第5話 街角ヒーローグッズ店、バイトしてるの俺だけ悪役
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カランカラン♪
「いらっしゃいませー!」
……って、口では言ってるけど、心の中じゃ泣いてる。
なぜなら俺――ブラック・アオトン、
今日は“ヒーローグッズ専門店”の臨時バイト中である。
そう、よりによって、ヒーローグッズだ。
敵の顔がプリントされたマグカップやら、ぬいぐるみやら、山のように積まれている。
しかも、棚の端っこにある“悪役グッズコーナー”は……
ホコリをかぶっていた。
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「アオトさん、在庫表できましたー!」
店長のミレイ(※前回のバイト仲間)がタブレットを手に駆けてくる。
「うん、ありがとう……って、え、ヒーローフィギュア在庫数“1200体”って何?」
「いやぁ、ヒーローが多すぎて誰が人気かわかんないんですよねー。」
「いや、だからって仕入れすぎだろ。誰が買うんだこれ。」
「“正義の棚卸し”って言ってました。」
「ポエムかよ。」
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夕方、客がまばらになると、俺は店のPOPを見直した。
『新作ヒーローグッズ入荷! あなたの推しを見つけよう!』
……なんだかなぁ。
ふと、子どもが一人、悪役コーナーの前で立ち止まっていた。
小さな手で、俺のフィギュアを手に取る。
「この人、かっこいいね!」
母親らしき人が笑う。
「でも悪者でしょ? 怖くないの?」
「ううん! だって、ヒーローがいっぱい殴っても、毎回立ち上がるんだよ!」
……おい、やめろ、泣くぞ俺。
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閉店後。
売上表を見ると、ヒーローグッズは微妙に低下していた。
でも、悪役コーナーだけ――少しだけ売れていた。
「アオトさん! “悪役グッズ売上5倍”ってニュースになってます!」
ミレイがスマホを見せて叫ぶ。
「マジか。誰が買ってくれたんだ?」
「“正義より悪役のほうがリアル”ってタグでバズってるみたいですよ!」
……ほんと、世の中わかんねぇな。
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俺はレジを締めながら、ぼそっと呟いた。
「ヒーローが増えすぎた分、“悪役の存在”にも価値が出てきたってことか。」
ミレイが笑う。
「アオト先輩、悪役なのに経済回してますね!」
「ま、悪もたまには社会貢献するんだよ。」
缶コーヒーを開けて、外に出る。
街の看板は今日もヒーローでいっぱいだ。
でもその下に、小さく“ブラック・アオトンフィギュア完売御礼”の文字があった。
――悪役も、誰かのヒーローでいいじゃないか。
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次回:
第6話「ヒーロー養成学校で悪役講師をやることになった」
「生徒たち、正義のポーズは完璧。でも謝罪の仕方、誰も知らねぇ!」




