表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『職業:悪役(たまに正義の相談役)』   作者: よしお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/102

番外編 悪役、正月に願わない



──願わないやつほど、生き残る。



一月一日、朝。


街はやけに静かだった。

昨日までの喧騒が、きれいに消えている。


【カフェ・ヴィラン】は、昼から開ける予定だ。


「マスター、初詣行かないんですか?」


ミレイがコートを羽織りながら聞く。


「行かねぇ。」


「即答ですね。」


「願い事は、

 自分で叶えるもんだ。」



昼。


店を開けると、

着物姿の客がちらほら入ってくる。


「コーヒー、やってます?」


「正月でもな。」


「助かります。」



一人の客が言った。


「神社、すごい人でしたよ。」


「だろうな。」


「何、願いました?」


「……忘れました。」


正解だ。



ミレイが小声で言う。


「マスター、

 ほんとに何も願わないんですか?」


「願ったことはある。」


「あるんだ。」


「全部、叶わなかった。」


「……重いですね。」


「正月だぞ。」



外を見ると、

家族連れが神社から戻ってくる。


笑顔。

お守り。

おみくじ。


「大吉でした!」


そんな声が聞こえる。


「……当たるといいですね。」


ミレイが言う。


「当たらなくていい。」


「え?」


「期待が外れる方が、

 痛ぇ。」



夕方。


初詣帰りの若いヒーローが、

店の前で立ち止まっている。


迷っている顔。


「入れ。」


声をかけると、驚いたように入ってきた。


「……願い事、しました?」


「……しました。」


「叶うと思うか?」


「……分かりません。」


「それでいい。」



俺はコーヒーを出す。


「願うな。

 動け。」


ヒーローは少し笑った。


「……悪役っぽい助言ですね。」


「職業病だ。」



夜。


店を閉める。


街はまだ正月の顔をしているが、

その下で、日常が準備運動を始めている。


俺はシャッターを下ろしながら言った。


「今年も、

 多分、ろくな年じゃねぇ。」


ミレイが笑う。


「それ、毎年言ってません?」


「言えるってことは、

 生きてるってことだ。」



──正月。


願わない悪役は、

今日もコーヒーを淹れる。


それで十分だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ