第26話 ゴミ屋敷は思い出の宝庫
結局このゴミ部屋の主・ジルヴァはいっさい掃除をすることなく、着替えて仕事にいった。
しばらく外部へ出かけていたので、本来の居場所である研究棟での仕事が山積みになっているらしい。
仕事が忙しいから部屋の掃除ができない―――という言いかたをするともっともらしく聞こえるが、24時間365日忙しいわけでもないだろう。
ジルヴァのだらしなさを帳消しにできるほどの理由にはなっていなかった。
「えっほ、えっほ」
大きなガラクタを建物の外へ運び出す。
こわれた家具とか高そうな壺とかはまだしも、ケン〇ッキーおじさんの像とか薬局のケロ〇ンなんかが発掘されてきたのはホント謎だ。
こんなでけえのよく部屋の中におさまっていたな?
「こんなもんどっから集めてくるんだアイツ?」
室内洗濯物干しと成り下がっていた『ぶら下がり健康器』を肩にかつぎ、『ヌイグルミがぎっちり詰まったふとん圧縮袋』を小脇にかかえて外にほうり出す。
「自己管理できねえコレクターってのは厄介だなあ」
などとぶつくさ言いながらガラクタの山をとにかく一度外へ出しつづける。
ジルヴァの基準ではどうだか知らないが、おれ基準ではガラクタの山としか言いようがないのだ。
「やれやれ、まだ半分にもならねえなあ」
もうすぐ昼メシの時間だ。
一日では片づけきれない可能性を感じ、ウンザリした気持ちになりながらまた部屋に戻る。
……と、その時。
「ぎゃーっ!?」
部屋の中でゴミと格闘していた紫織が悲鳴をあげた。
「どうした!?」
まさかゴミの中にゾンビまで埋もれていたとか!?
全速力で急行するおれ。
部屋までたどり着くと、紫織は恐怖に顔を引きつらせながらベッドの上に。
指で何かをつまんでいた。
「こっ、これっ、これっ」
それはジルヴァが使う錬金術の針だった。
刺さった対象を一瞬で宝石に変えてしまう超危険物。
「わっ、わたし踏んだっ、とがってないほうっ! あぶっ、あぶっ!」
どうやら尖っていない方を踏んだので死なずにすんだらしい。
「あいつー!」
おれは外へ飛び出した。
ズボラにもほどがある。運が悪かったら紫織の足が宝石になるところだった。
ひと言説教してやらないと気がすまない。
これは命にかかわる事件なのだ。
しかし、ジルヴァがどこにいるのか分からなかった。
適当に敷地内をウロウロ歩いているうちに……。
迷 子 に な っ た 。
「どこだここー!?」
完全に知らない場所に来てしまった。
建物がほとんどない自然風景。広々とした草原だ。
すぐ近くに川が流れていて、川のそばに木造の山小屋が一軒。
ハ〇ス名作劇場に出てきそうな光景だ。
あの山小屋に誰かいたら道を聞こうか。
そう考えておれは草原を歩き近づいていく。
「あれー? どうしてこんな所にいるんです?」
途中、うしろから声をかけられた。女の声だ。
「あっ、南ママリ真美、さん」
そこにいたのは所長の南鞠真美だった。
「はい、み な み ま り ま み です」
所長は怖い笑顔をおれにむけた。
ごめんよー、マ行は苦手なんだよー。
「すいません道に迷っちゃって、あの家に誰かいたらなーって思いまして」
「あらそうでした? あそこは私の育ての親が住んでいるんですよ」
「育ての?」
南鞠所長はちょっと表情をくもらせた。
「ほらこんな時代でしょう。親は助からなくって私だけ……ね」
なるほど。
この筋肉村は他より圧倒的に安全な雰囲気だが、こうなる前には悲しい物語もあったようだ。
「せっかくだから紹介しますよ。この研究所を作ったすごい人なんですから」
つまり先代の所長か。
南鞠所長が二代目ということだったので、もう故人かと思っていたがまだ生きていたんだ。
断る理由もない。誘われるまま所長についていったが、突然脳内AI『ノヴァ』がおれにメッセージを寄こした。
『プレイヤー・カズヤ。新しいメッセージが届きました。通信可能範囲内に他のプレイヤーがいます』
「なにい!?」
思わぬ言葉につい大声を出してしまった。
「どうしました?」
「あ、いやその、さっき腹が立つことがありましてその時のことを」
「はあ……?」
不審そうな南鞠所長をどうにか誤魔化す。
通信可能範囲内って、周囲は誰もいない草原。
山小屋の中にいるとしか思えない。
つまり、これから紹介してもらう先代所長こそが―――。
キィ、と軽い音をたてて木戸が開かれる。
木製の粗末なイスに座る、総白髪の老人がいた。
「今さら何の用だ?」
開口一番。皮肉な笑みを浮かべた老人はおれにそう言った。
「見てのとおりの年寄りだ。いくらなんでも遅すぎやしないかね」
どうやらあちらさんは、長期のソロプレイで性格がひねくれてしまったご様子だった。
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