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『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


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13/40

第13話 悪役、子どもたちのヒーロー教室で特別講師になる




「えー、本日の特別講師はこの方です!」


司会の先生がマイクを掲げた瞬間、体育館がどよめいた。

黒いコート、片目にスコープ、胸には堂々たる“V”の紋章。


「……どうも。元・悪役、現・カフェ店長。ブラック・アオトンだ。」


子どもたち「うわー!ほんものだー!!」

先生「ちょっと静かに!こ、怖くないからね!?」

俺「怖いと思ってもらっていいぞ。」


――開幕3分で保護者席がざわつく。

まあ、無理もない。ヒーロー育成イベントに悪役登壇なんて前代未聞だ。



講義テーマは「正義と悪の違い」。

ホワイトボードに大きく二つの円を描く。


「正義の円と、悪の円。普通は別だと思うだろ?」

子どもたち「うん!」

「でも実際は――」


俺は円を少し重ねて描いた。

「こうだ。重なるところに、“人間”がいる。」


一瞬、静まる体育館。

ミレイ(今日はサポート役)が耳打ちする。

「アオト先輩、それ子ども向けですよね?」

「大丈夫だ。子どもは案外こういうの、ちゃんと分かる。」



質問タイム。

手を挙げた少年が聞いてきた。

「なんで悪いことするの?」

「悪いこと……か。

 じゃあ質問返しだ。お前の好きなヒーローは?」

「ブレイヴファイア!」

「そいつ、敵を倒すために街を壊したことあるだろ?」

「うん、でも悪いやつをやっつけたから!」

「つまり“正しい目的のためなら何してもいい”ってことか?」

「え……?」


少年が少し黙った。

俺は優しく続ける。

「悪ってのはな、“間違いを見せる役”だ。

 ヒーローが自分を疑うきっかけを作る仕事なんだよ。」


ミレイが小声で言う。

「……それ、普通に良い話じゃないですか。」

「俺だってたまには真面目にやる。」



別の女の子が手を挙げた。

「アオトン先生は、悪いやつやめたの?」

「やめてねぇよ。

 ただ、悪の使い方を変えた。」

「使い方?」

「誰かを泣かせるためじゃなく、誰かが笑えるように使う。

 悪ってのは、そうやって転がせば“スパイス”になる。」


女の子がニコッと笑った。

「じゃあ、アオトン先生はカレーの人だね!」

「……お前、いいセンスしてるな。」



授業が終わり、拍手が起きた。

子どもたちは目を輝かせて言う。

「悪って、かっこいい!」「ぼく、悪役になる!」


先生が青ざめる。

「ちょ、ちょっとアオトンさん!? 教育的にまず――」

俺「安心しろ。“正しい悪”になるやつは、ちゃんと善人だ。」


ミレイ「ほんと、どっちの味方なんですか先輩……」

俺「社会の味方だ。今はそれで十分だろ。」



帰り道。

ミレイが笑いながら言った。

「子どもたち、帰り際に“苦味の人だ”って呼んでましたよ。」

「……コーヒー扱いか。」

「ぴったりじゃないですか。」

「まぁ、甘すぎる世の中にはちょうどいいかもな。」


彼は缶コーヒーを開け、一口。

黒くて、苦い。でも少しだけ、温かい。



――正義を教えるより、間違いの価値を教えるほうが、ずっと難しい。



次回:

第14話「悪役、政治家になる」


「“悪を知る人間こそ、正義を動かせ”――スーツを着た悪のカリスマ、まさかの立候補!」


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