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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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15/40

第15話 悪役、カフェでヒーローたちの午後3時




「いらっしゃいませ~! 本日のおすすめは“漆黒ブレンド”、罪深いほどに苦いぜ。」


カフェ・ヴィラン――

街の片隅にある、元悪役店長の店は今日も満席。

ヒーローたちが午後の休憩を取りに集まってくる。

なぜか、誰も「悪役がいる!」とは言わない。

もう、ここでは“日常の一部”になってしまったのだ。



「アオト先輩、今日も忙しそうですね。」

ミレイがカウンター越しに笑う。

「まあな。正義の人々は、平和すぎてヒマらしい。」

「平和すぎてヒマ……?」

「そう。ヒーローは事件がなくてもストレス溜めるから、カフェで休む必要がある。」

「……皮肉な世界だな。」



奥の席では、スカイ・ノヴァとセイナがコーヒー片手に談笑中。


「ねえ、このコーヒー、やっぱりちょっと苦いよね。」

「悪役ブレンドは苦味が命らしい。」

「でも、この苦さがクセになるのはなぜ……?」

「それは、人生も社会も、甘すぎるとつまらないからだ、と」


子どもたちが壁に貼られた「悪役の心得」を見てクスクス笑う。


1.正義が暴走したら止めろ

2.苦いコーヒーで目を覚ませ

3.微笑みながら毒舌を放て


「……相変わらず先生だな。」

ミレイが小声でつぶやく。



午後3時。

窓から差し込む光の中、アオトはふと外を見た。

正義の看板、ヒーロー広告、平和そうに歩く市民たち。

「……平和な日常ってやつは、皮肉だらけでも面白いな。」


そこへ、常連ヒーローがひょこっと顔を出す。

「アオト、今日も一杯くれよ。」

「了解。罪深く苦い一杯、特製悪ブレンド。」


彼らは笑い、コーヒーを飲む。

それぞれの正義と、ちょっとの悪。

午後のひととき――街の平和の、小さな裏方は、ここにあった。



閉店後。

ミレイが片付けを終え、缶コーヒーを渡す。

「先輩、今日も“苦味担当”お疲れさまです。」

「苦味担当か……まあ、俺の仕事は平和の味付けだ。」

「……皮肉も忘れずに?」

「それがないと、世界は甘すぎて飽きる。」


風がカフェの看板を揺らし、夜の街に灯りがともる。

ブラック・アオトンは小さく笑った。


――世界が変わっても、日常の皮肉と苦味は、まだまだ俺の仕事だ。



次回:

第16話「悪役、街の小さな事件を解決する」


「悪役カフェ店長が、ちょっとした事件に首を突っ込む――正義は来ない、悪が行く!」



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