表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/98

第47話 悪役、誕生日を忘れられる



──悪役に誕生日なんて必要か?

 ……必要だったら今こんなに虚しくねぇ。



朝。

カフェ・ヴィラン、静かな営業開始。


ミレイが明るい声で「おはようございます!」

客もぼちぼち入ってきて、

豆を挽く音と笑い声が混ざり合う、いつもの朝。


ただ一つ。

“誰も気づかない”という問題を除いては。



俺の誕生日だ。


……そう、誰も知らない。

いや、知られたくない。けど、

知られないとそれはそれでムカつく。



昼過ぎ、元バイトのツバサが来店。

「マスター、今日なんかいつもより静かっすね!」

「年を取ると静電気みたいに静かになるんだよ。」

「何それ?」


ミレイは厨房で笑ってる。

「今日は落ち着いた雰囲気でいきましょうねー!」


……完全に忘れてやがる。



閉店間際。

いつも通り片付けて、

「じゃあ帰りますね!」と元気に手を振るミレイ。


「ああ……おつかれ。」

静かにドアが閉まる。


……誰も言わない。

「おめでとう」も「年いくつですか」も。


ま、悪役の誕生日なんてそんなもんだ。

俺はひとり、カウンターでコーヒーを淹れた。



その時、ドアのベルが鳴る。


「すみませーん、忘れ物です!」

戻ってきたミレイが、小さな箱を差し出した。


「開けてください。」

中には、カップサイズの小さなケーキ。

チョコレートで「悪役マスター殿」と書かれている。


「……これ、お前いつの間に。」

「今日の分の“演技指導”代です!」

「なんだその報酬体系。」


ミレイが微笑む。

「お誕生日、おめでとうございます。

 たぶん、マスターが生まれてなかったら、

 この店、退屈だったと思うので。」


「……お前、台詞のセンスだけはいいな。」

「褒めました?」

「減給は免除だ。」



ケーキを半分食べながら、

俺は静かに言った。


「悪役のくせに、祝われると……悪い気しねぇな。」


ミレイが笑う。

「じゃあ、また来年も忘れたふりしますね!」

「……それ、覚えてるって言うんだよ。」



☕️ 次回予告

第48話「悪役、子どもにヒーローと間違えられる」

――「……訂正したら泣かれたんだが、俺どうすりゃいい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ