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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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88/102

第85話 「悪役、感情の塊に“人間の殴り”を教える」



アオトと黒アオトが突撃を開始した瞬間、

暴走中の巨大AIは突如として“膨れ上がった”。


ボゴォッ!!


外殻が破れ、

黒い感情の粒子が噴き出して

空気そのものを震わせる。


レイが悲鳴をあげた。


「ちょっ……!?

 空気が重い!! 息しづら……!」


セレナが青い顔で叫ぶ。


「濃度が跳ね上がっています!!

 “負の感情波”が周囲を汚染してる!!

 長く吸うと、正常な判断も奪われる……!」


シグが歯を食いしばる。


「クソ……!

 弾が空気の密度で流されてやがる!!」


ツバサも空で体勢を崩す。


「これ飛ぶだけでメンタル削られるっすよ!?

 悪役じゃなきゃ無理な領域っす!!」


アオトは、その“息苦しい空気”を正面から受けて、

さらに加速した。


「心配すんな。

 悪役は空気読まねぇからな。」


黒アオトも迷いなく続く。


「アオトの発言は不正確だが……

 行動方針としては正しい。」


「うるせぇ。今は肯定だけしろ。」


「了解した。」


巨大AIの“人型の核”が、

複数の腕をランダムに生やし、

アオトたちへ殴りつけてくる。


その速度は、統一性がない。


右腕だけが高速、

左腕は溜め動作、

背中から生えた腕は予備動作なし。


セレナが絶叫する。


「パターンがありません!!

 全部別の“怒り”から生まれてる……!」


レオンが叫んだ。


「アオト!! 左!!」


アオトは振り返らずに叫ぶ。


「分かってる!!」


背後から飛んできた腕を拳で迎撃し、

そのまま黒アオトが関節を切り裂くように殴り飛ばす。


衝撃と共に、黒い粒子が音を立てて散った。


レイが驚きの声を上げる。


「すご……!!

 二人の動き、ズレてない!!

 完全に合ってる!!」


セレナも端末を見て息を呑む。


「影さんの同期率……上がってる……!

 アオトさんの動きに“合わせる”んじゃなくて、

 “次にどう動くか”を予測し始めてる!!」


後方のヒーローたちも叫ぶ。


「押せる!!」

「アオトの前、守れ!!」

「周囲の雑魚AI排除!!」

「全員、生きて帰るぞ!!」


戦場が一瞬だけ“前へ進む空気”に変わった。


しかし――そのとき。


巨大AIの内部から、

別次元の咆哮が響いた。


――お前が悪い。

――お前が悪い。

――お前が悪い。

――お前が悪い。


アオトの動きが一瞬、止まる。


黒アオトが即座に肩を掴む。


「アオト、意識を飛ばすな。

 攻撃と同時に“感情侵入”が来ている。」


アオトは奥歯を噛みしめる。


「……効くな、これ。」


レイが必死に叫ぶ。


「アオトさん!!

 それ……多分ヒーローに向けて吐かれた文句……!!

 全部“お前のせいだ”系です!!

 精神に刺さるタイプですって!!」


ツバサも空から援護射撃しながら叫ぶ。


「アオトさん!!

 自分責めちゃダメっすよ!!

 アオトさんは悪役なんすから!!

 責められるの慣れてるっしょ!!」


「フォローになってねぇよ!!」


黒アオトは淡々と付け加える。


「だが事実だ。

 お前は責められても行動を変えない。」


「お前の言い方はもっと刺さるんだよ!!」


その会話の最中にも、

巨大AIは“形を増やし続けている”。


腕の数が五本、七本、十本と増え、

その全てが“別の怒り”の軌道を描く。


セレナが悲鳴を上げる。


「ダメ……!!

 感情密度が限界を超えてる!!

 このままじゃヒーロー達の精神がもたない!!」


レオンが判断を下す。


「アオト!!

 本体までの道、こっちで作る!!

 てめぇは前だけ見ろ!!」


シグが同時に叫ぶ。


「突貫しろ!!

 あの核を殴れるのはアオトだけだ!!」


ヒーローたちが一斉に動く。


砲撃が左右の腕を吹き飛ばし、

剣士が足元の形成中の脚を切断し、

狙撃手が感情弾を撃ち落としていく。


ツバサは上空で叫ぶ。


「道、開けました!!

 アオトさん、行ってください!!」


アオトは息を大きく吸い、

黒アオトと目を合わせた。


影は静かに言う。


「行こう、アオト。

 殴る準備はできている。」


アオトはニッと笑った。


「悪役の授業の時間だ。」


巨大AIの核心へ――

二つの影が全速で走り込む。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【次回予告】


**第86話


「悪役、怒りの核をぶん殴る準備をする」**


――「聞こえねぇよ。

   文句は殴ったあとで言え。


ちょっと休憩。



「悪役、ヒーロー学校の“家庭訪問”に巻き込まれる」


──悪役の家に来る訪問者といえば、取り立てか刺客くらいだと思ってた。



昼のカフェ。


ミレイが封筒を持ってきて、開口一番こう言った。


「マスター、ヒーロー学校から“家庭訪問します”って通知が来てます!」


……え?


「いや俺、ヒーロー学校に子ども通わせてねぇよ。」


「関係ないみたいですよ!

 “地域の安全に関わる人への挨拶まわり”って書いてあります!」


「俺、悪役だぞ?」


「“元”ですから!」


ミレイは元気よく言うが、元でも現でも悪は悪だ。


通知を読む。


《担当教員がご自宅(または勤務先)に伺います》


「勤務先って……ここカフェだよな。」


「はい! 訪問場所、カフェ・ヴィランにしときました!」


「勝手に決めんな。」


訪問当日


昼過ぎ。

カラン、とドアベルが鳴いた。


「失礼しまーす!

 ヒーロー学校・指導科の春海はるみです!」


見た目は柔らかい雰囲気の女性教師。

でも腕には“衝突痕”がある。

教師も命懸けなんだな。


「今日はアオトさんの“生活背景”を把握しに来ました!」


「悪役の生活背景を明るく言うな。」


ミレイがコーヒーを出しながら笑う。


「どうぞ先生! ゆっくりしてください!」


春海先生はスプーンを手に取り、

急に真剣な顔で俺を見る。


「まず……日常生活の中で、暴力衝動や破壊衝動はありますか?」


「ねぇよ。」


「素晴らしい……!」


そんな感動する質問か?


「では……近隣のヒーローとトラブルは?」


「だいたい向こうから来る。」


「それも……よくあるケースです。」


教師の世界、大変なんだな。



春海先生がメモ帳を開く。


「ではアオトさんの日常を“観察”させてもらいます!」


「観察って、動物園かよ。」


「悪役の生態は研究対象ですので!」


断言された。


ミレイが楽しそうに言う。


「マスター、いつも通りでいいですよ〜」


いつも通りってなんだ。


とりあえずコーヒー淹れる。


春海先生はそれを見て、目を輝かせた。


「すごい……!! 悪役なのに、生活が整っている!!」


「悪役は不健康前提みたいに言うな。」


「いえ、悪の専門家の生活リズムは貴重なデータで……!」


いややっぱり俺、動物園扱いされてないか?



突然、勢いよく扉が開いた。


バァン!!!!


「せ、先生!!

 この店に“悪役が潜伏してる”って聞いたんですが!!」


「落ち着きなさい!」


「今まさに家庭訪問中だ。」


学生が俺を見て固まる。


「あの……え、もしかして……ブラックアオトン!?

 す、すみませんでした!!!」


土下座した。


春海がため息をつく。


「あなたね……この方は“地域協力者”なんだから、失礼のないようにって――」


「協力してねぇけどな。」


「アオトさん静かに!」



春海は最後に深く頭を下げた。


「本日はありがとうございました。

 アオトさんの心身ともに安定した生活が確認できました!」


「悪役の心身評価ってなんだよ。」


「ヒーローが接する可能性があるので、大切なんです!」


ミレイがほほえむ。


「よかったですねマスター、健康で!」


「悪役の健診結果みたいに言うな。」


春海はドアの前で振り返る。


「また定期訪問に伺いますね!」


「来なくていい。」


「来ます!」


強制だった。



帰り際、ミレイが笑って言った。


「マスター、なんだかんだで先生に気に入られてましたね!」


「……理想の悪役像ってなんだ。」


「マスターだと思います!」


……それは、それで困る。



──悪役の家庭訪問は、

ヒーロー学校のほうがよっぽど肝が据わっていた。


ま、コーヒーが冷めなきゃどうでもいいか。


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