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☆81☆
深夜零時。
新宿上空を俺は小型グライダーで旋回する。
虹祭学園も眼下によく見える。
不思議な事に、
プールの水がすべて失くなっていた。
視線を転じ、NTTタワーを見る。その周囲は意外とひっそりとしていた。
怪盗アールの乗っ取り動画は、微妙に世間を騒がせただけで、結局、ただのイタズラで片付けられたようだ。
俺は小型グライダーから飛び降り、NTTタワーの大時計に飛び付く。
姿は無論、怪盗アール、スタイルだ。
時計の長針に座り、地獄の少女道化師の出方を待つ。すると、
文字盤の内側から力任せに穴が開き、その穴からギロリ、と巨大な目玉が俺を覗く。
刹那、大時計の壁を突き破り、
一メートル近い手の平が俺を鷲掴みにする。
「何だこいつは!?」
俺が叫ぶと、NTTタワーを内部から破壊し、巨大な地獄の少女道化師が姿を現す。
ざっと見て全長二十メートルはある。
巨大、地獄の少女道化師が、
「材料さえあれば、もっと大きくなれるぞ。
海まで行けば、ワタクシ様は神になれた。
そこまで行く余裕は無かったがな。
まあ、コソ泥相手なら、これで充分だろう!」
地獄の少女道化師の手に力が加わる。が、そのまわりを無数の蝶が飛び回り、その中からサヤか現れるや、幻魔剣で腕を切り落とす。
無論、地獄の少女道化師の腕は、すぐに再生してしまうが、
その一瞬の隙に、
俺は背中のリュックに搭載されている超小型グライダーを展開、
新宿御苑目指して滑空した。
地獄の少女道化師が俺を追うが、その足元に、
「紅蓮弾!」
烈火が放った炎の弾丸が当たり、爆炎をあげる。
一瞬よろけたが、結局、ものともぜず突き進む。
御苑前にいた雷夢が全身を青白く光らせ、
「雷糸っ! 無限っ!」
無数の雷糸が地獄の少女道化師に絡みつくが、
蜘蛛の巣を払うように進む。
巨人の進撃を押し留める事は出来ない。
ついに御苑に入った地獄の少女道化師を見て俺は、
「さあて、もう、逃げ場所は無いようだな」
俺を踏み潰そうと近づく地獄の少女道化師に向かって、
「地獄の少女道化師さんよ!」
俺はリモコンのスイッチを押した。
地獄の少女道化師の足元で火花が縦横に走り、地面に穴が開く。つまり、
「ルパン特製の落とし穴さ」
地獄の少女道化師の巨体が倒れかかるが、四つん這いになって手を付く。
穴の深さは五メートル。
縦横の長さは五十メートル。
一月以上かけて掘った穴だ。
怒りの表情を浮かべ地獄の少女道化師が穴から這い上がろうとするが、
手足が動かない。
地獄の少女道化師が驚愕の表情を浮かべる。
「なっ!? こっ、これは!?」
俺はニヤつきながら、
「マイナス百九十六度、穴の中は液体窒素でいっぱいなのさ」




