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ゾンビだらけの終末世界でおれたちわりと無双界隈  作者: 卯月


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36/41

第36話 途中まではまじめにやってたんですけど

 赤くただれた太陽が山の稜線りょうせんに消えゆく黄昏時たそがれどき

 花嫁衣装はなよめいしょうに身を包み、厚化粧あつげしょうをほどこされたおれは出発した。

 木製の輿こしに座らせられ、全身プロテクタ―でかためたマッチョマンたちに運ばれるおれ。

 周囲にも黄金にかがややりをにぎったマッチョマンたちが鎧武者よろいむしゃのように配置され、花嫁を厳重に守っているかのような(・・・・・)空気を演出していた。

 もうすでに暗くなった地面を照らすため、複数の松明たいまつかかげられている。


 周囲からはただ一人純白の衣装に身をかためた花嫁が、ゆらめく炎によってライトアップされて見えたことだろう。

 まさに日本伝統の美。

 あとは古風な楽器で雅楽ががくでもかなでれば完璧だったろう。さすがにそこまでは用意できなかった。

 しかしこんな壊れた時代にうわつらだけでもよくととのえたもんだと関心する。

 完璧かんぺきだ。花嫁がおれであること以外は。


 おれを乗せた輿こしはアニマルゾンビ軍団のどなかをズンズン進んでいく。

 右も左も大小さまざまなアニマルゾンビの群れ。

 しかもすべての個体がジッとおれたちの姿を見つめている。

 松明で照らし出されたそのさまはまるでお屋敷やしきみたいだった。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「やっと来やがったな待たせやがって!」


 背中から翼をはやした二足歩行の馬、中級天使ジャミスは花嫁おれの姿を見つけるなり大声でそう言った。

 距離は数十メートルはある。まだ遠い。

 実は白無垢しろむくのしたに愛用の軽機関銃を二丁、ひそませてある。

 大ダメージを与えるためにはもっと接近しないと。


「さあはやくこっち来て顔を見せろよ!」


 むこうから呼んでくれたのでおれたちは喜んで進む。

 残り40メートル。

 35メートル。

 30メートル。

 いいぞこの調子で至近距離まで……。


「待て」


 あと30メートルという所で止められた。


「男たちはそこで止まれ。おりて女だけ来い」


 じつに中途半端な距離で相手はこんなことを言い出しやがった。

 しかしだまって言うことを聞くわけにもいかない。

 突撃部隊のリーダーが話しかけた。


「我々は花嫁の身の回りの世話係兼ボディーガードとして来たのだ。彼女一人を残して帰るわけにはいかない」

「なにい~?」


 ジャミスは顔をしかめて立ち上がり、数歩近づいてきた。

 あと25メートルってとこか。


「そんなゴテゴテ武装しておいてお世話係だあ? 刺客しかくの間違いじゃねえのかあ?」

「敵中で生活しようというのだ、これくらいの用心ようじんは仕方ないだろう」

「だったら安心しろ、これからオレ様たちは仲間だ! お前たちのことはオレ様が守ってやる!」


 まあいわゆる政略せいりゃく結婚になるケースなので、ウマ男の言っていることはすじが通っている。


「よし、なら半分だ。半分の人数だけ許す!」


 ジャミスの指示をうけてリーダーはおれの顔を見る。おれはうなずくしかなかった。

 マッチョ軍団の半分をその場に残しおれたちは先へ進む。  

 もともと少数精鋭なのに、さらに分断される形になってしまった。

 ちなみに、ドサクサにまぎれて輿こしに乗ったまま進んだ。

 おれは武器を服で隠しているんだ。立ち上がるわけにいかないんだよな。


 さらに15メートルくらい進んだ。

 おれは顔を見られたくないという気持ちから頭を深々(ふかぶか)と下げたまま。

 大きな綿帽子わたぼうし都合つごうよくおれの頭をかくしてくれた。


「おいい、いつまで下むいてんだ、顔見せろよ!」


 れてイラついている声音のジャミス。

 もうちょい近づいてくれたら至近距離からの軽機関銃連射で楽にたおせるな。そう思っておれは裏声うらごえを使い話しかけてみた。


「ずっと気になっていたんですけど」

「あ?」

「どうして人間の女と結婚を? あなた様も元は人間だったのでしょうけれど、それにしても……?」

「カカッ!」


 ジャミスは政略結婚の場で下品に笑い、まさかのオタトークをはじめた。


「その昔、ドラクエⅤっていう神ゲーがあってよぉ」

「は?」


 おい、まさかこいつ。


「それに出てくるジャミっていう馬モンスターにNTR(ネトラレ)されるエロ同人誌が大好きだったんだよオレ! 世の中ブッ壊れて好き放題できる存在になれたからんだからよォ、実行するしかねえだろォ!? オレ様は世界中から女をうばってオレ様だけのNTRハーレムを作りたいんだあああああ!!」


 アホかー!!! 

 そんな下らねえことのために人様に迷惑かけんなこのボケナスがー!!!

 一緒にいるマッチョ軍団たちも思わぬ展開にあっけに取られていた。

 ここまで積み重ねられてきたシリアスな緊張感を台無だいなしにしながら、色ボケクソウマ公ジャミスはノシノシ歩いて近づいてくる。


「お前はめでたきハーレム第一号だ! いわばビアンカだ、光栄に思え!」

「は?」


 あり得ないひと言に、つい地声じごえがでた。


「一番はフローラだろ、なに言ってんだ」


 おれの態度が豹変ひょうへんしたのを見てリーダーが顔色を変える。

 小声でおれに説教をしてきた。


「おいなにを言っている、来るぞ! ちゃんとしろ!」


 ジャミスはプッと吹き出し、おれを嘲笑ちょうしょうした。


「はあ~? お前まさか『あの』青髪負け犬ヒロインの信者なのかぁ~? いるんだよなあ~グダグダ能書のうがきたれて圧倒的大差の負けを認められない可哀想カワイソウなヒトタチがさあ~?」


 その瞬間、おれはキレた。


「野郎ブッ殺してやぁぁる!!」


 ダンと音をたてて輿こしの上に立ちあがり、足元にずっと隠していた二丁の軽機関銃を両手にかまえる。


「うわあもうメチャクチャだー!!」


 リーダーの悲鳴はもう、おれの耳には届かなかった。

読んでくださってありがとうございます。

投稿のはげみになりますのでぜひ☆やブックマーク、いいねをよろしくお願いします!

ちなみに筆者はフローラ派です。フローラ派の方はどうか応援お願いします。

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