表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/39

第18話 悪役、未来を語る少年と出会う




午後のカフェ・ヴィラン。

店内は珍しく静かだった。

アオトは新聞を広げて、ため息をひとつ。


『元ヒーロー・ブルー・バースト、復帰』


「……まったく。助けた覚えはないのに、勝手に立ち直りやがって。」

カウンターの向こうでミレイがくすっと笑う。

「でも、いいことじゃないですか。」

「いいことだが、悪役的には“営業妨害”だ。」



そこに、ドアが開いた。

中学生くらいの少年が入ってくる。

ボサボサの髪に、ヒーローマークのついた古いTシャツ。


「……ここ、“悪役の店”って本当ですか?」

「“だった”な。今はコーヒー屋だ。」

「ぼく、ヒーローになりたいんです。」


アオト、目を細める。

「物騒な夢だな。最近は免許制だぞ。」

「それでも、やりたいんです。

 でも……みんな、『もうヒーローの時代は終わった』って言うから。」



ミレイが少年にホットミルクを出す。

「先輩、こういうの、好きでしょ?」

「お前なぁ……。悪役に教育頼むな。」


アオトはカップを磨きながら、静かに言った。

「ヒーローの時代が終わったっていうのは、悪が減ったからだ。

 だが、“守りたい”って気持ちは、時代が変わっても残る。

 それを信じて動ける奴を――

 俺は、まだ“ヒーロー”って呼ぶよ。」


少年の目が輝く。

「本当ですか!?」

「本当だ。……ただし、条件がある。」

「な、なんですか?」

「正義を語る前に、人の弱さを見とけ。

 それができねぇヒーローは、ただの看板だ。」



夕暮れ。

少年は頭を下げて帰っていった。

ミレイがカウンター越しに笑う。

「いいこと言いますね、先輩。」

「悪役の名言は無料サービスだ。」


彼は窓の外を見つめた。

遠ざかる少年の背中。

そして、街灯に照らされる看板――

《CAFE VILLAIN》


「……悪役の仕事は、“希望”を拾うことかもな。」


ミレイがそっと呟く。

「ヒーローより、優しいですよ。」

「それは褒め言葉として受け取っとく。」


アオトはコーヒーをすすり、

その苦さに微笑んだ。



次回:

特別編 「悪役、最後の戦い!」


「最終決戦――それは、“見せ物”と“本音”の境界線。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ