第31話 意外! 婚活が真の目的!?
頭上を覆うゾンビガラスの群れ。
身をかくす場もないビルの屋上でたった一人。
武器は狙撃銃がひとつ。
圧倒的大ピンチだ。
「んじゃあ出会って早々わりぃけどよぉ、死んでくれや!」
中級天使ジャミスと名乗ったウマ野郎がカラスの群れに号令をかけた。
「チイッ!」
おれも狙撃銃をかまえて反撃をこころみる。
しかし遠距離武器の悲しさ。
スコープをのぞいて狙いを定めるよりもはやく、カラスの嘴がおれに襲いかかった。
「カアーッ!」
「ぐわあっ!」
大きな嘴と鉤爪が嵐のようにおれの全身を切り裂く。
手に持っていた狙撃銃で防ごうとするが焼け石に水。
圧倒的な数の暴力には敵わない。
ここは逃げるしかない!
まだ体が動く今のうちに何とかせねばと、出入口にむかう。
だが鉄製のドアはジャミスと名乗るウマ男に塞がれた。
「ヒッヒッヒイーン、ここは通さねえぜ。逃げたいんなら空でも飛んでいけや」
くそっ! ヘラヘラ笑いやがって、遊んでんじゃねえぞ!
唯一の出入口を封鎖されては、もうお終いかもしれないと思った。
ゾンビガラスの群れは休むことなくおれの身体を攻撃しつづけている。
今は表面部分を傷つけているだけだが、おれの動きが鈍くなってきたらやがて肉を抉り、内臓を貪るだろう。
惨殺死体のいっちょうあがりだ。
そうなる前になにか、なにかできることを見つけなくては……!
おれは全身を切り刻まれながら周囲を見わたした。
屋上には助けになるものがなにも無い。
しかしその外に、ほんのかすかな希望が残されていた。
これしかない!
おれは全力でフェンスにむかって走り出した。
この本舎ビルの裏手には大きな木が何本も植えられている。
なかには窓から手をのばして掴めるほど枝が育っている物もあった。
屋上から思い切りジャンプして、そういう木や枝に飛びつくしかない!
「おお? 何する気だテメー?」
ウマ男がなにか言っているが相手をしている場合じゃない。
もう目の前にフェンスがせまっていた。
この建物、何階建てだっけ? たしか四階建てだったな。
ってことはこの屋上は五階相当だ。
一階3メートルと仮定して約12メートルの高さ。
ふざけんな~! 普通に死ぬ高さじゃねえかクソ~!
「うぎゃああああああっ!!」
雄叫び一割、悲鳴九割くらいの割合だったと思う。
おれは絶叫しながら空中に飛び出した。
急速に落下しながらとにかく手のとどく枝をつかむ。
バキッ、ベキベキベキ……!
二回だったか、三回だったか。
つかんでは折れ、つかんでは折れをくり返し、おれの身体は地面に激突した。
人影が大声を出しながら集まってくる。
だれかに助けられながら、おれは意識をうしなった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
意識を取り戻した時、おれは監獄のような場所で寝かされていた。
頑丈そうな鉄の扉で閉ざされた、小さな部屋。
「こ、ここは……」
身を起こそうとするが激痛が走り、とても動けそうにない。
それでもまだ生きているようだ。
「ノヴァ」
脳内AIに呼びかけると、まったくいつも通りの淡々とした反応が返ってきた。
『はい。何かお役に立てますか?』
「現在のおれの状況を知りたい。あと勝さんのAIを通じてメッセージを送ってくんない? 勝さんと会って話がしたい」
『はい二つの件を了承いたしました。
・プレイヤー・カズヤは中級天使ジャミスの奇襲を辛くも脱し、研究所のスタッフたちに救助されました。
錬金術によって適切と呼べるレベルの治療を受けており、負傷によるダメージは回復傾向にあります。
・プレイヤー・カズヤの身体はゾンビカラスの攻撃によってZ-ウィルスに感染しました。大原紫織の説明によりプレイヤー・カズヤの特異体質が錬金術研究所のスタッフたちに伝わりました。しかし研究所のスタッフたちは半信半疑の様子でプレイヤー・カズヤをこのような場所に監禁する処置をとりました。彼らはあなたがゾンビになってしまう可能性を恐れているのです。
・新たな戦闘経験によりプレイヤー・カズヤの《免疫レベル》が3にアップしました』
うん……身体が痛くて半分くらいしか聞いてられなかったけど、監禁されながら治療を受けてるって話だよな。
あとなんかレベルアップしたっぽい。まさに『ケガの功名』ってやつか。
『新しいメッセージが届きました。南鞠勝氏がすでにこの場にむかっているようです』
「ああ話が早くて助かる。グッジョブ」
『ありがとうございます。他にはなにかお手伝いできることはありますか?』
「今はいいや、ありがとう」
やっぱりメール機能って便利だなー。秒単位で結果が得られるってすげえや。
二十分ほどそのまま寝て待っていたら、先代所長の勝さんが来てくれた。
「いや意識が戻って良かったよ。そっちが先にゲームオーバーになるのかと思って肝が冷えた」
「いやちょっと油断しちゃいましたね。中ボスのあとに大ボスが来るとは思わなくて」
「うむ……実はその大ボスについてなんだ。ちょっと今こまったことになっていてね」
老人の表情が暗く、深刻なものになった。
「苦戦しているんですか」
「いやそうじゃない」
「?」
「あのウマ、戦争をしにきたのでは無いらしいんだ」
「ほう? 兵隊ゾロゾロ連れてきて、攻め込んどいて、戦争しに来たんじゃない、と?」
そんなわけ無いだろうと思うのだが、まあ最後まで話を聞いてみよう。
「一番高貴な女を差し出せ、と言い出してね」
「は?」
「婚活が目的で来たと、そう言うのだ、あのウマ野郎は」
「こ、婚活ゥ~?」
あまりにも予想外すぎて、おれはただ驚くことしかできなかった。
この街これからどうなっちゃうの?
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