表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/102

第3話 ヒーロー審査員にスカウトされた件について



──正義側は、たまに距離感を盛大に間違える。



「ブラック・アオトンさん、ですよね。」


控室のドアがノックもなく開いて、

黒髪スーツの女が入ってきた。


背筋は真っ直ぐ、服にシワひとつなし。

顔も整ってる。

……ああ、こういう人はだいたい面倒な話しかしない。


俺はパイプ椅子に座ったまま、

自販機で買った缶コーヒーを開ける。


プシュ。


「えっと、クレームですか?

 昨日のステージ、火薬多すぎたとか。」


「いえ。あなたを――スカウトしに来ました。」


「……スカウト?」


女は名刺を差し出した。


「ヒーロー管理局・審査官の美影ユリです。」


公的。

硬い。

そして、ろくなことにならない匂い。


「昨日のあなたの“悪役ぶり”、拝見しました。」

「はぁ。」

「非常にリアルでした。」

「そりゃどうも。実際に吹っ飛んでたんで。」


美影は一切、表情を崩さない。


「そこが評価ポイントです。」

「人が殴られて評価上がる世界、怖ぇな。」



どうやら昨日のショーがSNSでバズったらしい。


《本物すぎる悪役》

《倒され方がガチ》

《中の人、プロすぎ》


……ほっといてくれ。


その結果、

「ヒーロー候補としての素質あり」

という判断が出て、俺のところに来たそうだ。


「正義側に来る気はありませんか?」

「ないです。」


即答。


「安定した給料、社会保障、――」

「……一瞬だけ心が動きました。」


缶コーヒーを一口飲む。

苦い。安いやつだ。



「最近、ヒーロー登録者が増えすぎていて、

 現場がかなり混乱しているんです。」


「知ってます。」

「だから、あなたのような――」

「現場慣れした“殴られ役”ですか。」

「……経験者、です。」


言い換えても意味は変わらない。


「ヒーロー教育係、という立場も検討しています。」

「悪役が?」

「悪役ほど、正義の危うさを知っていますから。」


……うまいこと言う。



そのとき、控室のモニターが点いた。


路上。

ヒーロー二人が言い争いから取っ組み合いになってる。

巻き込まれた一般人が転んだ。


『ヒーロー同士の衝突が発生。

 通行人十名が軽傷――』


「……はいはい。」


俺は缶を振って、残りを飲み干す。


「増えすぎなんだよ。」

「え?」

「正義も、ヒーローも。

 置き場が足りてねぇ。」


美影は一瞬だけ黙ってから、

ほんの少し笑った。


「あなた、思ったより冷めてますね。」

「熱心な正義が苦手なだけです。」



結局、スカウトは断った。


「正義側、向いてないんで。」

「理由は?」

「疲れそうなんで。」


美影は小さく息を吐いた。


「……また会うことがあるかもしれません。」

「会わない方が、平和です。」


彼女は何も言わず、部屋を出ていった。



天井を見上げる。


ヒーローの時代に、

悪役が必要になるってのも――

まあ、笑えねぇ冗談だ。


スマホが震える。


《依頼:明日

 ヒーロー見習い相手に模擬悪役、お願いします》


「……ほらな。」


俺はスマホをポケットにしまった。


正義が増えすぎた街じゃ、

悪役はまだ失業しないらしい。



次回:

第4話「ヒーローのクレーム対応って、だいたい怪人がやらされる」


――「すみません、昨日の“倒され方”がリアルすぎて泣いたってクレーム入ってます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一話目から一気に読ませて頂きました 悪役が主人公とは、新しいヒーローモノですね 道徳心を宿されている悪役ヒーローの今後の活躍が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ