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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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38/61

第37話 悪役、正義の表彰式で台無しにする



──


光の舞台、影の支配者。



朝。

会場は金色の照明で輝いていた。

ステージ上にはスーツ姿のヒーローたち。

観客席にはカメラと笑顔がびっしり。


「……ここ、俺が来る場所じゃないな。」

ミレイがそっと背中を押す。

「マスター、名誉ヒーローで呼ばれたんですから。」

「名誉ヒーローか……笑い話にしか見えねぇ。」



壇上。

司会者がマイクを握る。

「そして今年の名誉ヒーローは――アオト•クロノ氏、改め、ブラック•アオトン氏です!」


拍手が鳴る。

だが俺の顔には、皮肉しか浮かばない。


「……俺、悪役ですよ?」

「はい、名誉ですよ!」


ミレイが苦笑い。

「でも、顔がやたらカッコついてますね。」

「それ、正義の魔法だな。」



壇上に上がると、スポットライトが眩しい。

マイクを握る。

目線を観客に送る。

……やるか。


「皆さん、正義の皆さん。こんばんは。

 悪役だった俺が、名誉ヒーローになったそうです。」


会場、微妙な間。

「えーっと、賞状はどこですか?」

司会者、手を差し出す。

「はい、こちらです。」


俺、賞状を持ちながら笑う。

「なるほど、これをもらえば、僕も善人になった気分ですか?」

会場、微妙に笑いが漏れる。



さらに口を開く。

「でも正直言うと、悪役の方が気楽でした。

 命令されず、自由に暴れられる。

 名誉ヒーロー? それ、気を使いすぎて肩凝るんですよ。」


ざわり、と会場。

「……あの悪役、皮肉がキツいぞ。」

「でも、なんか面白い。」



壇上を降りると、ヒロシが近づいてきた。

「さすがアオト。

 名誉ヒーローの笑いを独り占めするとはな。」

「いや、笑いくらい独占しても許されるだろ。」

「……その通りだ。」



会場を後にして、外に出ると夜風が心地いい。

ミレイがぽつり。

「マスター、結局台無しにしたんですね。」

「だって、俺の悪役魂が眠れるわけないだろ。」


冷めたコーヒーみたいに苦くて、でも少し甘い夜。

――光と影の境界は、今日も揺れていた。



☕️ 次回予告

第39話「悪役、ヒーローからのオファーを断る」

――「もう、正義の手伝いはご免だ。」


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