表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/37

第28話 悪役、カフェを乗っ取られる



──正義の方がコーヒー薄いんだよ。



朝。

いつものように豆を挽いていたら、

ドアのベルがカランと鳴った。


「おはようございますっ!」

……うるさい声だ。嫌な予感しかしない。


振り向くと、そこにいたのは――

金髪で爽やか笑顔、全てがキラキラしてる男。

「今日から短い間ですが、お世話になります!

 ツバサ・ライトです!」


ミレイが裏で手を振る。

「アオトさん、紹介しますね。元・ヒーローの方です!」

「元?」

「“正義疲れ”で休職中らしくて」


……いや、なんでうちに来る。



ツバサは何をやってもテンションが高い。

「ラテアートって難しいですね!でも“ハート”描けました!」

「ハートが逆さだ」

「愛はどの方向からでも届きます!」


客が笑ってる。

……くそ、人気出そうだ。


昼になると、さらに人が増えた。

「ヒーローが淹れるコーヒーが飲める!」とSNSでバズったらしい。

あっという間に満席。


ミレイが慌てて厨房をのぞく。

「アオトさん、今日の売上すごいですよ!」

「俺の居場所がなくなってくんだけど」



夕方。

カフェは完全にヒーローの集会所と化していた。

「“悪”のリスペクトって大事だよな!」とか語ってるやつもいる。


ツバサがカウンターに座って、にこにこ言った。

「アオトさんのコーヒー、心が落ち着きますね」

「そうか。なら、もう飲むな」

「えっ?」

「お前が正義に戻りたくなったら困る」


ツバサは少し黙って、笑顔を小さくした。

「……じゃあ、しばらくは、ここで淹れさせてください」

「自由にしろ。ただし、“正義語り”は禁止な」

「了解っす!」


――そう言って笑った顔が、

かつての俺の“戦い相手”に、少し似ていた。



喫茶“ヴィラン”。

正義を辞めた奴らと、悪を終えた奴らが、

いっしょにコーヒーを飲む場所。


カップから立ち上る湯気が、やけに穏やかに見えた。


「……ま、乗っ取られるくらいが丁度いいか」


ミレイが横で呟く。

「次は“正義側コラボ限定ブレンド”出しましょうか?」

「悪役の逆襲ブレンドにしとけ」


カウンターに笑いが響いた。



次回予告

第29話 悪役、昔の仲間に再会する


“悪の時代”を共に過ごした相棒が、また現れる。

コーヒーと懺悔の夜、アオトの胸に残るのは――戦いか、友情か。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ