐怖している。
「な、なんでアンタがこんな所にいるんだ」
「んー? さあねえ~?」
ジルヴァはいつものようにニヤニヤと軽薄そうな笑みを浮かべている。
「アタシがここにいる理由よりー、アンタがアタシに勝てるかどうかって方がよっぽど重要なんじゃなーい?」
ジャミスはサーっと顔色を青くする。
どういうことだ?
「どういう知り合いなんだ?」
「さあねえ~?」
とぼけるジルヴァ。
追求している時間はなく、ジャミスは背を見せて走り出した。
「おいテメエどこ行くんだ!?」
「逃げるんだよォ~!! 全軍退却! 走れー!!」
翼があるんだから飛んで逃げたら? という疑問はすぐに氷解した。
ジャミスの姿は走り去るアニマルゾンビの群れにまぎれてしまって、すぐに見えなくなってしまう。これじゃ狙撃もできない。
そのまま後ろへ去っていくのかと思いきや……、アニマルゾンビの群れはグルーっと大きく進路を曲げ、大きく迂回しながらおれたちの街へむかいだした。
群れの中からジャミスの叫び声が聞こえる。
「ただ逃げるのは癪だからよォ! 女だけはもらっていくぜ! 街の中にいっぱいいるんだろォ!?」
なに!? それはマズいぞ!
いまほとんどの戦力は街の外へ出てしまっている。
たとえば南鞠所長のそばにいる戦力なんて、拳銃を持つ紫織だけだ。
いま街の中へ侵入されるのはマズい!
おれたちは大急ぎで引き返し敵を追撃する。
命令にしたがって走っているだけのアニマルゾンビは楽勝の敵だったが、倒せるのは最後尾のやつばかり。
おれは翼をはやしたウマのシルエットが防壁を飛び越え、中に入っていく姿をハッキリこの目で見てしまった。
やべえぞ! どうしよう!
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