第33話 やられっぱなしでいられるか
なんだかよく分からない飲み薬と塗り薬をもらって一晩ぐっすり眠ったら、意外にも起きあがれるくらいまで回復した。
すげーな錬金術。このぶんならすぐ戦えるようになるだろう。
身体が元気になってくると今度は退屈になってくる。
他にやることもなくて、おれをこんな目にあわせたウマ天使ジャミスの婚活作戦にどう対抗したものかと考えた。
あいつがやってきた行動を考えると、人間を大切に愛する気持ちなんて無いと断言できる。
ならばあいつの願いをかなえてやったところで仲良しになんてなれない。
奴隷とか属国といった、支配される側として扱われる展開が予想された。
じゃあ結局のところあのウマ野郎を倒すことでしかこの街の平和は守れない、という話になってしまうな。
―――こんなことをゴロゴロ寝転がって考えていると、おれが監禁されている小部屋に複数の足音が近づいてくる。
紫織。真美。ジルヴァの女性三人組だった。
とりあえず三人とひと通りの挨拶をしたあと、ジルヴァに言われておれは上半身裸になり傷口をみせた。
「へええ、ちゃんと治りかけてるんですねー」
傷だらけのおれの背中をみて、南鞠所長が興味深そうな声をかける。
「ゾンビに襲われても平気な人って、話には聞いてましたけど実際見るのは初めてです」
「心配だったら血液検査とかしてもらってもいいですよ。みんな不安でしょうし」
「あーそれ本当にお願いしちゃってもいいですか? 今後の研究に役立てたいです」
「ええどうぞサンプルでも実験でも好きにしてくださいよ」
「フフ、ありがとうございます。あっでも……」
所長は明るい口調で話していたが、急に暗いトーンになった。
彼女は今、怪物の花嫁にされかかっているのだ。それを思いだしたのだろう。
暗い雰囲気を変えるために、ジルヴァが横から参加してくる。
「カズヤ、あんた頭痛、吐き気、めまいとかはある?」
「いや、無いよ」
「脳に大きなダメージをうけたりはしていないようね。ゾンビにならなくても死んだら同じことだからさ、もう無茶なことしちゃダメよ」
「ああ、気をつける」
「運がいいわよあんた、今度おなじことやったら地獄へ一直線だと思いなさい」
「わーってるって」
ジルヴァはおれと会話しながら南鞠所長の肩に手をおいて労わっていた。
所長も浮かない表情ながら置かれたその手に自分の手をかさね、ささやかに友情の温もりを確認しあっている。
二人がなにも言わないので、紫織がかわりにおれに伝えてきた。
「カズヤさん、いま大変なことになっちゃてるんです。カズヤさんをこんな目にあわせたやつがとんでもないことを言い出して……」
「ああ。勝さんから聞いてるよ」
ウマ天使ジャミスに女を差し出せと言われていること。
条件に該当する女性がここにいる南鞠真美所長だということ。
いうことを聞かなければ朝昼関係なく攻撃して街中をZ-ウィルスに感染させる、と脅されていること。
「……私が行けば、みんなが助かるのかな」
下を向いたままポツリとつぶやく所長。
おれはすぐ否定した。
「時間稼ぎにしかならんね。次は子分にも嫁をやりたいとかいうかもだし。金を寄こせとか錬金術を教えろとかいくらでも要求してきて、無限に搾り取られるだけだろ」
「なんでそんな言いかたするの!? じゃあどうしろって言うの!?」
顔を真っ赤にして怒る所長。
おれに怒ってもそりゃ八つ当たりってもんだ。
問題をおこした張本人をどうにかしないとはじまらない。
「あのウマを倒すしかねーよ。そうしないと半永久的に終わらない。この街がボロボロの搾りカスになったら終わるかもだけど、それじゃ話にならんしな」
「けどあいつは大きな動物たちをいっぱい連れていて、私たちじゃ……」
「どうするかっていう作戦はこれから考えるんだ、おれたちみんなで」
ウグッ! と痛みにうめきながらおれは立ち上がった。
痛い。だけど動けないほどじゃない。
「主だった人間を集めてくれよ。やられっぱなしじゃいられないだろ?」
いちおう作戦のイメージ的なものは出来あがっている。
上手くいくかはまだわかんないけど。
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