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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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37/58

第36話 悪役、名誉ヒーローに推薦される



──


いつのまにか、俺の名前が“正義側の名簿”にあった。



朝。

カフェ・ヴィランのポストから封筒が落ちた。

赤い印章に「ヒーロー協会推薦課」。

ろくでもない予感しかしない。


「マスター、また変な郵便来てますけど」

「また、だと?」

「“名誉ヒーロー推薦通知”。」

「……誤配達だな。」

「宛名、“アオト・クロノ”です。」

「……誤植だな。」



書面にはしっかり書かれていた。


“あなたの功績(※悪役活動を通じた社会的啓発)を讃え、

本協会はあなたを“名誉ヒーロー”として推薦いたします。”


……皮肉にしては完成度が高すぎる。



昼。

取材の電話が鳴りやまない。

「元悪役が名誉ヒーローに!?」

「世間を反省させた“悪の哲学者”!」

「カフェ・ヴィラン、道徳教育の聖地化!」


俺、ただの喫茶店経営者なんだが。


ミレイが苦笑いで言った。

「マスター、もう“悪役の顔”やめたほうがいいんじゃ?」

「無理だな。コーヒーの苦味にまで滲みついてる。」



夕方。

レオンからのメッセージ。


《お前、ニュース出てたぞ。“正義代表の元悪役”。笑えるな。》

《笑ってるうちはまだマシだ。俺の看板に花でも供えてくれ。》

《供花より拍手だろ。今のお前、ヒーローより眩しいぜ。》


……冗談でも、背中がむず痒い。



夜。

店のドアが鳴る。

入ってきたのは、白いスーツに見覚えのある男――ヒロシだった。


「お前が“名誉ヒーロー”とはな。

 ようやく俺の側に来たか?」


「断る。俺はまだ、悪の残業中だ。」


ヒロシが笑って言う。

「悪役がいないと、正義は仕事できない。

 でも今の世の中、お前みたいな“悪”が一番必要かもな。」


「光栄だね。褒め言葉はブラックで頼む。」



ヒロシが去ったあと、ミレイがぽつり。

「ねぇマスター。

 本当に“悪役”って、もういらないんですかね?」


「さぁな。

 でも“悪がいらない世界”ほど、正義が暴れるもんだ。」


カップを傾ける。

冷めたコーヒーが少しだけ甘く感じた。



翌朝、新聞の見出しにデカデカと載っていた。


“悪役出身、名誉ヒーローへ――時代が選んだ“新しい正義””


……コーヒー吹いた。


「ミレイ、訂正出しとけ。」

「どんなです?」

「“悪役、ただの喫茶店マスターです”ってな。」



外はもう春の匂い。

だけど、影の濃さは変わらない。


――悪がいなくても、正義はきっと暴れる。

そのとき止めるのが、俺の仕事だ。



☕️ 次回予告

第38話「悪役、正義の表彰式で台無しにする」

――「スピーチ? 皮肉しか出ねぇぞ。」


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