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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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39/61

第38話 悪役、ヒーローからのオファーを断る

─────


──頼まれても、悪役は自由が一番だ。



朝。


カフェ・ヴィランの扉を開けた瞬間、俺の足は止まった。

郵便受けに封筒が二通。

一つは昨日の“名誉ヒーロー”とかいう黒歴史系案件。

そして、案の定もう一つは――ヒーロー協会。


「……またかよ。俺に何を期待してんだ、あいつら。」


ミレイが封筒をつまみ上げて眉を寄せる。


「開けます? また“友情出演:悪役”みたいな扱いですかね。」


「いや、どうせ“断りづらい雰囲気だけ出してくる手書きメモ”だ。」


開封すると、見事に予想的中。


『ブラック・アオトン殿

次期作戦にご協力願いたく存じます。

ご都合はいかがでしょうか?』


手書きのクセして、文章だけ妙に丁寧なのが腹立つ。


「……なぁミレイ。俺、いつから“都合を伺われる側の悪役”になった?」


「人気が出てきた証拠ですよ。悪にも人望が。」


「悪に人望はいらねぇんだよ。火薬と自由があれば充分。」



昼。


カフェにふらっと現れたのは、元ヒーローのカンザキ兄妹。

見た瞬間、俺は席を立とうか迷った。いや、立つ前に逃げたかった。


「アオト、聞いたぞ。名誉ヒーローになったんだってな?」


「誰が言いふらしたんだ。俺はただのコーヒー淹れる悪役だ。」


「まぁまぁ。お祝いでケーキ持ってきたんだ。ほら。」


渡されたのは、妙に可愛らしいミニケーキ。

悪役のイメージを台無しにする甘さだ。


「……悪役的には、許す。」


「いや、その基準何なんだよ。」


「生き残るには“敵に甘さを見せない”って大事だろ。

 お前らは甘すぎなんだよ。ケーキだけじゃなくて。」


ミレイがくすっと笑う。


「マスターの悪役理論、だいぶ偏ってますけどね。」



夕方。


外では静かに雨。

この街で一番の“悪役カフェ”には、今日も常連客の体温が漂っている。


俺はコーヒーを淹れながら、窓の外に視線を投げた。


「……さて。今日も自由に悪やるか。」


「はい、マスターの好きな時間ですね。」

ミレイが言う声は、雨より静かで、雷より信頼できる。


――命令されず、止められず、好き勝手に悪を名乗る。

これ以上の贅沢はない。


外の雨が止み、街灯に映る水滴がキラッと輝いた。


今日もまた、悪役の日常がひっそりと始まる。



☕️ 次回予告


第39話「悪役、カフェで“珍客”に振り回される」


――「常連? いや、“手に負えない”客って呼ぶんだよ。」


────────────────────────

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