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   ☆84☆


 すべては貧乏が原因でしたわ。

 しかも、家は見栄っ張りな貧乏貴族。

 ワタクシはそんなアンビバレンツな環境で育ったのです。

 親は貧乏貴族にもかかわらず、

 舞踏会には目がなくって、

 必ずワタクシも同伴しました。

 舞踏会が嫌いだとは申しません。

 華やかな会場。

 着飾った美しい紳士淑女。

 素晴らしい食べ物。

 本当にすべての物がキラキラと輝いていて、中でも女性が身につける宝石のたぐいは、眩いばかりに美しく光り輝き、貧乏貴族のワタクシにとって、それがどれほど縁遠い、手の届かない、雲の上の輝きであったことか!

 着古したドレスに、わずかばかりの、ささやかな装飾品。

 それが、ワタクシの全てでした。

 そんなある日。

 地方からいらした豪族のお貴族様が舞踏会に参加しました。

 目が潰れるんじゃないかと思うほど、煌めく宝石を、あらん限り、ふんだんにあしらったドレスを着たお貴族様は、まるで歩く移動宝石店です。ですが、

 そのお貴族様は、ワタクシの想像を絶する凄まじい、お年寄りだったのです! まるで、

 今にも死にそうな毛羽先立ったニワトリを思わせる、その婆さんに、ワタクシは激しい憤りを感じました。

 なぜワタクシのように若くて美しい美少女が、当時のワタクシは社交界デビューしたばかりの十五歳になりたての、それはそれは初々しい美少女でした。

 神様は不公平です!

 こんなお婆さんに、使い切れないほどの富を与えながら、ワタクシには何一つ与え無い。それこそ、

 スズメの涙ほどのだ装飾品だけです。

 神様は不公平です! 

 ワタクシが怒りに我を忘れて婆さんを見ていると、舞踏会場から少し離れた、スミの椅子に座っていました。そして、

 コックリ、コックリと居眠りをしていたのです。

 チャンス到来! 

 その時、ワタクシの心に恐ろしいほどの魔が差し、

 その干からびた骨と皮だけの指先から、

 たくさん嵌めている指輪の中から、一つぐらい良いじゃないかと、たった一つだけ盗んだのです。

 でも、悪い事は出来ません。

 この盗難事件はすぐに発覚し、

 ワタクシは逮捕されました。

 裁判から判決まで一年。

 ワタクシは死刑になりました。

 斬首の刑、

 当日、

 ワタクシは十六歳になったばかりでした。

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