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「という事があったのだ」
シアロンが一息つく。が、肝心な事は、まだ何も話していない。
俺は、
「それで、あのお方っていうのは、いったい、何者なんだい?
もしかして、そいつの名前はスコーピオンって、言うんじゃないか?」
「そ、それは」
一瞬シアロンが躊躇し、顔を伏せる。が、再び顔を上げると、
「あ、あのお方の、お名前、は」
次の瞬間、
シアロンの全身に複数の細かい光が走り、
文字通り、
消滅した。
あたりにスコーピオンとも、
桃太郎とも聞き取れるような、
不気味な哄笑が響き渡った。
俺は、
「き、消えた! だと?」
烈火が、
「シアロンはどこに行ったのだ! 何で突然消えたのだ!」
雷夢が泣き出す、
「シアロンが消えたアル! 竜破! なんとかするアル!」
サヤが、
「気化してない、という事は。原子レベルで崩壊した。と、見るべきデスね」
俺は、
「なるほどな。野郎の考えそうな事だ」
俺は何も無い空間に瞳を凝らす。すると、何もない空間に、無数の星が重なって出来た、星雲のような緑色の光りの集まりが、うっすらと光りだし、ちょっとした小宇宙のように見える。
砕け散った原子を、絶対復元能力で復元すると、こんな風になるんだろう。
「凛華の二の舞はゴメンだぜ、シアロン。お前さんは死ぬにはまだ早すぎらあ」
俺がそう呟くと、緑色の光点が少しずつ、人のような形へと変化し始めた。




