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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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19/39

番外編 悪役、最後の戦い!



荒れ果てた街。

煙が立ち込め、瓦礫の山をヒーローたちが走り抜ける――

その中心で、ブラック・アオトンは静かに立っていた。


「……ロボット軍団か。」

「残念だったな。俺は今日、悪役の仕事を全うする。」


敵は、超ヒーローAI――

正義のために開発された自律戦闘兵集団6体。



ミレイの声が無線で響く。

「先輩、無茶ですよ!数が多すぎます!」

「数じゃねぇ。見せ方だ。」

アオトは両腕を広げ、冷静に敵を観察する。


「正義が全てを支配するなら、悪が演出を決める!」



戦闘開始。

AIの光線、強化装甲、正義の拳――

だがアオトは最小限の動きで翻弄。

街の破壊もほとんどなし。

「悪役の極意――人を傷つけず、ヒーローのショウを作る!」


ヒーローたちの叫びも、煙と光で“演出効果”に早変わり。

観客の市民たちが、叫び声と光の乱舞に拍手を送る。



決着――

最後の1体が崩れ落ちると、空から紙吹雪と照明が舞い落ちる。

街は破壊されず、人々は拍手喝采。


ミレイが笑いながら駆け寄る。

「先輩……今の、戦いじゃなくてヒーローショウでしたよね?」

「まぁな。人を救うのも大事だが、見せ方も大事だ。」


アオトはマントを整え、空を見上げる。


「……悪役は、劇場型に動くのも仕事のうちだ。」


市民たちはSNSで拡散。

“悪役が演出するヒーローショウ”として伝説になる。



その日から――

アオトは街の片隅でカフェを再開。

ヒーローたちはまだ増えすぎているが、誰もが笑顔。

街の空気は平和そのもの。


――こうして、俺の最後の戦いは終わった。

でも舞台裏では、まだ悪が仕切ってるんだぜ。



カフェ・ヴィランの午後。

街の人々がぞろぞろと店の前を通る。

昨日の“悪役演出ヒーローショウ”の話題で持ちきりだ。


「いやー、あの黒い人、かっこよかったなぁ!」

「光線と爆煙の演出、映画より迫力あった!」

「でも、悪役なのに誰も怪我してないってすごくない?」


アオトはカウンターで缶コーヒーを開け、眉をひそめる。

「……褒めすぎだ。悪役なのに、称賛されやがって。」



ミレイが横から小声でツッコむ。

「先輩、でも昨日の戦い、確かに“誰も死ななかった”って意味では、悪役の勝利ですよね。」

「皮肉な勝利だな。俺の悪行は、演出に置き換えられたってわけだ。」



街の子どもたちがカフェの窓越しに手を振る。

「アオトおじさん!昨日のヒーローショウ、最高だったよ!」

「ヒーローの名前出せよ、俺は悪役だぞ!」

「でも、かっこよかった!」

アオトは小さく苦笑い。

「……俺の仕事、いつの間にかショウ化してやがった。」



その日の夜。

カフェの外には、新聞とSNSのスクリーンショットが散乱している。

見出しにはこう書かれていた。


『悪役演出のヒーローショウ、街に平和と笑いをもたらす』


ミレイがため息をつく。

「先輩……正義でも悪でも、結局人気者ですね。」

「困ったもんだ。悪役なのに、評価されちまった。」

「でも、これでカフェも繁盛しますね!」

「それは認める。」



アオトは夜空を見上げ、缶コーヒーを一口。


「……正義は派手に、悪は静かに――それが、悪役の流儀だ。」


街の灯りが揺れる。

そして、今日も“元・悪役”の伝説は、静かに広がっていく。



次回:

第19話「悪役、卒業式に呼ばれる」


「“正義の未来”に招かれた悪の男――教壇で語るのは、皮肉か、それとも祈りか。」








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