第19話 きみは天使だぜベイビー
芝浦軍治の日本刀を形見として街のやつらに渡すことにした。
連中がまた何か悪いことをしてくるかもしれないので中には入らず、門の外から声をかける。
「こいつは芝浦さんの形見だ! ここに置いていくぜ!」
白鞘におさまった日本刀を地面にそっと置く。
そしてそのまま愛車に乗り込もうとするおれを見て、住人たちはちょっと慌てはじめる。
「まっ、待てよ! 本当にネクロスは死んだのか!?」
「ああ、芝浦さんがキッチリ仕留めたよ」
おお! とかやった! とか歓喜のざわめきが住民たちからあふれだす。
もういいだろうと判断し乗車しようとするおれに、なおも住民たちは話しかけてきた。
なんだよしつこい奴らだな。
「おい、俺たちはこれからどうすれば良いんだ!」
「は? なに言ってんの?」
勝手にすればいいじゃねえか?
そう思うおれに向かって、甘ったれたクソどもはどうしようもねえワガママを言い出した。
「てめえらのせいで芝浦さんが死んじまったんだろ!? だったらてめえらが責任取れよ!」
「そうだ! お前らが責任取ってこの街を守れ!」
「そうだそうだ!」
「責任取れ!」
「無責任なマネすんな!」
……つくづくゴミクズだなこいつら。
おれは心の底から軽蔑した。
ピヨピヨピヨピヨうるせえんだよ雛鳥ですかコノヤロー。
自分たちの街だろ。自分たちで守れよ。
それがあれだ、「主権」ってやつだろ確か。
他人に丸投げするってことは、その他人に支配されるってことだ。
管理もしないし責任も取らない、しかし誰からも支配されたくないなんて。そんな調子のいい考え方は通用しないんだよアホども。
おれは返事もせずに愛車に乗り込んだ。
「行こう、紫織ちゃん」
「ええ、ゼロさ……カズヤさん」
新しい名前で呼んでもらいながら、おれは車のアクセルを踏み込む。
ギャーギャーギャーギャー後ろから罵声が飛んできていたが、もうどうでも良かった。
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おれたちは北へ北へと来た道をひき返していた。
一度基地へ戻るためだ。
ネクロスとの戦いで手持ちの弾丸をかなり消費してしまった。
またおなじ規模の戦闘がないとも限らないので、念のために引き返すことにしたんだ。
それともう一つ。
脳内AIノヴァから報告&提案されたからだ。
『おめでとうございます。プレイヤーカズヤの『免疫機能』がレベルアップいたしました。
条件クリアによって地下三階の封印が解除されました』
と、ネクロスの野郎が死んだときにメッセージを伝えられていたのだ。
どうも戦いながらゾンビの体液とか被っていたせいで、固有スキルがレベルアップしたらしい。
『地下三階は科学的な研究施設です。プレイヤーのレベルが上がると採取したアイテムの合成や新たなアイテムの開発などができます』
おお、特効薬開発にむけて一歩前進したな! ……と喜んでいたのもつかの間。
ノヴァのやつ、グロいことを言い出しやがった。
『ネクロスの遺体の一部を回収し、解放された施設で分析してみましょう。
世界の謎をとくヒントが得られるかもしれません』
……『採取したアイテム』って、死体ってコト!?
そういやこいつ頭蓋骨の中身を見ろ的な発言もしてたな。
そっち方面のRー18は勘弁してくれよ!
幸いといっては何だが、イヤイヤ現場を調べてみるとネクロスは芝浦のおっさんとの死闘で指を一本切り落とされていた。最初の斬撃の時かな。
それを回収して、おれたちは帰路についている。
さいわいトラブルは何もなく、おれたち二人は基地へ帰還した。
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「ただいま、お兄ちゃん」
基地へ帰還したおれたちは、すぐコールドスリープ中の鉄男さんを見舞った。
問題はなし。まさに凍れるかのように眠りつづけている。
ノヴァによるとコールドスリープしていられる時間は40年。
時間切れの心配はまあ無いだろう。
「しかし……あと40年かあ……」
心の余裕があればこそ、ふざけたことも言いたくなる。
おれはニヤニヤ笑いながら冗談を言った。
「40年後、妹は50代で兄はピチピチの20代のまま。なかなかにエグい光景になりそうだな」
「なんで40年フルに使い切る前提なんですか! もっとサッサと終わらせますからね!」
「ぷぷっ」
「もうー!」
紫織にポカポカ背中をたたかれながら、おれは地下三階にむかう。
核シェルターをおもわせる隔壁のむこうは、なんだか分からない精密機械が立ちならぶ別世界だった。
えっこれ、おれが全部使いこなさなきゃいけないの? 見るからに無理そうなんだけど?
『カズヤ、まずは分析器を使ってみましょう』
「お、おう? ブ、ブンセッキね、いいんじゃない? うん」
わけもわからずノヴァの言いなりになって、おれはネクロスの指を大きな機械に入れる。
これがどういう機械なのかサッパリ分からないままで。
そして、機械を使った結果はもっとわけの分からないものだった。
ブンセッキとやらの画面に、まっっったく想像していなかった文字が表示される。
『イベントアイテム:最下級天使の指』
「……天使ぃ?」「えっウソ?」
おれと紫織は同時に声をあげ、顔を見あわせる。
天使???? あのクソ野郎が???
おれたちの疑問に答えるように、ノヴァが脳内で語りかけてくる。
『条件クリアによって世界の謎の一部が解放されました。ムービーを視聴しますか?』
ブンセッキの画面に再生の選択肢が表示される。
そりゃこんなもの見るしかないわけで。
おれはタッチパネルの再生ボタンを押した。
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