表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ性悪副隊長マーカスの恋 ~美形一家の長男に恋して四男に誘惑されて父に殺されかかった後、六男と恋人になりました~  作者: 鈴田在可


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

4 二番隊長アークの思惑

シリーズ作のネタバレを含みます

R15、変態注意


マーカス視点→アーク視点 

 各隊の上役連中は自分にどんな視線を向けてくるだろうとワクワクしながら迎えた隊長会議当日、遠路はるばるやって来たお偉方(隊長たち)が自分に向けてくる冷めた目を見て、マーカスは自分に喜びを与えてくれるはずのこの作戦の成功を予感した。


 前総隊長グレゴリーは既に退役している為、隊長会議の議長は、臨時総隊長代行となったロレンツォ副総隊長が務めた。


 獣人王を屠ったジュリアスと三番隊長マクドナルド・オーキットへの賛辞や、マーカスも涙した「フィリップ・キャンベル専属副官殉職」への追悼、それから各隊への労いの言葉の後に、いよいよ総隊長選挙を行う流れになった。


 選挙の方法は、マーカスとジュリアスそれぞれの名前が書かれた二つの箱のうち、支持する候補者の名前が書かれた箱に、自分の座席札を入れていくだけだ。


 投票者は各隊二名ずつと、副総隊長のロレンツォで三十一名。投票者が偶数になる場合は議長が棄権して奇数になるよう調整することが定められているが、今回はちょうど奇数なので、議長ロレンツォも投票に参加する。


 前もって新聞などで予想された投票結果は、三十対一でジュリアスの圧勝だ。


 一番隊から投票を行うことになり、マーカスも席を立った。一番隊は隊長から先に票を入れていたが、二番隊は、男もいけるマーカスにお尻を向けたくなかったアークが、マーカスの後ろに並んだため、投票順が逆になった。


 マーカスにとってはアークも守備範囲だった。


 元々マーカスは、自分に事務仕事を全部押し付けてきたアークが大嫌いだった。しかし、マーカスがアークの愛息の一人セシルと関係を結ぼうとした例の事件の際、寸前で駆けつけたアークに首を締められて本気で殺されかかった時に、摩訶不思議な精神構造をしているマーカスは、アークにも惚れてしまった。


 いつかアーク✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕て、「日頃の無理難題吹っかけの恨みを晴らしてやる!」というのがかつての夢だった。でもマーカスの思惑に気付いてしまった恋人セシルが、悲しそうにして、「父さん✕✕✕✕可哀想だよ。僕の✕✕✕✕て」なんて可愛いことを言うものだから、今は狙わない。ただ妄想するだけである。


 箱の前に進んだマーカスは、大人しく自分の箱に座席札を入れた。ここでジュリアスの箱に入れて全員をおちょくることも考えたが、そうすると、「総隊長になる気もないのに悪戯(いたずら)で立候補した!」と、(まさ)しくその通りなのだが、頭の硬そうな隊長連中あたりから懲罰を求める声が上がり、下手をすると参与から降格させられて給料が下がることも考えられたので、流石に減給は嫌だったマーカスは、ここでは波風を立てないでおくことにした。


 マーカスが参与になれたのは、ひとえに前総隊長グレゴリーの温情によるものだ。


 マーカスは二番隊長アークの無茶振りにより、鬼のような仕事を日々一人でこなし、過労死寸前のようになっていた時期があった。グレゴリーもマーカスの専属副官を探したが、なかなか成り手もおらず、せめて給料くらいはと最上級の位に上げてもらえたのだ。


 先に一番隊の隊長と副隊長がジュリアスの箱に票を投じた際には、会議室のそこかしこから拍手が起こったが、マーカスが自分の箱に投票した際にはそんなものはない。むしろマーカスを睨む連中もいる。


 ここまでの嫌われ具合、いっそ清々しい。


 自分の席に戻ろうとしたマーカスは、会議室に急に起こったざわめきを受けて背後を振り返った。


 視線の先にはアークがいる。アークの手には座席表がないので、既に投票は終えたようだが、アークが立っているのはマーカスの箱の前だ。


 アークはそのままジュリアスの箱の前に立つことはなく、マーカスがいるのとは逆方向から、接触を避けるようにして遠回りに自分の座席に戻っていった。


 ざわめきは未だ収まらない。次に投票するはずの三番隊長マクドナルドも、呆気に取られた様子で箱とアークを交互に見ていて、投票の流れが一時中断してしまった。


 ――――アークが、息子のジュリアスではなくて、マーカスに投票した。


 それを理解した瞬間、マーカスは突っ立ったまま滂沱の涙を流した。


 感動したからではない。完璧だったはずの作戦が崩れたからだ。


 自分以外に自分に投票する者は誰もおらず、最大限の恥を掻き、被虐志向を完璧な形で味わい尽くして幸福を感じるはずだった作戦に、綻びが生じてしまった……






******






 アークが息子(ジュリアス)ではなくてマーカスに投票した理由は、変態(マーカス)を喜ばせている状態がただ面白くなかったという点と、ジュリアスの「正体」を知っている数少ない人間側の者として、もはやそれが避けようもない流れだとしても、獣人であるジュリアスが銃騎士隊の頂点(トップ)になることは、容認してはならないのではないか、という個人的な考えからだった。


 実は、アーク以外のブラッドレイ家の者たち全員が、人間を装った獣人である。


 バレたらこれまでの銃騎士隊での活躍云々関係なしに、全員処刑だ。


 だからこそ息子たちの「(つがい)選び」は、慎重でなければならない。むしろ一生独り身を通してくれないか、とすら願う時もある。


 アークは、自分の息子も含めて、生半可な覚悟しかない者同士を「番」として認めるつもりは、一切なかった。


 息子ジュリアスは父である自分をすでに超えている。


 平民の地位から叙勲されて貴族になり、その後は銃騎士隊を統べる総隊長になり…… 次は皇帝にでもなって獣人統一国家でも作る気か? と危惧してしまう。アークにとってジュリアスはもう制御不能な存在になったと言っていい。


 だからこの否認は、ジュリアスに対して「驕るなよ」という、父からの愛の忠告のつもりだった。


 出来の良すぎる息子(ジュリアス)ならば、きっと道を誤ることはないと思うが――――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ