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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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32/39

第31話 悪役、消されたニュースを追う



──真実は、いつもバグ扱いされる。



「マスター、ニュース全部消えてます!」


ミレイの声が響いた朝。

カフェ・ヴィランのテレビは、いつもより静かだった。

昨日の生放送で話題になった“正義システム”の特集――

どこの局も、一斉に跡形もなく消している。


「再放送もない、アーカイブも削除済み……え、そんなことある?」

「まぁ、正義が都合悪くなると、まず“記録”を殺すからな。」

「物騒な言い方しないでくださいよ!」


俺はコーヒーを淹れながら、

スマホに映る“404”の文字列を眺めた。

真実にアクセスできない社会ほど、静かでうるさい場所はない。



昼過ぎ、店のドアが鳴った。

「……また、お前か。」


黒いコート。無駄に存在感。

レオン・グレイ、登場。


「昨日、見てたぞ。お前、地上波で毒まき散らしたな。」

「お前もそっち側にいたんだろ。反省会か?」

「いや、報告だ。“正義システム”の開発元、消えた。」

「会社ごと?」

「データも社員も、きれいに。」


ミレイがぽかんと口を開けた。

「……幽霊会社ですか?」

「いや、“消された会社”だ。」



カウンターの奥、俺はレオンと並んで座る。

「で、お前はどうする?」

「何もしねぇよ。俺はカフェのマスターだ。」

「またそれか。お前、静かな朝ばっか大事にしてるけど、

 夜はどうすんだ?」

「寝る。朝がくるように。」


レオンは笑った。

「そういうとこ、昔からずるいんだよ。」


俺はため息をついてカップを磨いた。

「真実なんて、放っといても勝手に顔出す。

 ……その時、誰が正義の顔して迎えるか、だ。」


レオンが立ち上がる。

「やっぱり、お前とは話が早い。」

「早いだけで、面倒くさいけどな。」



外に出ると、空は薄曇り。

人々はスマホを見ながら、消されたニュースの話をしていた。

――“何かが起きたはずなのに、誰も証拠を持っていない”という違和感。


俺はエプロンのポケットに手を突っ込みながら呟いた。

「情報が消えても、匂いは残る。

 ……焙煎と同じだな。」


カフェの看板が風に揺れる。

“Coffee & Villain”――今日も営業中。



次回予告

第32話「悪役、正義の亡霊と再会する」


消えたはずのシステムが、人の形をして戻ってきた。

それは“正義の残骸”か、“悪の記憶”か――。

「お前が捨てたものは、まだ息をしてる。」


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