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87

 

   ☆87☆


「という事があったのだ」

 シアロンが一息つく。が、肝心な事は、まだ何も話していない。

 俺は、

「それで、あのお方っていうのは、いったい、何者なんだい? 

 もしかして、そいつの名前はスコーピオンって、言うんじゃないか?」

「そ、それは」

 一瞬シアロンが躊躇し、顔を伏せる。が、再び顔を上げると、

「あ、あのお方の、お名前、は」

 次の瞬間、

 シアロンの全身に複数の細かい光が走り、

 文字通り、

 消滅した。

 あたりにスコーピオンとも、

 桃太郎とも聞き取れるような、

 不気味な哄笑が響き渡った。

 俺は、

「き、消えた! だと?」

 烈火が、

「シアロンはどこに行ったのだ! 何で突然消えたのだ!」

 雷夢が泣き出す、

「シアロンが消えたアル! 竜破! なんとかするアル!」

 サヤが、

「気化してない、という事は。原子レベルで崩壊した。と、見るべきデスね」

 俺は、

「なるほどな。野郎の考えそうな事だ」

 俺は何も無い空間に瞳を凝らす。すると、何もない空間に、無数の星が重なって出来た、星雲のような緑色の光りの集まりが、うっすらと光りだし、ちょっとした小宇宙のように見える。

 砕け散った原子を、絶対復元能力で復元すると、こんな風になるんだろう。

「凛華の二の舞はゴメンだぜ、シアロン。お前さんは死ぬにはまだ早すぎらあ」

 俺がそう呟くと、緑色の光点が少しずつ、人のような形へと変化し始めた。

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